DIARY 2003年1月


1月1日 もはや戦後ではない

大晦日の夜は実家で過ごす。といっても実家には誰もいないのですが。一人でテレビを眺めつつ年を越し、『爆笑オンエアバトル』に爆笑して、我にかえったら部屋がシーンとしてるのは寂しいね。
 そのまま居間で寝てたら、朝、ドアをがちゃがちゃする音で目が覚めた。隣に住んでる父方の祖母が普通に入ってきて、無言のまま冷蔵庫からタマゴを持っていった。タマゴを盗ったんじゃなくて、うちの冷蔵庫を勝手に使用している様子。新年の挨拶も、おはようの一言もなく今年が始まってしまった。

昼過ぎに弟夫妻がやってきて、ようやく父方の祖母に正式な新年の挨拶。おせちを頂いたのだが、このタマゴは先程まで我が家の冷蔵庫に入っていたものと思われる。それにしても祖母という生き物は、孫がご飯をたくさん食べれば食べるほど喜びます。お雑煮に入っていた大福ほどのお餅を3個も食べた。この時点でかなり胃もたれ気味。
 両親の墓参りを済ませて、夜は母方の祖母の家に従兄弟が集まる。それにしても祖母という生き物は、孫がご飯をたくさん食べれば食べるほど喜びます。今度は天ぷらを3人前ほど食べた。

戦争を生き延びた世代というのは何よりも先に食料の心配をします。そして異様な気力で若者たちのパワーを吸い取る。おばあちゃん、戦争はもう終わったから。食料には困ってないから。ようやくアパートに戻り、胸焼けで4時間ほど悶え苦しんだ。正月って辛いなあ。

1月2日 志村は知っていた

胸焼けで眠れないまま朝を迎え、今日は亡父の中学時代からの親友宅にご挨拶。というか正月にかこつけて食事にお呼ばれ。両親の築いた交友関係にいつまでも依存します。
 おじさんは商才に長け、トークも最高に面白い。だから今では誰でも知ってる超有名企業の中核にいて、正月の料理もこんな感じである。驚愕して写真を撮ってる僕はいつまでたっても小市民だろう。

それにしてもこの一家には、産まれる前から超お世話になっている。僕のライブ初体験、『8時だヨ! 全員集合』の公開生放送に連れていってくれたのもこの一家。スピーカーの大音響と狂喜の歓声の中で「志村ー! 後ろー!」と叫びながら、僕はトランス状態を憶えたのでした。
 すっかり忘れていたのだが、おじさんは子供たちの「CMの間は何をやっているのか知りたい」という疑問に応えるために、わざわざ席を取ってくれたんだそう (なんてことはない、CM中はセットチェンジをしていたのだ) 。

ところでY.I.氏電撃入籍です。ずっと口止めされてウズウズしてたんだ。11月25日の日記にフライング情報を載せたんだけど誰にも気づかれなかった (この前日に、彼はお相手のご両親に挨拶に行った) 。入籍が早まったのは、彼女が配置転換の希望を出すための事前工作であり、我々はこれを「書類できちゃった婚」と呼んでいる。何はともあれ末永くお幸せに。

1月4日 海老一染太郎を追悼する

今年はどうも滑り出しがよくない。日本はついに染之介・染太郎のいない正月を迎えてしまった。このローテンションが今年の日本経済、ひいては今後の世界経済に与える影響を想像するに、染太郎こと村井正秀という人物の果たしてきた功績に改めて感服する次第。正に頭脳労働でありました。

Don't Trust Over 30まであと1週間だというのに自分の選曲のイメージが浮かびません。体調が悪すぎてそれどころじゃない。でもほかのメンバーが面白いのでね。sasakidelicさんがご自身のBBSに最高にかっこいいフライヤーを載せています。

1月11日 Sound & Vision pt.1

おそらく最初で最後の主催イベント、Don't Trust Over 30の日。でもまだ選曲の方向性さえ決まらないというこのリアリティ。今まで参加させて頂いたDJイベントには、それぞれイマジネーションを喚起させるキーワードがありました。でも「Don't Trsut Over 30」という言葉から何を引き出せというのか、自分よ。
 高校生の頃、「Don't Trust Over 30」というレコードを初めて聴いた時に思い描いた30代像と、今の自分はあまりにもかけ離れている。なんとなく30代になってしまった僕が、いまどんな音楽を提示すればいいのか。この一週間ひたすら頭を抱えてました。

