DIARY 2005年2月


2月2日 Do You Believe In Magic ?

僕には常識では考えられないミラクルを生み出す魔力がある。霊感商法で食っていけないかとさえ思う。それは、どんな料理でも不思議と不味く作る魔法です。一人暮らしを始めたころは、実家から料理の本を持ってきて、いろいろ挑戦したんです。で、1年くらいしてこれはダメだなと。最近いろんな方から健康節約レシピを頂くんだけど、レシピがあっても大失敗する自信がある。何をやらかすかはわからないけど、たぶん想像以上のミラクルが起こる。

「ユル鍋リミックス」で余った干し椎茸と戻し汁で炊き込みご飯を作ったらさぞ美味しかろうという妄想が、泉のように湧き出てしまった。試してみた。ミラクルを呼ぶ大きな要因のひとつに「調味料入れすぎ」があり、そこには充分に注意した。炊きあがった。食べてみた。非常に不味い。ミラクルだ。
 味付けは (それほど) 間違ってなかったと思う。水加減を間違えた。米がコリコリです。昔の人の気持ちになって泣きながら食べた。おじやにしては如何かとの提案を頂き、捨てるよりはいいかと思って試してみた。泣きながら食べた。君は魔法を信じるかい? 僕はほんとうにあるんじゃないかと思うんだ。

2月4日 この世に神様がほんとにいるなら

島倉千代子さんというシンガーが好きだ。最初に意識したのはCarnationが「愛のさざなみ」を豪快にカバーした時。当時、興味を持った島倉さんがCarnationの楽屋を訪ねて、そのままライブに飛び入り出演したらしいですね。それからしばらくして井上陽水さんの曲を歌っているのを聴いてこれはと思った。あと誕生日が一緒だったりね。
 なんでこんなことを書いてるかというと、今日のテレビで島倉さんの半生をやってたから。彼女は病気して騙されてヒットしての果てしないループの中に生きていて、おととしもスタッフに金を使い込まれて事務所倒産の危機に陥った上にストレスで声が出なくなり、自殺未遂をしている。番組ではいろんなエピソードが紹介されたけど、ひとつだけ意図的に外された話題があった。それは細木数子氏のこと。

1977年、赤坂で水商売をしていた細木氏は、借金を抱えていた島倉さんに近づいて、返済を手伝ってやると言ってきた。結局稼ぎは細木氏と背後にいるその筋の方に騙し取られてしまった。細木氏はこの騒動を利用して芸能界に入りこんで現在に至る。今や島倉さんより細木氏の方が遥かに力がある。島倉さんの番組のすぐ後が細木氏の番組で、皮肉な編成に悲しくなりました。
 演歌の楽しみ方は僕にはわからないけど、個性的なシンガーとして誰かが拾ってあげられないかなあと思う。最近では小田和正さんが曲を提供したんだけどいまいちな出来で、ここはひとつ直枝政広さんに大ヒット曲を書いてもらいたい。ほかに好きな演歌歌手は石川さゆりさん。杉真理さんが書いた「ウィスキーがお好きでしょ」が印象的で、スカパラとの共演もかっこよかった。癖のない、いいシンガーだと思います。ジャズのアルバム出さないかしら。

2月8日 お金なんかはちょっとでいいのだ

今日の日記は薄っぺらい。まだ書くことを考えてないんだから。最近は何をしてるかというと、夕方まで寝て酷い気分で起きて風呂入ってネット覗いてテレビ見てマンガ読んで寝てます。ここからどう話を広げろと言うのだ。
 2月に入ってから体調が悪い。実はこの4月から学校に通って勉強したいと思ってたんです。でも自分が設けたプレッシャーに負けて、願書を出すタイミングを逃してしまった。焦っては転び、また焦っては転んできた鬱病ニート5年目の春。働かないっていう選択肢は最初は楽ちんだけど、だんだん精神的に追い詰められてくる。そして働かない期間が長くなるにつれて、働く自分像がイメージしにくくなる。今年から助走を始めて来年には本格的に動き出さないと、休んでた期間が働いてた期間より長くなっちゃうんだ。自分への言い訳がそろそろ立たなくなってきた。

