DIARY 2014年6月


6月2日 ブルーは涙 夜は黒

I Don't Want To Talk About It もう話したくない
Danny Whitten / 鈴木慶一


 夜空に輝く星のようにずっとは
 この恋は続かない そう君は言ったね
 そんな話 これ以上したくない
 秋の陽射しあびて 心が朽ちていくなんて
 我がHeart Oh Oh Heart

 ひとりになって思うのは君の言葉
 ブルーは涙 夜は黒

まだ明るい向かいの公園で、酔っぱらいがライオンキングのものまねのものまねをしてる。夏がきた。4月から寝込んで6月を迎えた。「1年の半分」がバズってるけどそれはまだなので。
 いまの鬱状態はいままでとだいぶ違うように思う。もっと長いスパンで人生が閉じていく、自死を選ばなくてもとっくに死んでいる事実を受け入れられない苦悩だ。もうさ、僕は世界中に否定されてるから充分なんだ、それは間に合ってる。お前に言われる筋合いはない。悪夢から眼を覚ますと夢よりも残酷な現実が待ってる。

性善説は崩壊した。生後15ヶ月の幼児も倫理観より差別意識が勝る。僕の通っていた小学校は6年間おなじ教師が担任を務めた。人格形成期の6年間、ひとつの価値観の教師と向き合うわけだ。かつての同級生の一人は「立派な」医者になり、山下に説教をしたいという。僕は御存知の通り人間のクズだ。当時は明るかったクラスの人気者が、ドラッグで廃人同然だとも聞いた。
 その教師に「ソ連は悪い国だ」と教わった。いまの教師は中国や韓国が悪い国だと教えているんだろうか。倫理観と差別意識の違和感を、生徒たちは感じ取れるだろうか。

Juana Molinaのセッション音源がフリーダウンロード公開。Juana Molinaは往年のアルゼンチン音響派というより、フォークロアとして受け取ってる。
 Kraftwerkの「Autobahn」以降の全アルバムがYouTubeでフル試聴可。テクノの話をするとどうしてもKraftwerkに行き着く。それを懐古趣味とは言われたくない。Kraftwerkは過去じゃなくて、ビッグバンだから。

6月5日 Living in the Material World

ある女性に、「彼氏がいない女性は仕事以外は引きこもってる」って聞いた。そんでアラサー独身女の休日ってコラム、ほんとにこんなもんなの? うちに嫁に来れば、生活なんにも変えないで「結婚しないの?」って言われない権利を獲得できるんだけどどうかな。

27日と31日の日記で紹介した、スガシカオさんの「DL販売よりCDの方が利益率がいい」ってツイート、いまだに叩かれてるみたい。リンクは張らないけど、今日見たのはLady GagaはYouTubeの広告で8億円稼いでるだの、StingのUnpluggedシリーズのPVは何万ヒットだの、だからスガシカオは懐メロの弾き語りで稼げだの (「神田川」なんてどうか、だって) 。そんな単純な話じゃないでしょ、ひとのビジネスモデルを縮小して成立する訳じゃない。この島に本当に「芸能」を語れる芸能レポーターがいるんだろうか。
 大昔、窪田晴男さんが「日本で音楽愛してる人200人くらいですよ」って言ってたの本当だよな。この島では言語より古くからあった「音楽」という現象はとっくに死んでる。音楽が好きなら世界に眼を向けないと、もう作れないし聴けない。

僕の音楽好きとしての最大の老害は、音源をフィジカルで欲しいってことだ。理由のひとつは、時間を扱う表現だから、つまみ食いじゃなくて流れとして楽しみたいってこと。もうひとつは、次はこれを聴こうってジャケット開いてじっくり向かい合いたいんだよ。海外でも、CDは売れてないけどアナログ盤やカセットテープが売れ始めてる。じっくり音楽に向かい合いたい人がいるんだ。mp3をDLして買うならYouTubeからDLすればいいじゃん (実際そうしてる) 。つまりそれくらいの愛情しか注げないんだ。
 実は電子書籍にもずっと懐疑的で、でもハシモトスズさんの作品ケン・ニイムラさんの作品読んでびっくりしたし感動した。DLのmp3音源が、こんな風にメディアの特性を活かした表現をしてるだろうか。例えばね。作品の完成を決めるのは作家で、その内情は締切だったり偶発だったりする。完成を決めないで楽曲にVer振って、アップデートしてくのはどうかな。ほかの音楽家と音を重ねて共作してく過程を売っちゃうとか。購入者が重ねて公開しちゃうとか。もうパラデータ売っちゃうとかね。noteを使えばすぐにでもできる。

