DIARY 2004年2月


2月3日 Sleep or Karaoke

退院後の僕は何をやっているかというと、一人入院プレイをやっている。つまりずっと寝ている。できた人間なら「やあもうすっかり元気になったよ、心配かけてごめんごめん」と言うところだが、僕は素直な人間なので、「とりあえず、一人で家に置いといても病院が責任を問われないレベルになったので退院した」と報告するしかない。
 入院当時と違うのは、腕に点滴が刺さっていないところ、勝手に食事が出て来ないところ、優しくて可愛い看護婦さんがいないところ、許可なく外出できるところ。というわけで、入院前から約束していたことと、入院で延期になってしまった約束を全部果たそうとして、失敗してしまった。僕に約束をドタキャンされた皆様、本当にごめんなさい。これに懲りずに近いうちに是非会いたいです。

果たされた約束の中でもっとも壮絶だったのは、馴染みの5人で恒例のカラオケ大会。M崎姉妹のハモりはばっちりで、プロデューサー的視点から2人にいろいろ歌ってもらいたくなった。僕自身も、カラオケデビュー時と比べればだいぶ声が出るようになったような気がする。正しい発声じゃないけれど。
 今度こそは終電で帰れるようにと15時集合にしたのに、結局タクシーで我が家へ向かうことになってしまった。M姉妹はうちで駆け回ってたような気がすると言うけど、記憶にない。飲み屋の帰りにカラオケ屋に寄ったんじゃなくて、15時からカラオケ屋で飲んで歌って、終電と記憶をなくしたんですよ。

翌日のみんなの日記やメールを見ると、ひょっとして自分だけ楽しかったのではないか、ほかのみんなは引いていたのではないか、と心配しているのが可笑しい。もちろん僕も心配だ。ということは、みんな楽しかったのだからまたやりましょう。いちおう主治医にも相談してみた。「いい大人なんだから、それぞれの責任でいいんじゃないですか」。そういうことなので、医学的見知からみても我々は正しいのです。誰か参加を希望する者があれば、我々は受けて立つ。
 ところで今日は節分。あまりに運のない昨今なので、独りで豆をまきました。近所に恥ずかしいので、かけ声はカラオケの1/30くらいの声量で。

2月6日 でも、半分の愛

メイはみんなのことが好きなのに、みんなのことが好きなのに、みんながメイのことを好きなわけじゃない、なんて、残念だ。

緊急入院前の体調に逆戻りです。再入院、あるかも。
 家から一歩も出られなくて、引き出しの奥からうどんとか発掘してモソモソ食って暮らしてたんだけど、それも尽きてついにデリバリーの弁当を頼んだ。そしたらサービスの烏龍茶を忘れてきた。でもその配達の人が、たぶん会社をリストラされてバイトで食いつないでるみたいな、哀れを誘うおじさんだったの。で、別にいいですよって言ったんだけど、後からわざわざ届けに来てくれたんだ。お店で、20個も30個も年下の店長に怒られたりしたのかなあって。

2月8日 LOVE IS ENERGY!

ムネカタアキマサくん、イクさんの結婚パーティにご招待頂きました。相変わらず体の重い僕は直前までベッドの中にいて、15分遅れで現場に到着。まさに「新郎新婦の入場です」という時に、出待ちする新郎新婦の横をすり抜けて会場へ。誤ってクラッカーを鳴らす人がいなかったので、よかったと思う。
 7年くらい前かな、ムネカタくんと僕は同い年で同業者で同じように悩める青年で、たまたま見つけた彼のサイトに密かなシンパシーを抱いていたのでした (今のoutdexは素晴らしくコントロールされているけど、当時は内情吐露サイトだった) 。いつの間にか雲の上の人になってしまった彼が、ちっぽけな僕の存在に気がついて直接会うようになって、こうして人生の大事なフェーズに立ち会わせてくれたのは光栄です。

場所はSALON by marbletron、ということで参加者は40人くらいだったのかな。たぶんテキストサイト界の有名人がいっぱいいて、名刺を配って営業活動すればうちのアクセス数も伸びたかも知れん。しかし皆さん、なぜか僕が「精神病棟からシャバに戻った山下スキル」であることをご存じで、「前にイベントでお会いしてます、名刺も頂いてます」なんて方も。そうでしたっけ。自分の社会性のなさを恥じるばかりだ。
 気楽に話ができるのは女子高生DJ A.Z.a.T.o.i.くらいで、ひたすらA.Z.a.T.o.i.と喋っていた。これは書いちゃっていいのかな、彼女は大学受験に見事合格したそうです。

