The album The Beatles were buying
when you were buying Beatles albums.

これは、1996年にBeach Boysの「Pet Sounds Sessions」が発売された時、キャピタルレコードによってつけられた有名なキャッチフレーズです。でもね、「Pet Sounds」を聴いていたのはBeatlesだけじゃない。

一介のダンス音楽「ロックンロール」が、人と音楽との関わり方を示す「ロック」という概念に進化しようとしていた1960年代。大西洋の西で東で新しい才能や音楽がどんどん産まれて、お互いの音楽や価値観を認めあいながらロック文化を形成していった。そんな時代にあって、最も先鋭的で最も洗練されていながら最もキュートで、そして最も誤解されているバンドがBeach Boysだと思うのです。

豊かなアメリカを象徴するような無邪気な喜びの放出からスタートしたBeach Boysは、やがて「イノセンスの消失」というロック永遠のテーマを提示して、果てはドラッグにまみれ、ビジネスの掟に翻弄されることになる。Beach Boysの歴史は、ロックンロールがロックへと進化するプロセスそのものです。ロックは何を失って、何を手に入れたの? 音楽のマジックは誰のためにあるの?

ポストロックやエレクトロニカの海に潜って彼らがBeach Boysの熱心な信奉者だと知ったり、ラウンジやモンドの海に潜って「SMiLE」の音のテクスチャに溺れたり、ソフトロックやギターポップの海に潜ってハーモニーの元ネタを発見したり。経路は違ってもBeach Boysに興味を持つ人って増えているように思います。

でも本に載っているのは、「豊かなアメリカ」への憧れと交差したお年寄りのBeach Boysばなしばっかり。巨大な冷蔵庫にはアイスクリームがいっぱい。暖炉を囲んで一家団欒。そのBGMとして明るく輝くBeach Boysのコーラス。お爺さんたちがそんなものに抱く憧景を、頭では理解できても共感はできない。

このページは、僕が愛するBeach Boys像に忠実にいきたいと思ってます。オールドファンの怒りと失笑を買うかと思います。Love And Mercyの心でよろしくお願いします。

1999年6月吉日(2016年2月吉日 加筆修正)
山下スキル