DIARY 2002年7月


7月1日 Echo & Reflection

おそろしい話だが6月が終わってしまった。今年も半分が過ぎたってことですよ皆さん。何がすごいって僕が職場を離れてからもう2年もたってしまったことだ (もっとすごいのは、その前に5年間もサラリーマン生活を送っていたことだ) 。再起動しようとするたんびにボディブローくらっちゃう。その繰り返しで2年が過ぎていった。
 6月は波乱万丈でした。15日にロボパンチ (手首が飛んでくるやつ) を受けて史上最悪に凹み、それでも皆さんから暖かいエールをたくさん頂いた。このサイトをやっていて本当によかったと思う。今日は通院ディ。そういう話をした。「他者が形成する自我像に頼るのは危険なこともある」と。わかってますよ。

掲示板を閉じたりこっそり開けたりまた閉じたりしてます。最初の頃は、他愛のない日記にリアクションをくれる人がいるってことが単純に嬉しかった。書き込んでくださる皆さんに恋をしていたのです。しかし時に恋は疲れ果て、力つきることもある。投稿者同士のコミュニケーションがなかなか広がらなくて、結局僕が全部レスつけてたんだよね。
 そこでちょっと実験。これからは問いかける恋がしたい。基本的に僕が質問を投げて、皆さんの答えを眺めて「ふ〜ん」っていうの。楽ちんそうでしょう。そこから話が広がってもいいしそのままでもいい。もちろん今まで通り、好き勝手なことを書き込んで頂いても構いません。でもお返事の保証はしませんよ。っていう感じでどうかなあ。みんなが勝手に盛り上がってくれれば一番うれしいんだけど。

7月2日 World-Standard / Non-Standard

僕がいつもお邪魔しているディスクレビューサイトの主催者8人が、共同で名盤セレクションを作りました。400枚もあってどうもすみません。しかも合議制じゃないからセレクトが偏っている。中でも特に浮いてるのがスキル選だと思って頂いていいかと。不真面目なやつを中心に56枚のレビューと、デザインの最後の仕上げをお手伝いしました。
 まあぶっちゃけ何の批評性もないですよ。作ってる僕たちが楽しんでるんだからそれでいいじゃないの。ざっと目を通して、気になるものがあったら聴いてみてください。それから皆さん、目の前のレコード棚を眺めてお気に入りを選んでみてください。自分の音楽体験を振り返ってみるのは本当に楽しいことだ。それが伝われば、この企画は成功だと思う。

7月3日 Pom Pom Joki

名盤400選、おかげさまで大好評です。「感動した」なんて声もあります (すんなよ) 。これまで、個人サイトのオーナーが自己紹介がわりにセレクションを公開することはあっても、8サイト共同で新しいスタンダードを提示しようなんて企画はなかったかも知れない。今後はもっと違った視点の選者を加えて、どんどん増殖して壮大な名盤インデックスにしたいと思っています (ほかのメンバーはもうこりごりかも) 。パラパラめくってるだけでも楽しいと思うんで、気が向いたらまた見てね。

それとは反比例してうちの掲示板が盛り下がっている。問いかける掲示板、現在のテーマは『きみはバスタイムをどうやって過ごしますか』。ハーブのロウソクを浮かべるようなロマンチックちゃんがこんなサイトを見てるとは思ってないけど、独創的な入浴方法を実践している人がいると思った。頼むから誰か変な入浴をしてくれ。

僕の一番のお風呂アイテムは「ポンポン丸」っていうブリキのおもちゃです。子供の頃、神社の縁日の景品で貰ってよく遊んでたんだ。今持ってるのは数年前にたまたま見つけて買い直したやつ。ローソクでお風呂のお湯を暖めて、沸騰した力で進みます。ボイラーの音が軽快で、秒速10cmくらいのスピードで豪快に走る。このロウソクを丁度いいサイズに切るのが難しいんだ。
 普段は...膝を抱えて湯舟にぽっかり浮かんでるのが好き。胎内回帰というか。重力からの解放というか。だからどうってことはないんだけどさ。どうってことない話しようよ。