DJはTGV、VJは青梅街道派が担当。その映像が、綿谷りささんの会見風景だったりソニンさんのPVだったりで、色んな意味でお2人らしい、しかし和やかで素敵なパーティでした。目玉はDCPRGの後関好宏さんと新婦によるサックスデュオ。お開きの挨拶では、かくやのムネカタくんも胸一杯で言葉に詰まる一幕も。とにかくおめでとう。
 A.Z.a.T.o.i.とバイバイして、駅の切符売り場の前でポケットに手を入れたら、クラッカーの残りが足下にポトリと落ちた。宴の後の寂しさよ。こんな僕にも光が差す日は来るのだろうかと。...あの、引き出物については触れちゃいけないんだよねえ。

2月12日 Heavy Smokers Forest

ちょっと前の話題だけど、ハッブル宇宙望遠鏡が捨てられちゃうかもなんだって。ブッシュ "I am (the) RIGHT" 大統領が、月面基地建設や火星有人探査をどうしてもやりたいと言う。国際宇宙ステーションからも撤退して、アメリカだけがかっこよくて強そうに見える計画を優先するんだそうです。
 僕はハッブル宇宙望遠鏡が大好きだ。今、世界で一番素敵な写真家だと思う。そして研究者としても、宇宙の起源を探る上で貴重なデータを、毎日15ギガも送り続けている。ネットニュースを読んでいれば、週に1-2回は登場して、画期的な発見を報告しています。

日本人の科学離れが問題になっているけど、そんなこともなさそうだ。最近のテレビを見ていると、バンアレン帯の話題でもちきり。バンアレン帯とは地球を囲む太陽風のプラズマの帯のこと。これを発見したバン・アレン博士はチョコレートが好きだったのか、チョコレートの話題と絡めて語られることが多い。勉強になった。
 昨日は久しぶりに古い友達のお宅にお邪魔しました。都内を一望できる高級マンション (お買い上げ) はアールデコのアンティーク家具でコーディネイトされ、キャンドルと和紙でライトアップ。もう一組の友達はアメリカ転勤を目前にしたエリート新婚カップル。仕事も将来の見通しもない僕は、近況報告もできずにただ酒を煽るしかなかった。

「Heavy Smokers Forest」って知ってますか。アフリカのコンゴ盆地の一角に、いつも厚い雲におおわれて、衛星写真が撮れない場所がある。そこをNASAの研究者たちが「たばこ好きの森」と名付けたんだ。霧はいつか晴れるよ、なんて慰めの言葉があるが、霧が晴れない場所は存在する。どうやらこのまんまな僕の人生を認められるくらい、強くなりたい。
 再入院はなんとか免れましたので。それと、みんな国民健康保険料と年金払え。

追記:Heavy Smokers Forestは創作だそうです。霧は晴れる!

2月15日 からまわる週末

得てして暇な時は暇、忙しい時は忙しいものだ。社会と接点を持つべく、からまわる日々は続く。
 13日は、Y.A.さんY.Y.さんと夕食。緊急入院前からの約束を、体調不良でこの日まで延ばした挙げ句、やっぱり目眩で30分の遅刻。はからずもバレンタインディ前日になってしまい、Y.Y.さんに (義理) チョコを頂いた。どうもありがとうございました。ところでこの首の形状は倫理的に大丈夫なのか、などと考えるのはゾウガメに失礼ではないか、そもそもなんでゾウガメなのか、などと悩ましい問題を投げかけてくるチョコレートでありました。本来は観賞用と思われるが、食った。中は空洞だった。

14日は母方の親戚の集まり。相変わらず体調がうーん、しかし家庭の事情的に頑張って祖母の家へ。姪っ子は、しばらくみないうちに随分とチェキラな感じになっていました。
 早々に祖母宅を後にして、向精神薬と風邪薬をリアルゴールドで流し込み、渋谷へ。この日は屈辱ersのバレンタインディ屈辱ライブ feat.N。つまりは幸せな恋人達の夜に男だらけでカラオケようじゃないかと、そんな企画なのでした。前回の屈辱ライヴはかなりの屈辱感で気分も昂揚したけど、2度目ともなると「なんだかアレだねー」という当たり前の結論に。来年は男だらけの六本木ヒルズ屈辱ディナーとかにしよう。

帰路に立つ30分程前から再び心因性の目眩と吐き気に襲われ、頓服薬を飲んだのだが結局帰り道でリバースしてしまった。同行のヌカタシ、及び港区土木維持課の皆様には心よりお詫び申し上げます。目眩と吐き気は日常茶飯事なんだけど、実際にリバースに至ったのは初めてで、自分でもびっくりした。どうなっちゃうんだろう僕。

2月19日 I am still alive. I got up at...