しばらく日記を更新してなかったから、また細かいネタ仕込みをしてると思ったでしょう。もうね、全然そんなんじゃないの。前日の23時頃になってようやく仕込みを始めたんだけど、いきなり借り物機材の操作に躓き、持ち主のヌカタシに電話する有り様。PAをお願いしているY.I.氏は、風邪をひいて行けないかも知れないという。参った。そのうえ友達からも「ごめん行けない」メールを大量に貰って、現在おおいに凹んでる。DJが7人でお客さんが3人とかだったら泣くぞ。本当に泣くぞ。

1月11日 Sound & Vision pt.2

...という状態で会場に向かう。Y.I.氏は新婚&風邪にも関わらず、セッティングのためだけに来てくれました。ありがとう。心配していた集客のほうもばっちりで、開演時間の18:00には椅子席はほぼ埋まってしまった。その後もひっきりなしにドアが開いて、グラス片手に店内を移動するのが難儀なほどの大盛況でした。
 来てくださった皆さん、とってもとってもありがとう。なんかバタバタしちゃって、ひとりひとりとゆっくりお喋り出来なかったのが心残りです。あんまりバタバタしすぎて階段から豪快にこけたんだが誰も突っ込んでくれなくて寂しかった。やっぱり主催者って柄じゃないわ。他力本願でこそこそと生きて参りたい。

最初の出演者、Y.A.さんはさすがの安定感と男気を見事に両立させてくれました。F.T.氏は選曲にセンスのよさとルーツの近さを感じた。「脱線ソウルトレイン」を標榜するK.M.氏は掘り出し音源でリスナーとしての深みを披露。一番の波紋を呼んだのはT.A.。Power Bookで波形を操作し、アブストラクトな世界を繰り広げる。ブースの周りをファンが取り囲んで大変でした。その空気を無理なくポップ方面に引き戻してくれたのがムネカタアキマサさん。場慣れてる。そして最後はsasakidelicさんがクールにセクシーに締めくくる。
 もう一人出演者がいた。僕か。僕だ。普通に出番を忘れて飲んでました。ハッピーチャーム系から内向世界へ。映画「Leon」から「大人になっても人生は辛い?」というセリフをサンプリングしたんだけど誰も気づかなかっただろう。

会場のお客さんもバライティ豊かだった。とにかくモテまくってたのが美形プログレ女子高生T.K.さん。僕も一緒に写真を撮ってもらっちゃった。M.A.さんはネット界の大物を沢山連れてきてくれました。こんな場末サイトの存在を、頭の片隅にでも置いといて頂ければ幸い。さらに「動く山下さんが見たかったんですぅ」っていう謎な女の子。動く山下さん、別に関節が逆に曲がったりしないよ。そしていとうまさみさんと歴史的邂逅。ずっと前から大好きでね、僕の文体は彼女にかなり影響を受けている。
 お名前を挙げていったらきりがない。とにかくあの時空を共有してくださった皆さんにありったけのラヴと感謝を。そんなものいらないと言われても是非。

本当の僕はただの臆病者で、なんで自発的にイベントをやろうと思い立ったのか不思議なくらいです。思い切って「おーい」と声を出してみたら、沢山の仲間が乗ってくれて、沢山のお客さんが集まってくれた。みんな楽しそうな顔をして、いいパーティだったと言ってくれた。不思議でありがたくて。リップサービスでもいいんだよ。お店を出て、Y.Y.さんに頂いた不思議なメガネをかけたら銀座の夜景がハート型に見えた。レンズの作り出す幻だとわかっているよ。
And I will sing, waiting for the gift of sound and vision.
Drifting into my solitude, over my head.

今日の写真を撮ってくださった方、メールに添付して送ってください。専用サイトにはりつけます。疲れた! 寝ます。

1月15日 Weekend is over, here comes the working week

お祭りはもう終わったと思っていたんだけど。連休が明けた14日のヒット数が500件ありました。当日お越し頂いた皆さんのサイトを眺めていても、まだまだ余韻が残っている様子。
 でも僕はきっかけを作っただけで、あとはみんなが勝手にいいパーティにしてくれたんだよ。僕の知らないところで新しいコミュニティが形成されているような、被害妄想的な疎外感に苛まれる。ねるとんパーティの主催者とかこんな気持ちかも。人間がちっちゃいねえ。

僕が初めて「Don't Trust Over 30」というレコードを聴いたのは17歳の頃で、Over 30なんて想像もつかない未来のことだと思ってました。でもたいした成長もなく時は流れて、自動的にOver 30になってしまった。だから30代である自分を認めたくない、という気持ちが一方にある。でももう一方に、人間としても音楽ファンとしても尊敬できる「お兄さん」と知り合う機会が増えて、彼らに追いつきたいという気持ちが出てきた。そんな「お兄さん」たちを、例えばDJブースの前に並べてみたらどうなるかなと思った。
 みなさんそれぞれに30代の気概を見せてくれた。取り残されたのは彼らにとても追いつけない自分の存在。それが今はとても辛い。

