DIARY 2003年7月


7月2日 へぇ

最近 磯野貴理子をやたら見かけるんですが、彼女の現状は「売れている」と言ってよいのでしょうか。
 トリビアの泉という番組をご存じですか。去年の秋から今年の春までフジテレビの深夜枠で放送されていたバラエティで、どうでもいい雑学を視聴者投稿で募って評価する、というもの。今までのお気に入りネタに、「ドライブスルーは馬でも行ける」「大山のぶ代は『太陽にほえろ』の脚本を書いたことがある」「チュッパチャプスのロゴをデザインしたのはサルバドール・ダリ」などがある。生きていく上で何の役にも立たないが、へぇって思うでしょ。

その番組がゴールデンタイムに進出するというので、かぶりつきで見た。あの密やかな愉しみが、ゴールデンのスピード感に耐え得るか心配だったけど、結果オーライではないかと。新レギュラー、タモリさんの起用もいい方向に作用していました。「大物司会者」ではなく、無責任な特種芸人としてのタモリを演じていた。仕切りの八嶋智人さんも、「今後タモリ氏の立ち位置を検討しなければなりません」とコメント。
 今回のお気に入りネタは、「星飛雄馬はクリスマスパーティーで大失敗したことがある」「ニャーとなくカエルがいる」。確認VTRでカエルが鳴いたとたん、膝で寝ていた猫が飛び起きた。ところで「磯野貴理子の特技はコーヒーゼリー一気食いである」。へぇ...。

7月4日 続・おつかれっす。

T.P.さん + A.A.さん + 山下スキル = 「続・お疲れっす。 (ユニット名) 」で飲み会。スペシャルゲストにomo*8のTさん。「続・お疲れっす。」を結成する前は、同じメンバーで「お疲れっす。」というユニットを組んでいた。なぜ「続・」がついたのか、そもそも何に疲れていたのかは今となっては謎の中。
 普段はメール交換ユニットとして、日々の暮らしを愚痴っている我々であるが、この日はA.A.さんが「8 mile」について熱く語り出すという予想外の幕開け。あとは「一般的なデートとはどんなものか」とか。7月末からは3人の生活圏が極めて近くなるので、活動が活発化するかも知れません。

7月7日 七夕はいつも雨

久しぶりに素人不幸自慢話。
 父方の祖母がゴルフ会員権を破格値で売った。売ってもいいんだけどさー、相手が年寄りを丸め込んだり脅したりしてる会社っぽいのだよ。彼女の世界では彼女自身が女王であり法なので、自分が丸め込まれているなんて夢にも思わない。「決める前に相談してくれ」と嘆願する僕らのことなど、余計な口出しをする困り者だと思っている。彼女の言動には両親もずうっと悩まされてきた。僕も相当にまいった。

僕が亡き両親の住んでいたこの家に引越してきてから、毎晩のように夢の中に両親が登場します。どうも両親は自分が死んだことに気づかずに、まだその辺を浮遊しているような気がする。そこの君、引かないでね。
 例えば母が亡くなってから半年間、僕は母の車に乗ってたんだけど、その間ずうっと僕のカードケースに母の免許証が入っていたの。もちろん僕がそんなものを入れた覚えはなくって、母の車を廃車にしょうって話になった頃にカードケースの奥からポロっと出てきたの。

夢の中に登場する両親は、今後の山下家を心配している。無職の長男をどうしようか、祖母の暴走をどうしようか、残された動物の世話をどうしようか。とくに動物の引き取り先。これまで我が家で飼ってきた動物たちは総出演、さらにチョビやミケやヒヨちゃんの心配までする有り様。ヒヨちゃんだけは、ヒヨちゃんだけは引き取りたくないものだ。
 というわけで、体調も寝起きも非常に悪い昨今。人恋しさから飲みに呼び出された皆様、長電話につきあわされた皆様、ごめんなさい。サンキュー。愛してる。