僕には資本主義の原理に則ってバリバリとやっていく気概はございません。かといって「働いたら負け」と思ってる訳でもない。願わくば「そこそこに働きたい」。もっと贅沢を言うならば、日本が「そこそこに働く社会」であって欲しい。それはそれで経済は回転すると思うんだ。
 江戸の人ってあんまり働いてないんだよ。いくさもないのに武士がいっぱいいて暇を持て余してた。町人だって日が暮れたら仕事はおしまい。それから寄席に行ったり芸事をしていたわけです。日本人が勤勉だなんていうのは明治維新以降の刷り込み。みんな騙されてる。今の日本はものすごーく働く人とものすごーく働かない人に分断されてるからうまくいかないんだよ。

2月9日 つぶらな黒い眼この手を欲しがって

相変わらず調子が悪く、テレビをつけたままぐったりしてたらマユコから「近くに来てる」と電話があってそのまま拉致されムニダ。
 この日はソファに座るなり、マユコが「今日の山下さんは黒目がちな瞳が素敵」だなんてスケッチを始めた。彼女は会う度に新たな誉めポイントを発見して、先日などは「山下さんの手、やわらかかったおやすみなさい!」とかいう胸掻きむしるメールをよこしながらも一向に僕に恋をする気配がない。もっとも彼女が10代の頃、べろべろに酔っ払って肩にしなだれて「おかあさん...」と呟いた時点で全てを悟りましたが。僕の人生そんなんばっかです。

2月13日 プログれてプログれて、あの子は街までおつかいに

毎年恒例、S.K.氏宅の「プログレ鍋」に参加。プログレッシヴな音楽を聴きながらプログレッシヴな鍋を食べる会です。正直なところ、僕はプログレッシヴロックに閉塞感を感じており、もっと音を薄く! アイデアの焦点を絞って! そこから見えてくる景色があるんだよ! と叫びたいのだけど、それでも参加したのは「ガスコンロ持って行きますよ」なんて調子のいいことを言ってしまったせいだ。
 体調不良ながらもユンケルを飲んで、鍋とガスコンロを抱えてS.K.氏宅に到着。下駄箱の惨状に引く。mixiからhatenaからギュッギュッギュ。その隙き間を、「備品」として鍋奉行に任命されてしまったK.M.氏が忙しそうに働いていた。

人が増えるに連れて2部屋にわかれ、大部屋では小野真弓の映像を鑑賞しつつプログれ、小部屋ではブロガー達が「言説」を繰り広げる展開に。つまりは僕の居場所はなくて黙々と飲んだ。松前公高さんとはゆっくりお喋りしたかったんだけど、松前さんがいらした時には僕は既に酔っ払っていて残念だった。
 目が覚めるとS.K.氏とK.M.氏しかいない。K.M.氏に声をかけたら「今何時?」「8時40分」「あー...仮面ライダーヒビキ見逃した」ってそこかい! この日一番のおもしろでした。で、鍋とコンロを発掘して帰宅。二日酔いは全くなくて、つまりは人に酔ったのだ。

2月14日 The Grammy

Brian Wilsonが「Mrs.O'Leary's Cow」で、グラミー賞のBest Rock Instrumental Performanceを取りました。「Mrs.O'Leary's Cow」はオリジナルスマイル破綻のきっかけのひとつにもなった因縁のナンバーで、彼にとって初めてのグラミー賞がこの曲っていうのは皮肉な話だ。そう、なんとBeach Boysはグラミー賞を取ったことがない。アメリカではBeach Boysと言えば、いまだに古き良き夏を演じる白人中産階級のアイドルなんだよ。
 アルバム「Brian Wilson Presents SMiLE」は、Best Pop Vocal Album部門とBest Engineered Album部門にもノミネートされていたんだけど、結局Ray Charlesに持っていかれた。死んだ人にはかなわない。彼はR&B部門やGospel部門でいいじゃない。グラミー賞、よくわかんない。
Anyway, my music isn't fancy
You invite me to share my fame
I've decided not to play your game
Now the turntables goin' 'round and 'round...

