DIARY 2003年4月


4月1日 April Fool

就職しました。という自虐ネタを書こうと思ったがやめた。April Foolは僕の一番好きなバカラックナンバーです。死んだらこれをかけて欲しい。
 さて。引越しをすませ、誕生日を迎え、新年度を迎え、よっしゃーという時にいきなり「幸福の木」が倒れて鉢植えが割れたりする昨今ですが。空転する3月の疲れがどっと出た。しばらくは安静期間かな。引越しに伴って転院しました。社会復帰プログラムで有名なところなので、少しづつそっち方面に向かいたいと思う。新しい担当医の言葉のニュアンスを探り探りの一時間。

夜は前の会社の人々と久しぶりに飲み。麻布十番の「ラッキー酒場」っていうすごい名前のお店。昭和30年代っぽい内装が実にいかす。フェイクではなく、本当に昔の家屋を改造しているので趣が違います。
 で、いきなり「掲示板で話題になってたから」って大島弓子のエッセイマンガを渡された。ええっこのサイト読んでるんですか! ハローハロー。デザイナーの元気な女の子、A.A.ちゃんが髪を伸ばしてすっかり大人っぽくなっていた。素敵OLだ。相変わらずファッションセンスのない僕のために、港区っぽい服をコーディネイトしてくれるという。それはもう是非によろしく。

4月6日 Gamera VS My Grandma

今週はね、新居での生活を確固たるものにすべく、やってるふりしてやってなかった事務処理を片付け、使わなそうなものをぐちゃぐちゃに放り込んだ物置き部屋を片付け、バイトにレッスンにボランティアに積極的に取り組むはずだったんですが、なんだか疲れてぐったりしてました。物置きの片付けまいったなー。ふかわりょう氏に依頼したい。
 猫はすっかり新居を我が者顔で闊歩し、モリモリ食ってます。それでも微妙に痩せた。前のアパートは走り回るスペースがなかったからな。

嬉しかったのは、マユコさんと久しぶりに差しで飲み&語りができたこと。こんなに長いこといい友達でいれるとは思わなかったね。しかし彼女のダーリンが、「山下さんと二人で飲んでる」というと安心するのは如何なものか。僕だってアニマルになっちゃうかもよ (なれるものならなっているさ) 。
 そして家庭円満を装おうため、父方の祖母を弟の新居に連れていった。弟の家には犬もいるがモモンガもいる。そしてガメラもいる。ガメラは恐すぎるのでテラスに追い出されているのだ。こんど火を吹くところを見せて欲しい。

4月9日 SAKURAドロップス

日本人たるものDNAレベルで桜を愛するものと文部科学省で決められており、なんとなく花見とかしなくちゃいけないムードなのですが。あまりにも華美でドメでそんなに好きじゃかったんだよ。二十歳くらいの頃、劇団の仲間と湘南台公園の桜の下で大騒ぎして、明け方の茅ヶ崎で海に向かって叫んだりっていう再放送のドラマみたいな想い出があるくらいで。でも今年はなんとなく花見だった。
 目黒川を臨む南国料理屋さん。隅っこの席から窓一面の桜。前日の雨でかなり散ったと思ったら結構残ってました。同行者はライトアップで赤く見えてるだけだと主張。どっちでもよい。僕は初めて、桜を心から美しいと思った。

猫が猫タワーにぶら下がってた鈴を取って追っかけ回して暴れてます。彼の心を掴んだのはタワーより鈴だった。

4月12日 decade:nt

猫のワクチン接種と健康診断のために馴染みの獣医さんに行ってきました。馴染みと言っても親や弟が犬を連れていくのに同行したことがあるだけで、自分の猫を診てもらうのは初めて。恐ろしく丁寧な診察にびっくりした。歯石がずいぶん溜まっていて、このままでは歯茎を傷めてしまう→麻酔をかけないと歯石が取れない→麻酔をかける前に検査が必要→必然的に一泊入院でこのお値段になりますと言う。うーん。前に通っていた大田区の獣医さんなら1/3でやってくれるよなあ。しかし僕の次なる野望のために、こちらの獣医さんとも仲良くしておきたい。心揺れる春。

ところで過去のワクチン接種記録を調べてたらすごいことに気がつきました。おまえら昨日で10歳だったのか! ハッピバスディ。もう鈴とか追っかけてる歳じゃないだろ。10年かー。僕がちょっとばかりいい調子だった時も、デカダン生活を送っている今も、側にいてくれてありがとね。

4月15日 赤裸々ダイアリー

新しい病院で2回目の診察。予約を入れていたにも関わらず1時間待ちでした。前に通っていたのは駅前のクリニックで、飛び込みでも30分待つことはなかったんだけど。今度は本を持っていこうなどと思う。
 しかし大病院というのはシステマティックで実にかっこいい。カルテはもちろん、前に別件で撮ったレントゲン画像までパソコン上で一括管理されているのです。そして天井には未来都市のような無人モノレールが行き交い、事務室や診察室の間を忙しそうに走り回っている。あれ、何を運んでいるのかなあ。フロッピーディスクだったりしてな。