7月10日 ウナセラディ東京

調子が悪い。1ヶ月くらい前からか。いやそれを言えば3年前から調子が悪かったし、そもそも生まれてこのかたウハウハだった時期などあっただろうか。
 最近は時に変な夢にうなされます。眠りの中で追い詰められ、ふと目が覚めるとマラソン選手か相撲取りのインタビューのように激しい動悸・息切れが続く。睡眠も一大スポーツだ。医者に報告したら「そろそろ入院を」という。しかし、ただでさえ病気で金がない + 病気で早起きできないのに早く行かないと病棟見学ができないという医学界の矛盾。

7月11日 蘊蓄あったかなかったか?

テレ朝の深夜枠でたまにやっている「うんちく王争奪戦」をご存じですか。生放送で、与えられたテーマについて蘊蓄を語り、より多くの人を感銘させた人にチャンピオンの栄冠が与えられる。投げ込まれたテーマに即座に対応し、制限時間内に蘊蓄を詰め込む出場者の知識量と構成力には圧倒されます。60秒で「トリビアの泉」1本分くらいの無駄知識が身につく (信憑性は定かではない) 。特に今日のは迫真の名勝負でした。
 今回のチャンピオンは前回に引き続き上田晋也さん。無難な話題を浪々と繰り広げ、最後の10秒であっと驚く蘊蓄を繰り出すのが彼の手法。男前だ。

今回の出演者の中では、素人枠の深澤さんという人が安定していてよかった。勝負は携帯の投票で決まるんだけど、彼を応援する余り投票ボタンを連打して、そのパケット通信料がNTTの儲けになるという納得のいかない腐った大人の社会。第二ラウンドの「うんちくケンカ相撲」では、タレント陣が素人に遠慮して喧嘩を仕掛けなかったため、深澤さんは見せ場を作れずに敢えなく敗退してしまいました。このあたり、構成の再考を望む。
 会を追う度にレベルアップするこの番組、不定期なので次やる時はお知らせします。是非に。しかしこれを見ていると「ウラ関根TV」を見逃してしまう。そして明日こそは音楽の話題を。

7月13日 雲ゆき

クラムボン@日比谷野音。梅雨時の野外とはなんともチャレンジングな企画だけど、去年の野音ライブがよかったって聞いたんで行って参りました。野音って騒音問題でライブ禁止になっちゃうかもなんだってねー。周りのビルを音楽関係者で固めればいいのに。同じく騒音問題で悩む飛行場の側には航空マニアを住まわせればいい。
 さて、小雨舞うなか入り口で全員にシャボン玉セットが配られる。同行のS穂さんは空中に浮遊しているシャボン玉をストローの先にくっつけ、もう一度吹いて玉を増殖する技を披露。僕も練習してちょっとできるようになった。

何曲かは同期させていたものの、基本的にはキーボード・ベース・ドラムスの3ピースで「空間」を感じさせる素晴らしいパフォーマンスでした。郁子ちゃんのボーカルの表現力、ミトさんの楽器の可能性を超えたアイデアに目が生きがちだけど、伊藤大助さんのジャストなリズムと、細やかなこだわりを強く感じた。暮れていく空の下、しなやかなクラムボンのサウンドが一面のシャボン玉ごしに漂う光景を、ビールを飲みながらぼんやりと眺めていた。こんなにフレンドリーでストレートなライブがあってもよい。
 宿題があるというM子さんとS穂さんとはバイバイして、相川祐典くんと中目黒で飲み。帰り道の小雨がまだ冷たかった。

7月17日 眠らない街・眠たそうな二人

ワイドショー的に言うならば「眠らない街・渋谷」、の徒歩圏内で相変わらず惰眠を貪ってます。渋谷はこわくないよー。大阪のほうが100倍こわい。マクドナルドのお姉さんさえ凄い迫力でビクビクした。