from Carl Wilson "The Grammy"

2月17日 Oh! Penelope

だるくてだるくて如何ともしがたい日々。だらしなく伸びをしたら思いきり背中をやった。激しい痛みに悶えたくても悶えられず、ベッドの中で固まること数時間。愛しき猫たちよ、今日だけは背中に乗らないでくれ。妄想の中の綿矢りささん、今日だけは背中を蹴らないでくれ。で、やっと起き上がったんだけど痛みは治まらず、身のこなしがサンダーバードみたいになってます。パソコンに向かってる今の姿はこんな感じです。
 この写真を探す過程で、レディ・ペネロープの吹き替えが黒柳徹子さんであることを知った。おおペネロープ...。「ペネロープの部屋」。ルールル、ルルル、ルールル。あぁたくし国際救助隊のエージェントになる前はスパイざぁしたのよオホホホホ。

友人が結婚しました。彼のサイトを発見した時は、ポップフリークとしての知性ともどかしげなエモーションに、凄い世代が出てきたと畏怖の念を抱いたものだ。それからのおつきあいの中でお茶目な側面を垣間見ることになり、なんだかんだで現在に至る。そして彼女は、われわれ駄目男達に的確な突っ込みをくれる可愛くて聡明な妹キャラとして君臨してきた。
 1月にもネットで知り合った友人の結婚のお知らせをしたばかり、夏前にももう1組控えてます。思えばほんの数年前、音楽サイト界は今よりも無防備で、ちょっとこわい出会いをたくさんしていた。最近ネットきっかけで親しくなる友人って減ってるような気がします。メールくれても数往復で途絶えたり、ライブ行っても後が続かなかったり。という状況下でSNSが盛況してるんだろうけど、最近はSNSも危なくなってきた。性善説で参りたい。

2月19日 Let's stay inside til the city has dried all its tears again

たまに出かけようとすると雨が降る。今週は友達のライブを2本ぶっちぎり、ロフトプラスワンのイベントをぶっちぎり、病院の予約をぶっちぎり、きのう区役所に行ったのが唯一の外出です。そしたら携帯を忘れ、拾ってくれた区役所のおじさんが登録してある番号に片っ端から電話したらしい。非常にありがたいんですが! 「休日の21:30までは区民センター事務室で、月曜日からは窓口で預かってるから」って話を色んな人から聞くはめになり、その度に恐縮しきり。ほんとに申し訳ない。
 若く麗しい指圧師のキャサリンに救援信号を送って、痛めた背中を診てもらった。直接の原因は筋をひねったことだけど、背中が弱いのは心因性だって。胸骨の血流が悪くなるために反対側の背中が縮まっちゃうらしい。言われてみればずっと胸の中心が痛かった。「胸が痛む」っていうのは本来こういう状態を指すんだそうです。デフォルトで胸キュンです。

ところで今、ネットラジオ「maschine's broadcast "special program vol.2"」を聴きながらこれを書いてます。トークが危険すぎる。いちいち突っ込みたいんだけどチャンネルがない。彼方からの手紙にコメント書いたり出演者の携帯にメール送ったり。この番組、来月に我が家から出張生放送する話がある。何らかの手段でリスナーとのインタラクティヴィティを確保したい。
 あびる優氏の集団強盗事件でホリプロがマネージャーを処分。本人は!? っていうか刑事事件として警察が動く話じゃないの。日本もおおらかになったものだ。「俺も昔は不良 (わる) だった」、なんて嘘でも言ってみたい小心者32歳。LEONでも読むか。

