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6月12日 SIDE-A 愛猫チャイの死、または27年目のスィヴィアー・バイポーラー・イルネス
ねこがいない
ねこがいない
ねこがいない
ねこがいない
ねこがいない
ねこがいない
だれもいない
だれもいない
だれもいない
だれもいない
だれもいない
だれもいない
唯一の家族である
唯一の友達である
猫を亡くした
最後の家族である
最後の友達である
猫を亡くした
■
5月31日の朝に、愛猫チャイが亡くなった。物心つく前から動物をパートナーに生きてきた。僕の年齢的にも経済的にも、もう動物とは暮らせない。人間の醜い世界に独りで放り込まれてしまう。
犬・猫の平均寿命は10年、20年とどんどん伸びている。一方で生涯未婚者の平均余命は既婚者より8年短く、精神疾病者の平均余命は健常者より22.2年短い。日本人男性の平均寿命は81.1歳で、僕は54歳。もう「過ぎている」のだ。
■
両親のあまりもの早逝、また僕の双極症への無理解から、家族・親族がおらず、また発達障害的な不器用さから友達もいなくて、人間独特の(日本人独特の)腹の探り合いができない。動物は唯一の理解者であり唯一のパートナーだった。そしてチャイは最後のパートナーだった。
彼の存在にどれだけ支えられたかわからない。彼のいない未来に僕が耐えられるかわからない。チャイは推定18歳と超高齢で、腎臓病と脊柱の奇形があった。自分が消えたくなった時、彼の穏やかで幸せな余生を一緒に作ること、彼を安らかに看取ることを生きがいにしてきた。
■
猫は2-3歳児程度の知性を持ち、人間を遥かに凌駕する観察力がある。僕が落ちてると「ヒューマン辛そうだな」とさりげなく寄り添ってくれた。そのさりげなさに気づけない人が、猫は冷たいとか頓珍漢なことを言う。その上でチャイは、僕の頭をポンポンしてやると心が安らぐことを知っていた。
猫がいないって僕にとってそういうことなんです。
■
その数日後、訪問看護師がミスをした。もともとその訪問看護ステーションには疑問があった。毎回来る方が違う。しかもマスクをしているので、口元で人を判別する僕には誰がいらしたのかわからない。そして人員の入れ替わりが激しい。横の連携ができてない。中には僕の病気がなんなのか知らない方もいた。
そもそも行政の外郭団体の福祉担当さんが、僕に訪問看護師とヘルパーをつけようとした。「うちなら両方やりますよ」と言ったのがそのステーションの所長なのだ。僕のことをまるで理解してない看護師さんと話すことはない。バイタルを取って病状の報告をして、あとは僕が病的にこなせない家事をお願いしていた。
■
きっかけは些細なこと。台所のシンクの上に、スポンジや洗剤を置く台があるのだ。後からDIYで取り付けたので丈夫なもんではない。彼らはここを水切り台として、皿やカトラリーやハサミや包丁を置くのだ。前を歩けば揺れて落ちる。皿が何枚も割れたし、ハサミや包丁が落ちてきて、何度も怖い思いをした。
この日、食器はキッチンペーパーで拭いて食器棚にしまってくださいとお願いしたのだ。しかし彼らが帰って台所に行くと、問題の台の上に皿やハサミや包丁があった。
■
看護所長に連絡をした。僕は前からこの人が苦手だった。こちらの言葉尻を掴んで謝らせて◯にたい気持ちにさせる天才なのだ。たぶんいじめっ子出身だろうな。そしてズル賢くて体育会系だ。
「そもそも家事は看護師の仕事じゃなくてボランティアで、それで怪我をしたら責任は持てない、文句を言うのならば家事は辞めさせてもらう」と。いやそもそも「うちがやりますよ」と契約を取り付けたのは、その所長自身なのだ。見事に◯にたい気持ちになった。
■
頼りにしてる福祉担当は台風でお休み。孤独な僕にはそれでもう連絡先の宛てなし完全に詰み。そんな時にも優しい猫はいない。
翌日福祉の担当さんと病院のソーシャルワーカーさんに連絡をして、解約して別の訪問看護ステーションとヘルパーステーションを探すようにお願いした。
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新しい方が信頼に値する確証も、うまくやっていく自信もない。かつてお願いしていたヘルパーには新興宗教に勧誘され、信頼していた訪問看護師さんが異動して、人員不足で看護資格のない所長が来たことがある。
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ネットの双極性コミュに入ってた。この管理者がおかしな人だった。友達以上恋人未満的な好意を伝えられたことがあるのだ。向こうは結婚してるし、一度も会ったことがない。マジでキモかった。聞くところによると、別の男性には、今の夫と離婚するから結婚して欲しいと迫ったそうだ。