今日は弟のファンキードッグを預かった。弟夫妻に赤ちゃんができたので、妊婦に負担をかけないように時々預かることになったのです。とはいえ産まれるまでずっと預かるわけでもなく、単発的に預かったところでどれくらい意味があるのか甚だ疑問だが、様子見ということで。
 早くも我が物顔のファンキードッグは、うちの猫達と微妙な緊張感を保ちつつベッドを共有。僕も共有。動物好きには寝苦しい季節がまたやってきた。奴らは妙に体温があるし重いしぴったりくっついてくるからな。

7月18日 心霊写真が撮れた

ドラえもんトースターを使ってみた。心霊写真のようなトーストが焼けた。と言うのは心霊に対してちょっと失礼かも。

7月19日 婦女子よきっとそうだろう

人は誰でもコンプレックスを抱えるものであり、僕の場合はアレであるとかコレであるとか、あまつさえソレでもあったりして、まさにコンプレックスの固まりなのですが、そのうちのひとつに「ファッションセンスがまるでなってない」という項目があります。この点についてはかねてから各方面より指摘され、お洒落な店に無理矢理つれていかれて「好きなものを選びなさい」と叱責され、途方に暮れた痛い想い出もある。

今日は、何年も前から「山下さんのファッションコーディネートをしたい」と言い続けてきたA.A.ちゃんと買い物ツアー。彼女の要望は、待ち合わせに遅刻してもいい、ルーズな格好で来てもいい、とはいえジャージで来るのは禁止、だそう。僕に対する期待度が知れる。彼女のコーディネートは、このシャツとこのボトムを組み合わせればこんな時に使える、といった極めて明解なもの。僕はずっとこういうアドバイスを待っていたのです。
 婦女子諸君は、明日からお洒落に変身するであろう僕に、惚れたりしないようにご注意ください。問題は、買い物のあと二人で焼酎を飲んだくれて、彼女のお薦めの組み合わせを忘れてしまったことです。

7月20日 きみになりたい

Hayashi Worksというイベントを見てきました。出演者・スタッフはみんな学生時代からの仲間なんだそうです。開場時間を過ぎても準備が間に合わなくて、全面ガラス張りの大通りからあたふたしてる様子が見えたり、演奏中に窓を隠すカーテンの右端のテープが外れて、砂時計のように左に左に落ちていく様などが手作りっぽくて非常に微笑ましかったです。僕の学生時代の仲間たちは、もう表現活動をやめてしまったり、お高くとまっていたり、そもそもユーモアの方向性が違ってたりするから、ちょっと羨ましかった。
 去年の80s POPSICLEは学生仲間の手作りイベントと言えようか。

内容は学生ノリを超越して、それぞれのN年後をしっかりと照らし出していました。まずはダンスの小作品。成り行き上 一番前に座ってしまったため、「静」の部分でもほんの1メートル先にダンサー達の息遣いが聞こえてくる。階段を使った全体の構図が見えなかったのは残念だけど、艶かしくて肉体の力に圧倒された。
 続いていとうまさみさんの弾き語りといしかわあいさんの写真のコラボレーション。風景を描いたかと思えば好奇心の向く方向に焦点を合わせるいしかわさんの写真は、子供の目の動きをトレースしているようで、可愛らしくも毒の効いたいとうさんの音楽といい距離を保っていた。

終演後、Y.Y.さんに誘われてY子さん邸へ。僕がついた時にはなんだかもう出来上がってました。かっこいいお兄様・お姉様に囲まれて飲む。彼らは表現者としてもかっこいいが、それをひけらかさないで慎ましく楽しく生きてるのがかっちょいい。
 僕はたぶん、ああいう人やこういう人になりたい。

7月21日 Holiday For Strings

Noahlewis' Mahlon Taits@青山CAY。開演ギリギリに会場に着くと、スキンヘッドにヒゲ面のC.T.くんに声をかけられてびっくりした。彼の周りだけ空間が出来てました。U.M.くんとも久しぶりのご対面だったのだが、美しい女性と一緒だったので遠くから見守った。
 Ego-Wrappin'森氏のDJに導かれるように、アコーディオンとウッドベースによるインストゥルメンタルユニットMama! Milkによるオープニングアクト。タンゴのリズムとしなやかなメロディが、梅雨の湿気と艶かしい温度によく似合っていた。慎ましくも素晴らしいミュージックでした。