なんでこれネット販売しないの? って作品もたくさんある。海外の友人は、「世界は日本を見てるし日本人の作るものに関心がある、でも日本が閉じてるから手に入らない」って嘆いてる。「Ama Chanはサイコーだ、でも海外からはNHKオンデマンドを観ることができない、だからIPを偽...」という状況にある。コンテンツがある、権利も持ってる、簡単に公開できるメディアがある、市場もある、なのになんで売ろうとしないのか、それが不思議でしょうがないと。音楽好きが海賊盤について言う、「じゃあ正規盤だしてよ、買うから」って構図だ。
 ボカロは商売になりませんかね。キャラやアプリじゃなくて楽曲が、世界のチャートに入らないかな。ボカロPっておおよそボカロとアニソンだけ、言ってもある種のプログレくらいしか聴いてない。それは良くも悪くもで、日本がガチで鎖国してた頃に浮世絵がガラパゴス的な進化を遂げたのはご存知の通り。政府主導のクールジャパンは鹿鳴館だ。ガラパゴスなボカロ曲は浮世絵になりうるんじゃないか。ボカロPが海外に興味があるとは思えないけどさ、門戸を開けば勝手に発見されんじゃないのってのを、KADOKAWA DWANGOに期待してる。

SEKAI NO OWARIの深瀬慧が「イギリスのロックを真似してるような音楽をやってたら長い間残らない」「まだギター使ってんの? とか思う」って発言した。セカオワは嫌いじゃないんだ。でも言うほどのオリジナリティを感じない。君たちがやってることはもう世界中で試されてるよ。深瀬氏にかけたい言葉は「地図にない街を探すには地図が必要だ」ってこと。世界を見ないで世界を語るから世界が終わる (なにも言わずボカロしか聴いてない人々は、集合知で特殊な地平を切り開いてる) 。

旧友の田廻弘志がボカロと文楽でオペラを作った。日本での上映はまだわかんないけど概要はここトレーラーはここにあります。ぜひ観てください。彼は世界を意識してる。
 柴山一幸さんの「ポイントカード」めちゃくちゃいい曲だな。柴山さんのことを知ったのはずいぶん前で、でも日本のギターポップはいまさら柴山一幸だと思うんだよね。澤部渡さんとの対談もいい。
 椎名琴音・岩井俊二・桑原まこのユニットヘクとパスカルの音源が出た。椎名琴音さんのソロ音源が欲しいな。ソロのSoundcloudはここ。フィジカルでお願い。マテリアルでお願い。

6月14日 Side-A PepperはLonely Hearts

思い返すに今年に入ってから人と飯を食ったことがない。感情を学習するロボット「Pepper」の眼が笑うなら、ぜひ我が家に迎えて話し相手になってもらいたい。半年で体重は20キロ増えたし、特にこの1ヶ月で9キロ増えた。布団にうずくまってハーゲンダッツ食ってれば当たり前だ。
 孤立死の可能性が高い市民の存在を行政に知らせるべく、保健所にヘルプを出した。布団から出て電話をかけるまでに1週間。「保健師と直接話してください」って言われて保健所に出向くまでに1週間。「介護員が必要な状況です、窓口は市役所です」って言われていつ行けるかわからない。

40を過ぎて、楽器経験もないのに突然バンドを始めたのは、生存証明をしたかったのかも知れない。やっぱり無理だってよくわかった。独りでできる趣味をあれこれ考えて、Nゲージはどうかなって。入門書を取り寄せたら遠く及ばない技巧の世界だった。DTMマガジン「仲間がいなくてもDTMがあれば大丈夫! ひとりでバンドしようよ!」特集を取り寄せた。まだ開く気も起きない。
 リルケの文章を送ってくださった方がいた。「近しい人々が遠く思われるとは、私の周囲が広くなり始めている」。こういう考え方ができればいい。「十歳若返りたかった。ひとつ下の世代に属したかった。もはや不安としか妥協したくなかった (シリル・コラール) 」これが本音だ。