7月4日 きこりの泉

以前からこの日記で絶賛しているロッテ・ドラえもんクッキーボールチョコですが、ついに一番の人気アイテム「きれいなジャイアン」を入手しました。発売時期の関係で関東地区では入手困難だったものを、なんと読者の方が名古屋で見つけて送ってきてくださったんです。ウェブ日記なんて面倒臭くせえなあと思いつつ、続けていればいいこともあるものだ。

この「きれいなジャイアン」、イソップ童話の「正直なきこり」をモチーフにした「きこりの泉」というお話の中に出てくる。ジャイアンがこの泉に落ちちゃって、女神様に「あなたが落としたのはきれいなジャイアンですか」って聞かれるの。きれいなジャイアン、いかにも誠実そうに描かれているけど、ルックスだけよくて相変わらず凶暴だったらたちが悪い。
 ところでこの「きこりの泉」、ミュージックフリークのみなさんも欲しいのではないでしょうか。『あなたが落としたLaura Nyroはデジタルリマスター盤ですか』『いえいえCBSソニーの廉価盤です』。

7月5日 コステロのヘアチェック100

Elvis Costello@東京国際フォーラムに行ってきました。昨今はエレガント路線の企画ものが続いていたCostello。本人はロック回帰ムードなのに、フジサンケイグループから再びエレガント路線のヒット曲を要請され、それに応えちゃうあたりが器用貧乏だなあと思います。
 蓋を開けたらロックアフターロック! 乾いた声が胸を掻きむしる。これを聴きたかったんだ。ボーカルはエモーショナルなのにしっかりコントロールされている。間奏になるとギターに没入。Steve Nieveとの絡みは見事と言うしかない。本人のテンション次第でテンポがヨレヨレ変わるのもまたロックだ。ドラムスのPete Thomasがそれを追い掛ける。ベース氏だけがおいてけぼり気味で、Peteの目をじっと見て必死に合わせていた。

とにかくアップテンポに攻める2時間でした。でも印象に残っているのはミディアムナンバーで、ベストアクトはアコギに持ち替えた『All This Useless Beauty』、シャウトから囁きまで緩急の表現が絶妙だった『I Want You』かな。フジサンケイ御用達の『Smile』ももちろん演奏したんだけど、あのバンドにはちょっと不似合いだった。リズムがずれまくってて可哀相でした。
 隣の席の一人でやってきた中年サラリーマン、拳を握り締めて一緒に歌っていた。それが邪魔じゃなくて、すごくいい感じだったの。青春、なんだね。ふとした日常にロックな自分を取り戻せるといい。「Smile」のイメージで来ちゃった若いカップル達は呆然としてました。甘い時間を期待してたんだろう。膝に手を置いてみたりとか。残念、ちょっと間違っちゃったね。

終演後、T.P.さんと軽く飲み。せっかくCostelloを見てきたのに、メトロトロン界隈の話題で盛り上がる。マニアだねえ。あんたもねえ。Costelloの話題に戻しても、結局あのオデコはどうなのよ、みたいな。そういえばここ数年のCostelloはいっつも帽子かぶってたね。ひいては僕の私生活について鋭い突っ込みを受けた。「立ち直ったふりなんかしてるから後でぐったりしちゃうんだよ」。その通り。面目ない。
 どうでもいいけど、駅に飾ってある七夕の短冊に「ガオレンジャーみたいに強くなりたい」とあった。少年よ、君の気持ちはわかる。わかるのだが将来君に求められる強さはそういうもんではないのだ。

7月7日 ユニクリユニクラ

我が家にいつもの面々が集まり、恒例のレコード鑑賞会を開催しました。先発隊の3人が3人ともユニクロの半ズボンで大笑い。後からやってきたY.K.さんに「ユニクラーズ」と命名される。カジヒデキの最大の功績は30男が半ズボンを履いてもいいと決めたことだ。お陰で日本の夏はだいぶ過ごしやすくなりました。
 ホストの僕が料理がダメなんで、ゲストのK.M.氏とI.H.さんの御厚意に甘えてしまった。どれも素晴らしく美味しかったです。お2人は別々に買い出しをしたのだが、お互いの余り素材を自分の料理に活用したり、残ったおかずに手を加えておつまみにしたりと、僕から見ればマジックの連続でした。食材のRemixだ。