しばしのセッティングの後、Noahlewis' Mahlon Taits登場。鈴木惣一朗氏のドラムがいつにも増して弾けていた。石川浩司のよう...とは言うまい。おおはしゃぎの伯父を見守る若者メンバーも楽しそうで、それはもう最高のノアルイでした。催眠術のような怪しさの中に、やっぱりパンクスピリットを秘めたバンドだと思った。
 終演後、惣一朗氏とちょっとお喋り。「まだ山下スキルって名乗ってるの? この名前、字画が悪いよ」だって。えーっ惣一朗さんがつけたんじゃん! 打ち上げではノアルイ大島さんに、「太って誰だかわかんなかった」と言われる。ああ太りましたとも!

7月24日 Oh! Mountain

明日からFUJI ROCK行ってきまーす。まだ梅雨が明けてない + FUJI ROCK史上初のチケット完売という状況で、何が起きるかドキドキしてます。現地からBBSにレポート入れるかも! (入れないかも!)
 現地ではこんなTシャツを着る予定。手作りです。

7月29日 勝ち負けがあるとしたら

FUJI ROCKから帰ってきました。毎年書いてるけど、普段は圧倒的にインドア派な僕も、FUJI ROCKの大空の下で爆音を体に通すと、自分がなんで音楽が好きなのか、そもそもなんで「音楽」という表現があるのかを実感させられます。
 そしてFUJI ROCKの観客は本当にクオリティが高い。いい演奏をすれば、それがどんなに無名バンドであっても惜しみない拍手を贈る。マナーもすごくいいし。ウッドストックの映画で、地元の田舎のおっちゃんが「気持ちのいい連中だったよ」って言うでしょ。あんな感じ。「勝負ごととか興味ないんだけど...もし勝ち負けがあるとしたら...勝ったのは君たちだね」。菊地成孔氏が言葉を選びながら呟いたこのセリフは、皮肉屋の彼の本当の気持ちと思う。

とはいえ今年は本当に大変でした。特に初日は雨と寒さに震えた。会場全体が沼だった。斜面の多い会場に何万人もの人が集まるんだから、誰かが足を滑らせればすぐに将棋倒し→死亡事故という展開も考えられる。それが起きないのはきっと伝説の天神山の教訓で、FUJI ROCK独特のラヴ&ピースなムードは学びながら培われてきたんだろうな。
 2日目は曇りのち雨。3日目になってようやくFUJI ROCKらしい青空が見えてきました。同行メンバーの中に初参加が4人もいたので、彼らにあの空をどうしても見せたかった。初日の体験だけだったら辛い想い出になっただろう。

今年のベストアクトは意見が分かれるところですが、やっぱりBjorkですか。熱心なファンに言わせると本調子じゃなかったそうだけど、それでも10メートル先で歌い踊る彼女からは、ヴァイヴレーションが霧みたく漂ってきた。東京公演じゃこんなに近くで見られないもんね。うまく言えないけれど、「音楽に選ばれた人」だった。それを受け入れた上で、絶対に安住しない人でもあった。
 ほかにもいいバンド、いい演奏がいっぱいありました。アコギ1本のNick Loweから総勢40名の渋さ知らズオーケストラまで。ライブレポート近日中に公開します。今はとにかく疲れてる。

7月31日 心はまだあの日のままだと

FUJI ROCKから帰ってきて4日もたつのに気分はまだ昂揚しています。すっごい久しぶりにライブレポート書きました。情報としてはあまり正確ではないかも知れない。ただ僕の感じた今年のFUJI ROCKはこうだった。ちょっと長いけど、よかったら読んでみてください。FUJI ROCKという無二の祝祭の、1/400でもみんなに伝えたい。そして来年は一緒に行こう。ね。