もうひとつ、彼女は高市早苗支持者だった。無関心層のなんとなくの支持ではなく、高市の卑怯で嘘つきで不誠実な人格と、憲法破壊や国民監視や戦争や貧困に進む「政策」を理解した上で支持していた。あの時に距離を置くべきだった。
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医者でもなく会ったこともない管理者は、僕が前にオーバードーズした時に「山下さんは週一通院でそんなに薬を持ってないから、みんなだいじょうぶですよ」と決めつけて宥めた。僕がちまちま貯めた頓服薬のストックを知らないのにね。
僕は連日徹夜の猫の看病と死後のあれこれと心の疲れに負われて、そのコミュをしばらく離れた。その間に「予期せぬ角度から罵倒されることを恐れてる」とポストをした。発達障害的に僕には「集団心理」がわからない。いままでなんども起きた災難だからだ。
■
管理者はまたしても僕の症状について決めつけて、「山下さんは疲れてるだけだからだいじょうぶ」とみんなを宥めて、僕のミュート・ブロックをすることを示唆していた。ミュート・ブロックするかしないかは参加者の自由だ。でも管理者が示唆すると話は違う。彼女の決めつけばかり拡散して、実情が届かないと不満を述べた。
「私には70人のメンバーを守る義務がある」と返事がきた。実際は僕1人を生贄にすることで、69人を守っていた訳だ。
■
実際にコミュニティに戻ったら、彼女が罵倒の最先鋒にいた。「転送」という機能を使うなよと。山下は転送を使いすぎるから困るしキ◯ガイだと、実際に予期せぬ角度が罵倒が来た。
健常者の「みんな」なら、転送機能は迷惑になると予想がついたのかもしれない。開発者はなんでそんな機能をつけたのだろう。僕は存在する機能を使ってはいけないと知らなかったのだ。
■
僕は長い人生で1度しか「みんな」に入れて貰ったことがない。いまグラビアアイドルとして大活躍してる永岡ゆきねさんだ。彼女が中学生の頃に、ネット配信でやたらと「みんな」と呼びかけた。みんなって誰?って聞いてみた。
「みんなはみんなや。生きとし生けるものみんなや。スキルもチャイもみんなや」。中学生でそのボキャブラリーに驚き、自分にはないおおらかさに感動した。それ以外の54年において、僕は便利な生贄だった。
■
かつてそのコミュで、生成AI画像の著作権について意見を言った方がいた。僕はその方の意見に賛同だった。でもやっぱり「みんな」は彼をめんどくさい奴として追放した。
コミュニティを退会する前にちらっと覗いたら、管理者が「ほかにも彼の元を去った人々を知っています」と。つまり山下はオカシイから、私たち「みんな」はマトモだから大丈夫だよと書いてあった。
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いつもの「猫がウンコするのも宇宙が誕生したのも山下が悪い」理論が出た。なんでも僕が悪いんです。ほんとうに猫がうんこするのも宇宙が誕生したのも僕が悪かった。生きててごめんなさい。
■
僕は数年前から4回、3ヶ月の長期入院と、法的な理由で3ヶ月の自宅療養を繰り返していた。5回目の入院をしなかった理由はふたつ、超高齢で病気を持ったチャイと残された時間をできるだけ一緒に過ごしたかったこと。もうひとつは僕の入院費は社会制度で無料にできるけれど、その間にチャイを預かってもらう入院費を出せなかったこと。チャイが亡くなったいま、僕は5回目の入院をすることになると思う。
僕は実家の墓には入りたくない。同居したすべての犬・猫のお骨を持っているので、彼らと入れるお墓で動物と過ごしたい。でも墓を買う金なんて当然ないので、動物たちの骨と海に散骨してくれないか。亡くなった動物が暮らす虹の橋というものがあるのなら、そこで彼らと穏やかな死後を送りたい。
6月12日 SIDE-B 2026年初夏のSOUNDTRACK
■
人生のど真ん中に猫と音楽があった。猫を失ったいま、音楽に依存してる。細野晴臣さんも、ほんとうに癒してくれる、信頼できるのは猫と音楽だけって言ってた気がするよ。
■
最近聴いてるのは、
>underscores / U
Angine de Poitrine / Vol.II
My New Band Believe / My New Band Believe
Friko / Something Worth Waiting For
Visible Cloaks / Paradessence
Tara Clerkin Trio / Somewhere Good
Bedouine / Neon Summer Skin
といった若手の音楽に、
>Paul McCartney / The Boys of Dungeon Lane