やっぱりおじさんの鬱日記は人気がないようです。女子の鬱日記だって、あわよくば弱味につけこんで懇ろになりたい男子がカウンターを回している訳で、決して人気があるとは言い難い。とにかくアンテナ文化が隆盛してから、サイトオーナーは常に「更新」というプレッシャーを背負っている。たとえ書くことがなくてもだ。
 僕がWorld Wide Webという実験を知ったのは10年ちょっと前で、1995年の春には遠山緑生という男が「ウェブ上に他愛のない日記を書く」ということを始めた。彼の前にそういう人がいたかは知らない。

で、本格的にテキストサイトが面白いと思い始めたのは96年頃。某コンピューターメーカーに勤めていた僕は、8万人いる従業員の中で、2位に圧倒的な差をつけて堂々のアクセス回数1位を記録し、始末書を書いた。何が面白かったかというと、顔も知らない他人の生活が記号化されて蓄積されていくところ。河原温さんの作品を見た時みたいな不思議な感動がありました。
 河原温さんは、コンセプチャルアートの世界で一番わかりやすく、直感に訴えかけてくるアーティストだと思う。毎日キャンバスに向かって、その日の日付けを描く「Today」シリーズを知ってる人も多いでしょう。そのほかにも、朝起きて誰かに絵葉書を送る「I got up at」シリーズや、その日に歩いた場所を地図になぞっていくシリーズなんかもある。

膨大に蓄積された彼の記録の前に立つと、僕の知らない河原温という人物が、ある時間・ある空間に存在していたという事実が、無機的な記録のすきまから胸にドスンと突き刺さってくる。テキストサイトの書き手達も、ある日ある時ある場所にいて、それを読み比べると赤の他人が同じ時間・同じ場所にいたり、同じことを考えてたりする。でも互いにそのことに気づいてない。デジタルの海の中で、偶然の邂逅をするわけです。でもだんだん日記の登場人物達が直接の友達になって、同じ時空にいることが必然になった。
 その頃からかな、インターネットに新しいサービスが加わる度に僕らは不自由になっていった。アンテナで監視され、トラックバックで結びつけられ、「ブログは意志だ」なんて脅迫されてるような気がする。参っちゃうぜ。

だから僕はブログじゃなく、あくまで自分のペースで日記を書くのです。河原温さんのシンプルな記号が放つ、無限のイマジネーションよ。I am still alive. I got up at 12:04PM. 相変わらず不安と目眩と耳鳴りの中で、何も吸収せず何も発散せず、ベッドの中で大あくびをしているよ!

2月21日 K-1グランプリ

愛のあるミュージシャンとして、愛のあるポップフリークとして、愛のある同病者として、僕がBrian Wilsonの次に尊敬している鈴木慶一氏が、映画「座頭市」で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞しました。ついに来るのか慶一の時代、次の「スズキの軽」のCMは間違いなし。ところで君は去年の日本アカデミー賞最優秀音楽賞が誰だか知ってるかい? おととしは?
 それにしても受賞シーンの放映時間はおよそ3秒で、日本の映画界が音楽やその他スタッフにかける意識の程度が知れました。

もういい加減カラオケは飽きた。と何度となく思ったのだが、また無性にカラオケたい。誰かー! しかしカラオケボックスは高いので、いずれはウクレレにアンプをつないでストリートミュージシャンをやるか、ジャパネットたかたのカラオケマイクを買おうなどと思う。

2月22日 今日は猫だから

2月22日はにゃんにゃんにゃんで、全国的に猫の日なんだそうです。そして僕にとっては父の命日でもある。頑張って家を出て、墓参りに行って来た。緊急入院以来、約束じゃなくて自主的に家を出たのはこれが初めてだ。

久しぶりの外出でも体調はまずまずだったので、勢いで渋谷にレコードを買い出しに行って来ました。店頭の様子がすっかり変わってるよー。中古屋で大枚はたいて買った「Blossom Dearie Sings」がCD化されてるよー。しかもボーナストラック満載で2枚組2300円だよー。泣きながら買った。畠山美由紀様のライブ盤、ハナレグミの2nd、Mice Paradeの4th、Pascal ComeladeやKlimpereiが参加した反戦コンピ、IRMAレーベルの女性ボーカルコンピ、Norah Jonesの2nd、全部買った。
 帰ろうと振り返ったら、うわーっGeorge HarrisonのDark Horseレーベル作品がリマスター盤で揃ってるよー。「買おうかよそか音頭」を10分ほど踊った後、全部買った。

「買おうかよそか音頭」。それは音楽ファンの間に綿々と伝えられてきた由緒ある舞いだ。片手にディスクを捧げ持ち、レジに向かって「買おうか」、棚に向かって「よそうか」のステップを繰り返す。Talking HeadsのBox Setもあった。またしても10分ほど舞い踊ったのち、元の棚に戻してきた。だって日本盤出るかも知れないし。でもCCCDかも知れないし。
 ところで、昨日の日記が予想外のアクセス数をたたき出している。ひょっとして「K-1グランプリ」というタイトルがまずかったのだろうか。僕の意図としては「けいいちグランプリ」と読んで頂きたかった。格闘技ファンの皆さん、殴らないでくださいね。痛いから。