ニコタマでお茶。いろんな女の子と会っていることを日記に書き過ぎと言われた。えーお茶したり酒飲んでクダまいたりしてるだけだよ。男の子と会うのも女の子と会うのも意識としてはそんなに変わんないんだ。そういう見方があるとは思わなかった。
 渋谷に移動して、仕事帰りの人々をつかまえて飲み。スペイン坂のちょっと先、焼酎が300種類も置いてあるという新しいお店。明らかに焼酎ブームに乗っている感じだけど、敷居が低くて食べ物も旨くていいお店だった。で、終バスを逃したので渋谷から歩いてみた。なんだ、歩けるじゃん! でも翌日ぐったり。

4月17日 明朝体の美学

「動物のお医者さん」ドラマ化問題ですよ。どうなのよ。禁断の扉を開いてしまったテレビ朝日の勇気は実ったのかよ。
 かつては日本テレビがドラマ化を企画したものの、原作者の佐々木倫子が首を縦に振らなかったので、設定を変えて「愛犬ロシナンテの災難」というアレなドラマに変貌したのは有名な話。同様の理由で、「おたんこナース」を下敷きに「ナースのお仕事」が作られた。佐々木倫子の「間」がドラマ向きじゃないのは本人が一番よくわかっている筈なのだ。

で、初の本人公認のドラマ化、かぶりつきで見ちゃいました。放映中にメールボックスがパンパンになった。みんな見てるんだなー。肝心の内容は...探り探りという感じですか。原作のセリフに忠実にいこうとするあまり、テンポ感の微妙な違いが気になってしまう。あのト書き、動物の心の声、原作では明朝体で語られる部分をナレーションにしてみたりテロップにしてみたり。迷いを感じるんだよな。
 もっとこう、ありえない沈黙とかありえない硬直とか、編集で冒険しちゃってもよかったと思います。11時台の「TRICK」をやってた枠だったら出来たのかもね。

チョビはまぎれもなくチョビでした。ミケもなかなか。吉沢悠さんのハムテルはまだキャラを掴み切れてない様子。今後に期待。和久井映見さんの菱沼は、色気のなさが思いのほかフィットしてました。江守徹さんは漆原教授を履き違えている。僕の大学時代の担当教官坂根厳夫氏が素で漆原教授だったので、テレ朝は彼に出演依頼するべきだった。そして二階堂が、ああ二階堂が違い過ぎるのだよ。もっと薄味で存在感がなくて、小ネズミに怯えハムテルを盾にする二階堂であって欲しい。

4月19日 フォントのことが知りたくて

いとうまさみさんのライヴを見に渋谷Wasted Timeに行ってきました。彼女のライヴを見るのは今年に入って3回目。お気遣いでご招待扱いにしてもらっちゃった。加えてThe Frank Cunimondo Trio Introducing Lynn MarinoのCDを頂いてしまった。嬉しい。ファン冥利に尽きる。
 Wasted Timeは初めてのお店だそうで、PAのバランスが悪くてちょっとやり難そうではあったけど、相変わらず毎回新曲を作り、カバーもやる姿勢には感服。「南国旅行」のとろけるようなピアノソロと甘いボーカルにやられた。

次の出演者は、昔よくいた深夜ラジオ出身のニューミュージックっぽい女性。上手いんだけど閉じてるかな。手作りのニューズレターは第43号で、何年こういう活動をしてるのかと思う。3組目はブルースバンド。最初はTom Waitsみたいな渋いボーカルとジャジーなピアノでいい感じだったんだけど、ギターに持ち替えてからは、様式美としてのブルースを演じてる俺、が好きな感じだった。こういうアマチュア≒セミプロぐらいのシーンって独特で面白いよ。
 帰りにいとうさんと大学時代の2個後輩の女性、僕と大学時代の2個後輩のN夫、の4人で麹屋萬兵衛。「動物のお医者さん」話など。あの手描きの明朝体はすごく古いフォントなんだって。

頂いたThe Frank Cunimondo Trio Introducing Lynn Marinoは素晴らしいアルバムだった。Blossom Dearieっぽいって言われてるけどAnnie Rossっぽかったりもして、過剰な色気を感じさせないスタイルは非常に好みです。特にアップテンポの曲は生き生きしてて気持ちいい。トリオの演奏もヒップで乾いてていい。このサイトを読んでくれてる人ならきっと気に入るよ。

4月23日 ゲッツ

やってるふりしてやってなかった家庭の事務作業をまとめてやるディ。母の死去から半年、まだやり残してることがどんどん出てくるから驚き。
 みなさん民生委員って知ってます? 各地域にひとりづつそういう係が決められていて、お役所に提出する書類に、時に民生委員のサインが必要だったりする。しかし民生委員も一般市民なので、普通に旅行に出掛けてたり書類の書き方がわからなかったりする。かくして見ず知らずのおばさんに、僕が山下家の一員であることを証明してもらうのです。不思議すぎる役所のシステム。