BGMはジャズやソウルが中心。パーティー向けで無条件に気持ちいい。しかし、しかしだ。肉体から叩き出される生のグルーヴというのはあまりにも正しすぎて、非体育会系の僕には素直に認めがたいものがある。そこで、軟弱なソフトロックや和モノをかけてささやかな抵抗をしてみました。
 さらに東京ボーイズのドキュメント映像が登場。古典芸の素晴らしさはもちろんだが、三味線で「ブルース」のニュアンスを表現してみせる柔軟性には驚きました。調子に乗って僕も10年前に作ったライブ用スクリーン映像を披露。しかしリアクションが薄かった...。いやいや、まだVJという言葉もなかった頃の試みなので許して欲しい。

朝までレコードをかけながら他愛のないお喋り、そしてくだらないサイトを見つけては大笑い。だらだらと緩い時間を過ごす。 6.15事件以来、大勢でのお喋りが上手く出来なかったんだけど、この日は久しぶりにリラックスした。みんなも楽しんでくれたかなあ。お酒の減りが少なかったのがちょっと心配。
 後片付けをして寝ていたら、電話の音で目が覚めた。交友関係の相談話。10年かけて育んできた僕たちのSmall Circle of Friendsが、少しづつ崩れ始めている。長い間にそれぞれの生活も社会的立場も、そしておそらく人格も変わっていった。亀裂が目に見える大きさになってきた。みんながそのことに気づいて、柔軟に距離を読まなくちゃいけない。このままじゃ傷つけあうだけだよ。

7月8日 日本人は疲れる

日本国民としての義務を全うすべく奮闘、帰りに通院。無性に疲れた。雲の切れ間から嘘くさいほど青い空が見えた。フォトショップでいじってるだろ。

7月9日 見えないものでつながっている (それは嘘)

あちちちち。台風前の灼熱地獄に飛び出してレコード探し。詳しくは教えてやらないが、今度の土曜日にお気に入りのオンガクを持って夜の渋谷に繰り出します。今日はその仕込み。思いきり場を掻き乱してやりたい衝動にかられている。

東京に生まれ育ち、そのうち6年間は東横線に乗っていたにも関わらず、初めて「学芸大学」という駅で降りました。駅前の古い珈琲屋でお喋り。今はちょっと離れつつある懐かしいコミュニティについて。
 あれから僕たちは無邪気な時代を通り過ぎて、それぞれに見えない痛みを抱えて、今はみんな不安定でとても揺れている。ネットの向こう側にいる彼や彼女は7年前とは違うんだ。だから発する言葉のひとつひとつ、受けとる言葉のひとつひとつを大事にしなくちゃいけない。もう違ってしまった人々を強引に結びつける技術がどんなに危ういものか、自覚しなくちゃいけない。でもさあ、不安定な時期を乗り切ったら、また新しい関係が築けると思うんだけど。ダメ?

そのまま新橋に移動して、16年前の友達と飲む。幸か不幸か16年前にはメールがなかった。だから会う度に距離を微調整する訓練が出来ている。でもやっぱり不安定で揺れているお年頃なのは変わらない。彼は会社のマネージメントの問題について悩んでいるご様子だった。仕事の話はわからないので、店内に流れるオールディーズを聴きながら想い出話をポツポツと。完璧にノスタルジーモード。
 あの頃は自分達がどんな大人になるのか想像もつかなくて、世渡りはうまくないだろうと思っていたけどな。このまま地雷をガツガツ踏んでいけば、いつかはいいことがあるんでしょうか。

7月12日 水槽の中で僕たち

ここ数日なにをしていたかというと、「sasakidelic presents : 一曲入根」に向けての選曲作業であります。自分の持ち時間は短いんだけど、いろんなシチュエーションを想定してものすごくたくさん音楽を聴いた。いまなら持ちネタいっぱいありますんで、ほかのDJイベント主催者の方もお気軽に声をお掛けください。さてその「一曲入根」、いよいよ土曜日に迫って参りました。宣伝が遅れたためか、友達がほとんど来てくれないのが寂しい限りです。泣いてます。誰かきてクレー。