という重鎮がドスンと入る。
で、去年聴いてたMei Semones / Animaruや、彼女のその後のシングルで一休み。
■ underscores / U
サンフランシスコのフィリピン系アメリカ人、トランスジェンダーの女性。SoundCloudで発見されて、ダブステップやフォークのアルバムをリリースしてたそう。僕はこのアルバムで初めて知った。ハイパーポップです。インタビュー記事によると、「どこにでもあるがどこでもない場所。蛍光灯の下に漂う匿名性と、6歳のときに自分を駆り立てたものへ接続しようとした」。いろんな光景の隙間を跳ね回るようなアルバム。
■ Angine de Poitrine / Vol.II
このアルバムで、パロディバンドまで登場するほどブレークしたエクスメンタルロックデュオ。ふたりとも被り物をして、ひとりはギターとベースのダブルネックでループを重ねて、もうひとりがドラムでポリリズムを叩きつける。タフなジャズロック的で攻めた音楽なんだけど、その複雑なポリリズムがクセになる。中の人は誰なんだろうか、演奏力によるものが大きいと思うよ。被り物も含めて地球外の何かしらを感じる。
■ My New Band Believe/ My New Band Believe
元black midiのベース・ボーカルCameron Pictonの新プロジェクト。着想のきっかけが、black midi時代に中国のホテルで高熱に倒れて観た白昼夢だそうで、病的でもあるし焦点があってるとも言える。退廃的でもあり生命力もある。音楽的にはチェンバー・ポップなのかな。昔ならアートロックに括られたかも知れない。美しくて不安定な声。
■ Friko / Something Worth Waiting For
デビュー作が話題になったシカゴのバンドのセカンド。痛々しくも生命力がある。敢えて例えるなら初期のArcade Fireだろうか。フィードバックかけた轟音ギターがたまらん。チェンバーポップでもありシューゲイザーでもあり。バラエティに富んだ「青春の痛み」コレクション。ロックの普遍をいまにアップデートしたような、またしても名盤。
■ Visible Cloaks / Paradessence
ポートランドのデュオ。このアルバムもパラドックスに満ちて、有機と人工、偶然と意図の対立軸の衝突の面白みに満ちてる。そもそもタイトルが「paradoxical(逆説的)」と「essence(本質)」を合わせた造語だそう。日本語とフランス語の同時朗読だとか、ヴァイオリンの生々しさと打ち込みのリズムがとけあったりだとか。夜の洞窟みたいなアルバム。
■ Paul McCartney / The Boys of Dungeon Lane
The Beatles時代に、「いつか歳を取って64歳になっても僕を必要としてくれるかな」と歌ったPaul McCartney、83歳の傑作。先行シングルの枯れた味わいや、キャリアで一番内省的なアルバムといった情報から、静かな作品を想像してたけど、バラエティに富んだロックンロールなアルバム。内省的というよりも出発点、JohnやGeorgeと出会った頃を振り返った作品。それはノスタルジーでもあるし、少年に戻る瞬間も見え隠れする。
■ Tara Clerkin Trio / Somewhere Good
ブリストルのトリオのデビュー作。ポストロックやアヴァンポップやジャズやネオクラシカルをごちゃまぜにして、2026年のインディーロックに仕立て上げたような傑作。浮遊感と白昼夢の中に潜む恐怖、のような。アルバムとしてのトータリティが半端ない。未来へと展開していくようで、天国はここかも知れん。
■ Bedouine / Neon Summer Skin
シリア生まれ、LA在住の女性シンガー。家族の住むサウジアラビアを訪れて、祖国や家族が壊されていく喪失感を描く。音楽的には70年代SSW的なエヴァーグリーンな楽曲。さまざまな楽器を弾きこなしてバロックポップ的に展開していく。痛みと驚きの感情が鮮やかに流れ込んでくるアルバム。
■ Mei Semones / Animaru
これは去年のデビューアルバム、その後もコラボレーションのシングルやEPを次々とリリースしてる。ミシガン出身、日米のハーフでバークリー音楽院卒業の、たぶんベースにはジャズやボサノヴァがある24歳の女性シンガー。言葉も英語の中に自然に日本語が混じってる。無邪気でノスタルジックながら、タンクトップを愛用してInstagramやTikTokではデコルテが気になる、清楚エッチな多幸感。今年の音楽を浴びて、疲れたらふと帰りたくなる場所。
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