そして渋谷に出ていろいろとお買い物。The Mock TurtlesのFatboy Slim Mix、Blossom Dearieの66年のライヴ、Pyrolatorの1st、IRMAレーベルのBacharachコンピ、その他エレクトロニカものなどをわんさか買う。そして日用品。家の近所じゃ高すぎて買えない物をマツモトキヨシで持ち切れないほど買いました。今さらだがマツキヨのポイントカードを作ってしまった。ゲッツ! この街に住むのなら、買い物は渋谷に出てマツキヨしかない (お金持ちは明治屋とか紀ノ国屋で買う) 。

4月25日 .zip

実家で一人暮らしをしていると、使わない布団が大量に余ります。そこで前々から非常に気になっていたTV通販の定番グッズ、「布団圧縮袋」を試してみました。
 布団圧縮袋...その甘美な響き。猫が狭いところに入りたがるような、机の下で本を読むと妙に落ち着くような、まくらの下に手を入れると冷たくて気持ちいいような、なんかこう、そういう快楽を暴力的にまで押し進めたのが布団圧縮袋だと思う。ふかふか幸せそうな布団がみるみるうちに窒息していくのだから、これを思いついた人は変態ではないか。

さて、ぼろぼろになった布団カバーを全部新品に取り替え、布団乾燥機でふかふかにして、いよいよ袋に詰め込んでみました。掃除機が物凄い音をたてて空気を吸い取っていく。怖い、怖いよ...デイジーデイジー。
 というわけで我が家には現在パツンパツンに圧縮された布団が4組あります。渋谷で酔い潰れて終電をなくした際などに、お気軽にお立ち寄りください。圧縮袋の封を開けたとたんに布団がふかふかに戻る、というやつをやってみたすぎるのです。

4月27日 バナナケーキの彼方

我が家でお茶会。大学時代の友達を呼んだつもりが、欠席する人がいたり飛び入り参加する人がいたりで、結果として不思議な顔ぶれになってしまった。S子さん、マユコさん、N.H.くんと僕の4人で、まずはお手製バナナケーキとお茶を頂く。やがて鮭とばとグラスに持ち替えて、米焼酎2本をあっという間に飲み干し、日本酒に突入。深夜になってY.A.さんとY.Y.さんが突然やってきた。さらにY.I.夫妻も登場して、日本酒一升やっつけちゃいました。酔っぱらったー。
 記憶が断片的なのだが、話の成りゆきでマユコ嬢を母方の祖母のお茶教室に勧誘した。迷惑はかけてないと思うんだけど...みんなもちゃんと楽しかっただろうか。

その後、Y.A.さんとY.Y.さんと一緒に、Dice-K&TUJIさんが出演するオールナイトのイベントへ。うちの徒歩圏にこんな空間があったなんて! DJにサックス、パーカッションを絡めたアッパーな演奏が、酔っぱらった頭をクラクラ振り回して気持ちよかった。音楽は楽しいね。また何かやりたくなってきた。
 翌日は当然ぐったり。お誘いも断り選挙にも行けず。街宣カーがやたらしつこかった上に投票日にまで電話をかけてきた候補はギリギリで落選した模様。公職選挙法的にどうなんでしょう、彼。

4月29日 パナウェーヴのことを想う会

東京ザヴィヌルバッハを見てきました。六本木PIT INというライヴハウスに初めて入った。サンダルで行ってよかったのかしら。
 菊地成孔氏のトリッキーなCD-J、というかCD-Jという機材の使い方を強引に間違えてみせると、それに坪口昌恭氏のキーボードが力づくで対抗する。坪口氏がアナログシンセで轟音をあげれば、菊池氏が華麗なサックスでそれに応える。マックで自動生成されたリズムがどうのこうの、みたいな説明をされがちな彼らですが、瞬発力を駆使した極めてセクシャルな演奏でした。会場でT.P.さんとS.K.氏に遭遇。帰りにT.P.さんと、限り無くアメリカンなレストランで暴力的なまでにでかい皿と格闘した。鷲よ!

さて最近の関心事と言えば、「スカラー波」の攻撃から身を守る白装束のキャラバン隊です。電磁波が怖いなら携帯使うなよ。10年も前から活動しているというのに今日になって突然大ブレークするんだから、人生いつ花開くかわかったもんじゃありません。不気味の一言で片付けてしまうには余りにももったいない面白い方々だと思う。何しろ10年も閉鎖された思想の中で生きてきたので、自分達がなんで「おかしい」と思われているかわからないのです。
 今なおメルヘンの世界に生きる純真な彼らを、丁重に保護するべきだと思う。今のところ道路交通法違反くらいのもんで、人に危害を加えそうでもないので。例えば、アメリカというメルヘンの世界に生きる方々のほうが...まあいいや。