2月26日 愛すべき生まれて育ってくサークル

掲示板でおなじみ、川村恭子さん主催の鍋会@我が家。川村さんとは初対面なのに我が家。川村さんは先日、H.T.くんとU.K.くんと奇跡的な邂逅をして、その流れでいつの間にかそういう話になっていたのでした。
 まずは川村さん所蔵のレア映像を鑑賞しながら、大量の牡蠣を旭ポン酢と黒七味で頂くという滑り出し。中盤からはキリタンポ鍋にシフト。ここで分別のある職業人達は帰宅し、ますますディープなトークに突入する。

困ったのは、入院騒動以降スムーズにお喋りが出来ないこと。おそらく薬の副作用で吃りが酷くて、ふと発言のタイミングを逃してしまうのです。初対面の皆さんの前で、この日ははひたすら聞きに回った。
 24時を過ぎてからは川村さんの独壇場。10代の頃から各方面でご活躍されてきただけあって、人脈は果てしなく広がり、ここ十数年のポップカルチャーを担ってきた才能達の芽生えを一緒に体験しているのです。とはいえ業界人的な嫌らしさとは別天地で、普段の遊び友達や飲み友達がいつの間にか花を咲かせてたって感じが素敵だ。なにげない笑い話の中でお互いを刺激しあい、育てあってきたんだと思う。もちろん川村さんご自身も、非常にパワフルでチャーミングな女性でした。

しかし夜が明けるにつれお喋りの文化度が下がる。K.M.氏「セクハラ探題」ってどうなのよ。
 オヤジギャグ。おそらくそれは歳とともに脳が子供に帰っていくことであり、頭に浮かんだ言葉の響きが気に入ると、会話の脈絡とは関係なく口に出してみたくなるのだ。さらに問題なのは、歳とともに語彙が蓄積して、リファレンスできる言葉が増えていること。しかしK.M.氏、みんながぐうたらしている側で、残り素材でステキ朝食を作ってくれたので、その罪は償い過ぎるほど償ったといえよう。正に料理はラブイズオーケーであります。そんな訳で、近年稀にみるまともな朝食を頂いて解散。楽しかったー。

2月28日 出会わない系。

Pure & Simpleをモットーに生きて参りました僕、検索エンジンはもちろんgoogle派であります。とにかくシンプルで便利。無駄に肥大化を続ける某ポータルサイトへのアンチテーゼと、ちょっとした遊び心をくすぐる素敵サイトです。そんなgoogle社がついに出会い系サイトに手を染めたと聞いてがっかりしてたんですが、やってみたら楽しいじゃないの。
 これ、出会い系と呼んでしまうのは余りにも乱暴で、要するに自分の人脈をネットワークで管理しようというもの。その結果として新しい出会いもあるだろうって話だ。久しぶりに行方を見守ってみたいサービスが出てきました。良くも悪くもナローな感じが日本人向きなんじゃないかな。

このサービス、orkutという。ムネカタアキマサさんから招待状を頂いて、頑張って英語を読んだ (招待状がないと登録も閲覧も出来ない。僕が皆さんに招待状を送るのはやぶさかではないが、まだ使い方を理解していないのでごめんなさい) 。
 まずはプロフィールの入力。自己紹介なんて久しくやってなかったので、自分が何者なのかをまとめるのは意味のある作業だ。多分に自意識を刺激してハイになる。続いて人脈の構築。最初に繋がっているのはもちろん招待状をくれたムネカタさん。そこからあっちに行ったりこっちに行ったりしていくうちに、10年以上も会ってない懐かしい顔を見つけて、夢中でメッセージを送りまくった。

人物を評価するシステムもあって、僕は現在「cool」マークを4つ頂いている。評価軸はほかに「trusty」と「sexy」がある。努めて客観的に見て自分がsexyだとは思わないが、わりとtrustyな人間だと思う。なのにtrustyマークを頂けないのは遅刻癖のせいだろうか。誰かー!
 ところで今日は、いとうまさみさんのバンド、マコロンのライブを見てきました。いつもはピアノ弾き語りで、可愛らしくも毒っ気のある世界を繰り広げるいとうさん。曲の骨格をバンドに委ねることで、ますます自由な音楽を聴かせてくれるかと思ったら、リズム隊が強すぎて押し包められてるような気もした。新曲のCD-Rを頂いてしまった。14/8拍子で疾走する「さくらの花」が自宅で聴けるのは嬉しい。