子供の頃は台風が大好きだったんだけど、気圧の変化は精神衛生上よろしくない。窓の外は水槽みたいでとても美しかった。そして突然の停電。辺り一面の電気が消えるとここまで真っ暗になるのか。目を開けても閉じても変わらない景色をしばらく楽しんだ。それにしても電気がないと、ほんっと何も出来ないものです。クーラーも扇風機も止まってるから寝るのもなんだし。電話中だったのがせめてもの救い。暗闇の中で長電話につきあわせてしまった。
 翌日は台風一過の灼熱地獄。東京脱出の妄想などを企てる。

そして人間関係について少し。ちびちび飲んではお喋り。人のことを心配している場合では全然ないのだが、僕が仕事が出来なくなった時に友達にすごく救われたんだよ。いまその仲間が決裂の危機にある。昔に戻れないことはわかっているけど、個別のヘルプが来ればできるだけ拾っていきたいし、分裂してでもちっちゃなコミュニティが残るならば維持していきたいと思う。そうそう、居酒屋のチョコレートケーキが思いのほか旨かった。

7月13日 夏草や、兵どもが盤抱え

生まれて初めてDJっぽいことをさせて頂きました。DJがモテる時代が終わってから挑むあたりが僕らしい。このイベント、一人何分の枠を与えられるのではなく、一人一曲づつ受け持って、リレー形式でクロスフェードしていきます。だから前の人の曲を聴いて、その場で慌てて自分のかける曲を選ばなくちゃいけない。
 当初は「非体育会系」をテーマに掲げ、ジャーマンエレクトロニカや60sアメリカンポップスをかけるつもりだったんですが、予想以上に賑やかな店内の様子に敗北。手持ちの盤から線の太そうな曲を選んで、なんとかその場をしのいだのでした。

最初の出番はFairport Coventionの後。ナチュラルな空気感をつなぎたくて、Robert Wyattの「Caimanera」をかけてみた。これは我ながらいい感じだったのではないか。2周目はアッパー系が続いた後だったので、敢えて大友良英さん「風をあつめて」を。みんなの耳を引いたという意味では成功だったけど、引かれたかも知れず。3周目は和やかな空気を壊さぬように、雪村いずみさん「フジヤマママ」を。これは受けると思ったんだけど、頭出しに失敗してグズグズになってしまった。そしてラストチャンス。ピアノつながりで直枝政広&朝日美穂の「カルアミルク」。これも受けると思ったんだけど。以上が僕のデビュー戦の戦績。

ほかの人のセットリストを見ていると、いわゆるクラブ向けの曲が受けるのは当たり前だけど、RCサクセションの「トランジスタラジオ」が胸に響いたりする。うまく空気を読めばこんな冒険もできるようになるんだ。楽しいなDJ。
 心配されていた集客のほうもばっちり。開演前からほぼ満席状態で、ついには店の外まで溢れだし、お巡りさんまで来ちゃいました。お喋りもたくさんできた。知ってる人、知らない人、このサイトの告知を見て来てくれた人。僕のかけた曲を質問してメモしていく人がいたのは嬉しかったな。

イベントの準備からCD-R制作まで奔走していた主催者のS.N.さん、1万円札でビールを注文しても嫌な顔ひとつしなかったili.coのみなさん、僕のつたないDJを笑って許してくれたみなさん、本当にありがとうございました。おかげでとっても楽しかった。グルーヴの神様に感謝。

7月16日 2000トンの雨

学校ないし家庭もないし暇じゃないしカーテンもないし、定職ないしマネーもないしハニーもないし格好つかないのですが、このたび家もなくなることになりました。長年住んでいたアパートが来年の3月に取り壊されるという。ウーララ。この部屋には想い出が多すぎる。決別して立ち上がれという天の声だろうか。

きのうの続き。国家の命令に従って真面目に出頭して参りました。モーニングコール、サンクス。手続きは思いのほか簡単だった。これからしばらくは4週間に一度のペースで出頭しなくてはなりません。と書いて意味がわかる人にはわかる。わからない人は一生わからないほうが幸せなこともある。
 大雨・強風・波浪・洪水注意報でした。傘って非力な道具だとつくづく思った。おそらく我々の祖先が猿だった頃から雨には参っていたと思うんですが、その割にはあまりにも知恵が注がれていない分野ではないか。雨というのは斜めから吹きつけたり地面から跳ね上がったりするわけで、頭上にドームを掲げたところでたいした意味はないのです。