もし次に何かやることがあったら、DJが全員女の子のイベント (PAT.PEND.) をやってみたい。女の子の作ってくれるコンピレーションが大好きで。これは妄想なんだけど、男子は自力で芋づるを辿って音楽地図を作っていく。女子はつきあってきた男子の影響で、ポイントポイントで変な音楽を知ってたりする。だから男子の発想では有り得ない組み合わせをポンと出してくるんです。
 この企画、春までにやろうか、とかそういうスパンじゃなくて、老後の楽しみくらいの気長な感じで暖めて参りたい。そんなわけで。アデュー。

1月17日 20世紀少年

小・中学校の同級生だったM.H.くんとひっさしぶりに会いました。十何年ぶりとか? M.H.くんは仕事の関係で今は群馬にいるけれど、実家が僕のアパートのすぐ近くなんで、僕がこの街を離れる前に会っておきたかった。
 実は母の葬儀の時にも小学校の同級生が何人か来てくれたんだけど、みんな老けてて誰だかわからなかった。当時から老け顔だったM.H.くんはいったいどうなっているのか、と思ったらほとんど変わってなくて、そのまま歳相応の顔になっていました。僕も自慢じゃないが (自慢だが) 、正面から見た顔は当時とあんまり変わってないと思う。そしてこれも自慢だが、歳のわりに肌のコンディションはいい。ただし大学を出てから超太ったので、アゴのラインは別人と化している。

僕らの担任の先生は、40年近い教職生活の中で忘れられない二大問題児がいて、そのうちの一人がこの僕だという。どう問題だったかというと、とにかくクラスに溶け込めなかった。そして非常にマイペースだった。だから昔の同級生と会ってもうまく話せるか心配で。
 結果は...少なくとも僕は楽しかった。M.H.くんも僕のような異物を受け入れるようになったし、僕も少しは人に合わせられるようになったのかな。あの頃お互いどんなことを考えていたのか。そこからどうコマを進めていったのか。彼が高校時代にバンドを組んでいて、そのメンバーの一人が偶然僕の知り合いだったのにはびっくりしました。M.H.くんは、僕が音楽サイトを立ち上げたりイベントやったりしているのが意外だったみたい。小学生の頃は音楽の話なんてしなかったもんね。

小学校の友達と言えば、こんな人がサイトを持っていて僕のことを書いています。「山下少年」っていうコラム。彼はいまロンドンにいるという。すかした文章書いてるな。お前、こんなキャラじゃないだろう。

1月19日 動員記録

我が家でDon't Trust Over 30の打ち上げ。参加者は、メンバーのY.A.さん、F.T.氏、K.M.氏、T.A.、PAのヌカタシ。ゲストにY.Y.さん、M.H.さん、U.K.くん、T.P.嬢、T.K.嬢。そして僕の11人。
 大人数すぎて鍋もテーブルも二つになってしまい、どこでどんな会話があったのか把握してません。その狭間に座って何度も電源コードを抜いちゃったのがF.T.氏。彼の芸風は突っ込みやすくて愛されキャラだ。僕とT.A.はM.H.さんに「男を磨け」とお説教を受ける。K.M.氏は「熊カレー」と特殊な形状をした歯ブラシを手土産に登場し、病み上がりとは思えない歪んだギャグをかます。

夜も更けた頃にはレコードに合わせて大合唱。そういうシチュエーションを自分の居場所にできるかどうかっていうのは、ふとしたタイミングの問題だったり心の距離の問題だったり、オーラだったり風水だったり天気のせいだったりする。居心地が悪かった人もいると思うよ。僕も本来はソロ活動気質だし。
 最後は「Niji」で締めて、みんな潮が引くように一斉に帰っていきました。静まりかえった部屋を片付けながら、無性に寂しい気持ちになった。「High & Low」というレコードをかけて、一緒に歌いながら皿を洗った。みんなのメールや日記によると、やっぱり一抹の寂しさを感じてた人がいるみたい。鍋らしい和やかさを演出するには5人までだね。それ以上は主催者として、みんなの気持ちをケアできないわ。

1月20日 ぬるりとした梅酒

酔っ払ってうちに泊まったT.A.を見送り、テレビをつけながら家具の移動。きのうは大人数を収容するため、ベッドを窓際に追いやったのだった。

「さらりとした梅酒」のCMは、なんでいつもぬるりとした声質の女優さんを起用するのかと思う。
 勘のいい皆さんならお気づきでしょう。殺虫剤のCMで虫が1匹だけ逃げていたり、ニキビ薬のCMで皮脂が微妙に残ってたりすることを。これは、効果についてクレームがきた時のための事前策なんだそうです。同様に「さらりとした梅酒」は、梅酒としては比較的さらりとしているものの、全面的にさらりとしているとは言い切れないために、さらりとしてない歌声になっているのではないかと憶測。