日記をつけるのは精神衛生上いいそうだ。「科学的にも証明された、日記を書き続ける実用的なメリット」。

6月14日 Side-B やんばらやんやんやん

マハリコはタガログ語で美しき人、マハリキタは愛しています、ヤンバラとヤンヤンはあなたと私 (出典 Yahoo! 知恵袋) 。ほかにもサンスクリット語で偉大な言葉 偉大な行いだとか、摩訶離垢摩訶利他 (煩悩を捨てて悟りを開け) だとかいろんな説がある。

頭が少し動く時は、初期の「サザエさん」を読む。連載開始が1946年だから、配給や闇市が日常にある。人の距離も言葉使いも生活の中身もまるで違う。特に性差や階層の表現は、いまなら間違いなく叩かれる。そのまま昭和民俗学の資料になると思った。新聞マンガとしての制約と裾野のせいか、「団地ともお」並に作風が広くて読んでて飽きない。あの時代において、サザエの迂闊さには萌え的な需要があったのではないか。面白い。長谷川町子さんの狂気を感じる。

CDのアルミニウム蒸着には寿命があって、手持ちの古いCDが読み込めないってツイートを読んだ。僕の音楽遍歴はそのままCD史と重なるんで、うちのCDが読み込めなかったら物理的にも精神的にもダメージが大きい。結局全部リッピングしなきゃなんだろうか...たぶん2万枚くらいあるんだけど。吸い上げては売り、吸い上げては売り、フィジカルへの執着も消えちゃうんだろうか。
 5日の日記に、フィジカルへのこだわりは、時間を扱う表現だからつまみ食いしたくない、音楽にじっくり向かい合いたいからって書いた。もうひとつ、クレジットの存在が大きい。PDFでジャケットやクレジットがついてくるのもあるけど、紙って便利なメディアで、例えば聴いててこのベースかっこいいなって思った瞬間にサーチできる。そんな経験が次に聴きたい音楽に繋がっていく。アナログ...だろうか。「最高の音楽体験を求める人はレコード盤を求めている」ってWiredの記事。

世間から半年くらい遅れてるけど、松たか子さんの歌うレリゴー超絶いいな。英語のオリジナルバージョンよりずっと好き。声量とグルーヴ感と、演者としての意識の高さ。「主題歌」とされるMay.Jのバージョンは声質はオリジナルに近いけど、色んな意味で残念な仕上がり。松たか子さんがテレビで歌わないのは、ディズニーがうるさいからとかDVDの発売まで待ってるからとかいろんな憶測があるみたい。もったいないな、もう国民的名唱。女優さんってもちろん声の鍛錬をしてるわけだけど、松たか子さんと柴咲コウさんは特に素晴らしいシンガーだと思う。で、次の世代として来るのか来ないのか、椎名琴音さんがやばい。
 いまこのサイトの読者層がどんななのか全然しらないんで補足しておくと、松たか子さんの夫の佐橋佳幸さんは名ギタリストで名プロデューサーで、東京ラブストーリーの「ちゃかちゃー」ってギター弾いた人だ。松さん自身も作曲とピアノをこなす。

6月14日 Side-C I read the news today oh, boy.

「そう語るのは、心理学者の内藤誼人先生だ」。違う私だ。あまりにも語りすぎる内藤誼人の専門はなんなんだ。ライフハック系のライターさんのパソコンには「そう語るのは、心理学者の内藤誼人先生だ。」が辞書登録されてると思う。

ここ一週間で気になったニュースをいくつか。
 児童ポルノ禁止法改正案の審議が続いてる。自民党の土屋正忠議員が「劣悪なマンガ」を保護するべきでないと主張してる。心あるマンガ家は「劣悪なマンガ」を描くなと。土屋氏が推奨するマンガは手塚治虫全作品、サザエさん、ドラえもん、ゴルゴ13、まことちゃん、漂流教室、あしたのジョー、島耕作、沈黙の艦隊、ワンピース、テルマエロマエ...。基準がさっぱりわからない。
 ゆうきまさみさん「誰もが唾棄するような表現のためにこそ『表現の自由』はあると思うんですよ」その一言に尽きる。