7月18日 男性の好きなスポーツ

17日。鬱。夕方までベッドの中で不安と闘う。夜になって1/2だめポロンと飲み。彼女はなんというか、確固たる理論に基づいて恋愛しており、それはそれで潔いなあと思った。洋服を誉めるように言われていたのにすっかり忘れてた。白くてヒラヒラしてて素敵でした。っていうのはどう?
 18日。鬱。夕方までベッドの中で不安と闘う。どうも最近自分から焼酎の匂いがしているような気がする。テレビをつけたら戸川京子さん自殺のニュース。えっ純さんじゃないの? と誰もが思ったに違いないが、あそこもそういうご家庭だったのでしょう。合掌。

消失への願望はとても甘美だけど、そんなことを思う時は得てして酷く消耗していて、行動に結びつける気力が湧いてこない。もしくは自分の行動が巻き起こす悪いヴァイブレーションを予想して、理性で押さえつけることができる。だから、普段からこういう感情を経験している人はあんまり自殺はしないと思う。
 ただ一度だけ、ヒューズが切れて別世界に行ってしまったことがある。で、またすうっと理性が戻ってくる。本当に自殺する人は、この突き抜けた瞬間にふわっと死んでしまうのかなあと思った。葛藤もなく、自動的に。例えるなら、酔っ払って記憶が無いのにちゃんと家に帰ってパジャマに着替えて寝てるように。

7月20日 日記弁慶

そろそろ楽しげな話を書かなきゃいかんなあ。流れ的に。

7月21日 アルクホールはいらない

待ち合わせに2時間遅れ、酔うために飲み、しかし上手に酔えなかった。今ごろあの子は浴衣姿で誰かと花火でも見てるのだろう、などと妄想しつつ一口。わおう! なんじゃこりゃ。ライムサワーってお酢で作るんだね。

7月22日 ナオルンZ

週に一度の通院ディ。最近の生活と考えを報告した。主治医から治療の長期的な展望について、ある提案を受けた (すでに充分長期的なのだが) 。そして再々メジャーデビュー決定。新しい仲間はベゲタミンという。クロルプロマジンの仲間。

帰りがけにいつもの床屋へ。主に湾岸の町工場のおじさんたちが利用するワイルドなお店。髪型は「パンチ」か「普通」か「スポ刈り」しかありません。もちろん「いたって普通」にお願いしたい。無言のまま15分で全ての行程を終え、最後に不愛想に『油は? 』と聞かれる。「整髪料はいかがなさいますかお客様」って意味ですよ。徳用ポマードを塗られたら嫌なので『いえ結構です』と応えると、『あっそう』と吐きすてて釈放してくれる。1900円。コワー。でもまた行く。貧乏だからな!

7月23日 おお、全ての土地はもう人が辿り着いてる

南アフリカ出身のロックバンド、The Flamesのマニアとして世界的に有名なBas Mollenkramer氏からメールを頂きました。軽い自慢だが、うちはThe Flamesにかけては日本一詳しいサイトなのだよ。どうやら日本盤について知りたがってるようなので、すぐにお返事を書きました。送信前にネイティブチェックをお願いしたところ、中学2年生レベルのスペルミスを発覚。危うく日本の教育のレベルを露呈するところだった。彼からのリプライは「君の英語は僕の日本語よりはうまい。しかし君の言ってる盤は知ってるし持ってる」。レコードコレクターの道は長く果てしない。

ベゲタミンは効いている。調べてみた。販売開始年月:1957年11月。規制区分:劇薬・向精神薬・習慣性医薬品・指定医薬品・要指示医薬品。...大丈夫なのかこれは。

7月24日 僕たち二人は春咲く花とみつばちさ

今さらながら安野モヨコさん「花とみつばち」を単行本で購入しまいました。恥ずかしい。逃げるように書店から脱出。実際これを読みたいがためにヤンマガを買っていたようなもんなんだけど、それを認めるのは社会的にちょっとどうかと思い。どうなのよ。引いてるかよ。