1月21日 カレーにしてみました

『北海道の雄大な大地に生息するヒグマをカレーにしました』。するなよ! 大自然のイメージとカレーの生活感がごっちゃになって、いまひとつコンセプトが掴み難いこの商品。先日の打ち上げでK.M.氏に頂いた「熊カレー」です。
 缶をあけて驚いたのは独特の粘っこさ。カレーを煮詰めた感じじゃなくて、なにやらゼラチン質のサムシングが混入しており、触るとプルンとした弾力があるのです。

レンジで暖めて、まずは肉だけ食べてみた。さすがに臭みがありますね。ゼラチン質の物体は熊の油脂だろうか。ルー自体はそれほど辛くないのだが、香辛料を多用しているせいか後味がヒリヒリする。肉の匂いを消すために最大限の努力を払った痕跡がみられる。しかし「努力をすれば必ず報われる」とは限らないことを、この熊カレーは僕たちに教えてくれる。
 カレーの達人でありながら敢えてこのカレーをくださったK.M.氏は、人生の先輩としてそのことを伝えたかったのかも知れません。

1月24日 A Hazy Shade Of Winter

実家の修繕計画が頓挫中。どうでもいい原因で話がややこしくなり激しく凹む。早く済まして引越して落ち着きたいんだけど。

我が家で鍋会。毎週のように同じことを書いてますが。我が家で鍋会をやるメリットは、ちょっとくらい調子が悪くても出席できること。デメリットは、ちょっと調子が悪くても欠席できないこと。今日は気心知れた5人鍋だったのだが、僕は微妙に楽しく、微妙に居心地が悪かった。途中でこっそり抗鬱剤を飲んだ。マユコさんが台所で下準備をしてるのかと思ったら、キノコと昆布で字を書いていた。きみのそういうとこ、僕は好きだよ。

1月25日 ラジオからマリア・マルダー

いとうまさみさんが出演する、Piano & Womanという企画ライブを見てきました。出掛けに、ダンディなカメラマンであるところのF.T.氏からお茶のお誘いがあり、せっかくだからということで一緒に四谷天窓へ。ドアを開けたらいきなりいとうさんがいてびっくりした。
 5人の出演者のうち4人のステージを見たのだが、皆さんクオリティが高い。こんなシーンがあるなんて知らなかった。でもやっぱり背後に矢野顕子の影が見えたかな。そんな中でいとうさんの世界は素晴らしくオリジナルでありました。F.T.氏がCDにサインして貰ってるのが羨ましかった。

その後2人で初台に移動、某大物ドラマーのライブの打ち上げに侵入し、T.P.さん・Y.K.さんと合流。何食わぬ顔で餃子とか食ってしまった。
 それでも飲み足りないってことで、新宿の手羽先屋に移動してぐうたら飲む。メニューに載ってない芋焼酎「三岳」を出してくれた。旨い! 昨今デイジーワールド界隈で繰り広げられている一部男子間の駆け引きについて、女子からの率直な感想が聞けて実に面白かった。女の子は見透かしてるよ。その他、人間関係全般について大雑把に語る。わっはっは。うるさかったらすみません。2時閉店なのに2時半までいてすみません。そんなわけで冬空の下、いとうさんの「肉料理・魚料理」という歌をくちずさみながら家路についた。

1月31日 暮らしのガイド

作業椅子が壊れちゃった。ドとレとミの音が出ない。ピンが抜けてガクって。どうにもならないので捨てることにした。前に別件で大森清掃事務所に問い合わせたことがあります。
 『ちっちゃい掃除機を捨てたいんですけど粗大ゴミですか不燃ゴミですか』『うーん、結局は現場判断になっちゃうんですよね。とりあえず不燃ゴミで出して、清掃員が回収したら不燃ゴミ、置いて行ったら粗大ゴミです。都指定のゴミ袋に入っていれば大抵は回収します』

ということなので、椅子もゴミ袋に入るまで分解しなくてはならない。ネジで外せるところは外して、パイプを一生懸命折り曲げてみた。都指定のゴミ袋からちょっとはみ出るんだけど大丈夫かな。こっそりゴミ捨て場に置いて、回収してくれるか遠目に観察した。
 大田区の皆さん、椅子は不燃ゴミです。しかし分解作業は重労働で、それだけで何かを成し遂げたような錯覚に陥る罠。