新国立競技場の総工費が1625億円以上って言われてる。東京ドームは約350億円、東京スカイツリーは総事業費で約650億円。なんでかって記事。たかが運動会に使う税金の話だよ。舛添要一知事が予算の見直しを検討してるそうだけど、新国立競技場については触れなかった。まだどうなるかわかんない。前に書いた、四半世紀かけて生態系を作りあげた葛西臨海公園のことも。

ずっと取りあげてるダンス規制緩和案について、全日本ダンス協会連合会の小川純副って人がこんなことを言っている。「ダンスは健全じゃない…規制緩和反対のダンス団体語る」。要するに自分たち以外のダンスは不健全だから取り締まるべきだと。自分たちは国家公安委員会の指定を受けてる、犯罪を起こす業者と一緒にしてくれるなと。統制下にない文化は認めたくない。「既得権益を守ろうとしてる」との指摘には「社交ダンスを健全なものにしたい」としか応えてない。

福島でTOKIOに農業の指導をした方が白血病で亡くなったそう。誰かが白血病で亡くなるたびに、妄信的な脱原発活動家が大喜びする。本当に原発が廃止されたら生きがいをなくしちゃうんじゃないかしら。僕は本当に原発を廃止するべきだし、そのために理性的でありたいと思ってる。妄信的な脱原発活動家って例えばこういう人たちだよ。「核分裂しか眼中にない人に「衝撃波」を理解させる試み」。

ニホンウナギが絶滅危惧種に指定された。「絶滅危惧種指定、ウナギの食べる心配報道は異様」。絶滅危惧種ってのは絶滅の危惧がある種ってことだ。あまりにも軽く見られてる気がする。それでも食べたいから食べる、生活かかってるから食べさせる。コンゴの人がボノボ食べたいから食べる、売れるから殺すっていうのとなんにも変わらない。

6月14日 Side-D 薔薇と音楽

ここ一週間で気になった記事をいくつか。
  Brian Wilsonの新作にZooey DeschanelやLana Del Rey、Kacey Musgravesが参加するらしい。Zooey Deschanelは60'sマニア、She and HimとしてBeach Boysのカバーをしたことがある。Four Tetが10分で楽曲を作る。サンプリングから完成までのプロセス、閃きの連続がノーカットで観れる。Jonny Marrのいいリフコレクション。Talking Headsの「Nothing But The Flowers」もJonny Marrとは知らなかった。Daft PunkのThomas Bangalterのお父さんがやってたデタラメ日本語バンド、Yamasukiのアルバムがリイシューされる。いいわこれ、買う。WeezerのライブでPatrick Wilsonがドラムを演奏しながら飛んできたフリスビーをキャッチした。状況を把握してないRivers Cuomoの表情がいい。Echo & The BunnymenがVelvet Undergroundの「I'm Waiting for the Man」をアコースティック編成でカバーした。

SparksのRussell Maelが日本のカラオケで自分の曲を歌う。彼らについてはおおよそのことには驚かなくなった。David TudorがJohn Cageの「4'33"」を演奏。これが初演なのかな。ビール瓶で「Billie Jean」を演奏する。演奏技術と教会のリバーブとショーマンシップが掛け合わさってすごい見応え。
 細野晴臣さんとTEI TOWAの対談「音楽と旅する先に」。TEI TOWAは慢性的な歯痛なのかな。細野さんのルーツめぐりをしてる篠原章さんの「Sayonara, The Japanese Farewell Song」についての考察。内田裕也 feat.指原莉乃「シェキナベイベー」こんなの出てたのか。裕也さんが口の前にV字をあてるのは「こうするとステレオになるから」らしい。Cornelius x Sean Lennon「Heart Grenade」のMVが公開された。
 ジャズシンガーのJimmy Scottが亡くなった。ものすごく長いブランクの後、佳作をどんどん出してたんだけどな。