冴えない男子が果てしない勘違いの道に突き進む様を、女子の視点から冷酷に観察する。ひとつひとつのエピソードがフラッシュバックを呼び、強烈に痛い。痛いけど気持ちいいからもっと。って感じなのです。安野さんのテンション芸でしょう。その気になればいくらでもシリアスな話に出来るけど、基本的に男子は滑稽なのでギャグ漫画に落ち着いている。
 それにしてもあの日あの時を思い出しては女子の心理にいちいち感心する僕。そして冴えない男子のままリアルタイムに勘違いし続ける僕。でもそろそろお腹の弛みが気になるお年頃。えっマヨネーズでダイエットできるの?

7月25日 そこに山があるから

昨年のFUJI ROCK時の感化のされかたは全くお見苦しい程でしたが、今年もまた行くのです。祝祭の場に。音楽の原点に。ロックを浴びて今日を生き抜くために。実際のところ体調はますます衰え気味だけど、もう前夜祭が始まっているかと思うとわくわくするね。音楽があってよかったとしみじみ思う。バカっぽくてすみません。

そんなわけで日記はしばらく更新できませんが、掲示板のほうに現地から書き込みいれます。

7月26-29日 汗と埃と轟音の中で

FUJI ROCKから帰ってきました。音楽と森のこと。恍惚と浄化のこと。少年と少女のこと。ケイオスとコスモスのこと。FUJI ROCKの体験を言葉にすると、どうしても宗教臭くなっちゃってもどかしいんだけど。
 ミュージックフリークにはレコードやデータが好きな人と、音そのものが好きな人がいて、僕はどっちかというと後者なんだと思う。人が生きる必然の中で「音楽」が生まれて、僕は普通の人よりもたくさん「音楽」が必要なんです。それはヘッドフォンの中でくすぐったく囁く音でもいいし、山奥に設置された巨大スピーカーで数万人が踊り狂う音でもいい。

このサイトを読んでくださってる方の殆どはインドア派だと思います。僕も圧倒的にインドア。だから、僕が野外フェスに夢中になっているのを怪訝に思うかも知れない。でもFUJI ROCKを体験して欲しいんだ、みんなに。「興味はあるけど金がない」とか言ってるそこの君。君が買ったきり棚に積んでいるCDの山と比べたら、浪費だとは思わないよ。
 それにしても今年は、Televisionについて語り合った見知らぬ女の子が実は一回りも歳下だったり、Chemical Brothersで一緒に踊った同行者が10個下だったり、線香花火を囲んでまったり人生を語ってしまったり。この歳で修学旅行、みたいな倒錯した感覚を味わった。

ベストアクトは意外にも井上陽水さんで、何かが始まりそうな緊迫感、それを打ち破るだけの声量と演奏力、まるでBob Dylan@Royal Albert Hallだった。FUJI ROCKというイベントの空気や方向性を正確に理解して、「国民的歌手・井上陽水」として何を見せつけられるかわかってたんだと思います。鼻ピアスの少年やピンクの髪の少女がポロポロと涙を流し、抱き合って声を合わせて歌っていた。本当に、そうだった。
 陽水がアリならば、来年は和田アキコさんとか呼んでみては如何でしょう。歌謡ソウル一直線。面白いと思うんだけど。

さて、今回のFUJI ROCKでは、携帯から掲示板に現場レポートを送ってみました。いかがでしたか。
 新鮮な感動を伝えたくて始めたんだけど、携帯のキー操作が下手なので、書いてるそばからどんどん鮮度が落ちてしまう。しかも、レポートを打っている間は同行者との会話が途切れちゃうんだよね。僕自身が楽しんでなければ、いいレポートなんて書けるはずがない。東京に帰って読み返してみたら、やっぱり苗場の空気の500分の1も伝わってなかった。これは来年の課題にします。

今はまだ呆然とした余韻の中にいます。もうすぐ太陽が似合わないいつもの僕に戻ってしまう。歌います。
目が覚めて夢のあと 長い影が夜にのびて
星屑の空へ 夢はつまり想い出のあとさき
来年の夏は一緒に行こうね。