2月22日 キッチンにはハイライトとマクビティ

どこにでもあるような家族の風景。
 2月22日はにゃんにゃんにゃんで猫の日なので犬の写真です。両親が眠る墓地の犬。今日は父の20回目の命日だった。20th Anniversary Remastering of 僕の気持ち。あなたが逝った年齢にどんどん近づいている件について。それから映画にエキストラ出演しないかというお話が唐突に来たんだけど、先週から睡眠薬が枯渇していて起床時間をコントロールできないのでやんわりとお断りしてしまいました。ドキドキ。一生に一度くらいはフィルムの中に入ってみたかった。

2月24日 モノに対する愛

Socialtunesっていう新しいソーシャルネットワーキングサービスに参加しました。Amazonと連係して持ってるモノを公開したり、モノ経由でリンクができたりするらしい。recommuniがSNSとして機能していない現状では、音楽経由で繋がれるSNSとして面白いかなあと思って。
 僕は自分の持ってるモノを人に晒すのが大好きだ。僕自身に表現のチャンネルがないんで、好きな音楽や本を通じて間接的に僕を知ってもらいたいというさもしい望みがある。棚をきれいに整理してるのは、自分が探しやすいからじゃなくてお客さんに見てもらいたいからなんだよ。もうひとつ、棚の整理は自分の知の可視化でもあって、自分を客観的に見つめ直す快感がある。そういう類いの欲求を刺激するサービスです。

ただ、僕の「ぺた」経由であなたが商品を購入すると、いわゆるアフィリエイト報酬が僕に入ってしまうのだよね。今までこのサイトにアフィリエイトプログラムを組み入れなかったのは、レコードに対してフラットな立場で発言したいっていう気持ちがあったんだ。これからどういうスタンスで行くのか悩んでる。

2月27日 カモナベィビィ

きのうはY.I.氏のお宅にて鍋会。得てして鍋会とは、今度こそ17時に集まろうと固く誓いあうも結局19時頃にだらだらと始まり、終電で来るやつがいたりタクシーで来るやつがいたり、翌日の昼頃まで誰かが寝ていたりするものです。でも家庭持ちの方が多いこの日の集合時間は13時。頑張って14時前についた。みんな来てた。鍋は久しぶりの鴨鍋でした。
 会の主旨はお笑いビデオを鑑賞しながら鍋でもってことだったんで、僕もシュールなやつを数本を持っていったんだけど激しくスベった。「今の若い人はこういうのが面白いのかねえ」「あれ? オチは?」「つまりこういうことですよ」みたいな展開になり、居心地が悪かったです。そんなに歳違わないと思うんですけど。

19時過ぎに皆さん帰られ、Y.I.氏と新しいイベントについて話をした。全くイメージが広がらず、アイデア出しの段階なのに現実的なことを言ってしまった。
 音楽イベントって多くの人は出会いを求めて来るよね。それは音楽との出会いだったり音楽仲間との出会いだったり、ストレートに異性を探しに来る人もいるだろう。そういう場において、イベントの仕掛人がどこまで突っ込んだ表現をしていいのかっていう葛藤があります。もちろん表現してみたい自我はあるんだけど、表現者として10年以上もブランクのある僕が、パーティの楽しいお喋りより興味深い何かを提供できるかっていうと自信がない。これからゆっくり時間をかけて準備して、秋ぐらいにはサムシングニューをお聴かせしたい。

2月28日 目覚めのマーチ

2月最後の日は、メールが開いた側から消えて行く屈辱と戦う。EudoraがOutlook Expressのデータを正しくインポートしてくれないんです。Outlookのメッセージボックスが壊れているのかEudoraの変換機能がいい加減なのか。ビル・ゲイツのソフトからホリエモンのソフトへ乗り換えようとしている僕は貧乏。どしても貧乏。アイ! そして3月最初の朝が来た。