メトロポリタン美術館のサイトがリニューアル。ハイパーリンクって概念が出てきた時に、みんなこれをやりたかったんじゃないか。「アイコン」なるものを創りあげたデザイナーSusan Kareの作品集。WiredのApple関連の記事はみんな読み応えある。フィンランドが初めてムーミンのアニメ映画を制作する。絵や色のセンスが日本とはぜんぜん違う。5日の日記で縦スクロールのマンガを紹介した。小玉ユキさんも描いてた。「宝石箱の人魚」。手塚治虫文化賞での羽海野チカさんヤマザキマリさんの対談。胸熱。この授賞式で羽海野チカさんが着たドレスの由来。田中圭一さんが身を張ったネタにマジレスがついて炎上

マグロは時速100キロで泳がない」海洋生物の通説と最近わかったことの話。猫が砂漠で迎える夜明け。猫はもともと北サハラの生き物だ。完璧に立ってる猫。ますむらひろしの世界。撮影者「メー」仔山羊「メー」のコールアンドレスポンス 。ロリスって猿が脇腹をこちょこちょされてるだけなんだけど最高の動画。

NASAが構想中のワープ航法ができる宇宙船。NASAが開発中の空飛ぶ円盤。風船で浮かんでジェットエンジンで成層圏まで行く。飲むだけで嫌な記憶が消える薬剤の話。忘れたいことはたくさんある。無痛分娩の賛否。反対派の大半は男性だった。女性がキンタマの痛みを知ることはないけど、男性は出産の痛みを知ることはない。

自殺した中学生が書いた、いじめをテーマにした作文。タイトル「空気」うーん重い。高知の村八分を描いた「死を笑う集落 -秩序を守る、生活者としての現実-」。田舎幻想の影の部分。太平洋戦争中に軍部を批判して投獄された議員の自伝が復刊された。日本人の青年が韓国で、平和のためのフリーハグキャンペーン。感動的ですらある。なんども書いてるけど平和の基本は個人と個人の友好だ。能年玲奈さんが手縫いしたぬいぐるみ「はくさい」。能年ちゃんはもう僕の隣でこういうの作ってればいいと思う。

6月15日 Dear "?"

はてなブログで境界性人格障害をこきおろす記事を見つけた。「そんな化け物」は「明日も元気で普通に生き延びます」「あなたは確実に価値ある人間です≒境界性人格障害者は価値のない人間です」「境界性人格障害者はまともではありません。耳を傾ける必要は皆無です
 僕の病名は境界性人格障害ではないけれど、精神に障害を持つものとして辛さはよくわかる。似たような言葉を何度も何度もかけられたから。きっとかつてのハンセン病患者もこんな気持ちだったろう。

そう言い放つ「はてなの意識の高い方々」は、誰に咎められることなく「明日も元気で普通に生き延び」るのだろう。
 そう、まるで君みたいにね。

6月16日 Old Man

Old Man
作詞・作曲:鈴木博文

ぼくがいる場所教えたい 電話をしても誰もでないんだ
ぼくがすること知らせたい 手紙出しても返事来ないんだ
 春の日の駅で新聞を買って 夏の日の午後に家を見つけ
 ドアの外には小さな自転車 いつもテーブルに花が咲いてた
ある日暮れの部屋の椅子に眠り込んでたら
髪は白く指は細くぼくは年老いて
誰に気付かれることなく生き続けて

ぼくがいる場所教えたい 電話をしても誰もでないんだ
 そっと瞳を閉じて耳をすますと
 楽し気な話し声がかすかに聞こえる
 ドアをたたいた小さな風 古いテーブルに乾いたパン
そんな冬の日たった独り電話をしてる
そんな冬の日たった独り手紙を書いてる
誰に気付かれることなく

6月18日 非国民宣言

サッカーの大きな大会をやってることは察知してる。観ない理由は「興味がないから」の一言に尽きる。マジョリティを否定してなにかしらのアピールをしてる訳じゃない。でもマジョリティはそう捉えるし、自分たちに迎合しない人を潰しにかかる。

例えばテレビ。「『日本戦』見ないで何してる?」って企画、「テレビ見なくていいんですか」「今日は何の日か知ってます?」 (父の日だよ) 「今日いまこの時間に何をやってるかご存じですか」「今日試合見なかった理由はあるんですか」「今日こんなところで走っていて大丈夫ですか?」。別の放送局でもよく似た企画があったそうだ。「いったいなぜ」うるさいよどんだけかまってちゃんだよ。
 それに対するtwitterの反応は「サッカー見ないと非国民扱いだね」。僕は非国民扱いされて結構だし、いろんな意味で非国民だ。

もうひとつわかんないのは渋谷のスクランブル交差点で大騒ぎがあったこと。ほかの記事によると、痴漢が出て逮捕者もいたらしい。彼らはほんとにサッカー観戦してる人たちなの。便乗して騒いでるだけじゃないの。次の試合の時は斜め横断禁止だって。この騒ぎを煽り立ててるのもテレビメディアのように感じる。
 マークシティからスクランブル交差点のビデオを撮る外国人をよく見かける。非国民から言わせてもらえば、あの交差点の混沌をスムーズに渡るのは日本国民の秩序を象徴する現象のひとつと思う。どうかな国民の皆さん。

「九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響」を書いた加藤直樹さんが、「今の日本の嫌韓は91年前と似ている」と話す。91年前っていうのは関東大震災のことだ。地震の後に市民が朝鮮人を大量虐殺した。この話を初めて知った中学生くらいの頃、ものすごく驚いたのを覚えてる。そんな根拠のない人種差別があるのかって。いまの嫌韓の過激さに慣れちゃったみたいだ。
 「地震の後には戦争がやってくる。軍隊を持ちたい政治家がテレビででかい事を言い始めてる」っていう忌野清志郎さんの予言みたいな言葉を思い出す。集団的自衛権についての閣議決定案が出た。

都議会で女性議員が女性の妊娠・出産を巡る都の支援体制について一般質問をしていた時に、「早く結婚しろよ」「子供もいないのに」って野次が飛んだ。発言者を特定して「注意をするよう申し入れる」そうだけど、民間だったら首が飛んでもおかしくない。「結婚しろよ」がプロポーズだったらちょっといいな。
 ダニエル・キイスさんが亡くなった。「アルジャーノンに花束を」は10代の頃に一晩で読んで呆然とした。友達を池に落とそうとする女の子。萌えって要するにこういうことだろうか。

6月19日 太陽さえ知らない

いつか、おひさまが気づいてくれる、と、信じていた。
(たんぽぽの写真に添えられたnoteの言葉)

おひさまが気づいてくれたでもないし、いつまでも陽が射さないところがあるって判ってる。でもこれ以上布団にこもってるのはまずい。猫と暮らす者としてまずい。
 復帰に向けて二通りの方策を取ってる。ひとつは市の精神介護員さんの助けをかりること。もうひとつは生きがいを見つけること。体調悪化の原因はバンドの失敗なんで、音楽じゃないところに趣味を見出したい。料理、絵画、写真、鉄道模型。資料を取り寄せては唸ってる。料理教室に通っちゃったりね。そこで音楽のことなんかなんにも知らないガールと恋に落ちたりね。どの趣味にも難点があって、料理についてはカップヌードルさえ不味く作れるんだ僕は。レシピ通りにきっちり計測しないとなんにもできない。

友人が中古屋で、ソニテクがまとめて処分されてるのを発見したんだって。90年代、SONYが海外のテクノレーベルとどんどん契約して廉価でリリースした。ソニテクと呼ばれたこのシリーズが、日本のテクノの発展に果たした役割は大きい。実情はCDバブル期の税金対策だったのかも知れないけど。友人は懐かしくて何枚か買ったそうだ。僕も買ってしまいそう。完璧に懐メロ買うおじさんだ。若い頃はわかんなかった、おじさんがサービスエリアで懐メロのカセット買うの。いまソニテクあったら買うわ。
 Peter Gabrielがガブリエルじゃなくてゲイブリエルなら、相撲の決まり手はゲイブリ寄りかって無茶を言ったおじさんがいた。Brian Enoをかつてはエノと呼んだそうだ。もうゲイブリ寄りだしイーノケンでいいんじゃないかな。

18世紀末ごろまで、音楽作品は作曲されて楽譜になって再演される創作物って概念はなかったらしい。その場その場で演奏されて消えてくものだった。それが本来ある姿だと思うよ。僕をクラシック嫌いにした1人が、「大衆音楽のダメなところは譜面に従わないこと」って言った。クラシックの原型は伝統音楽にあるし、ロックやテクノだってもちろんそうだ。で、音楽著作権がメロディだけを保護してサウンドの意匠を認めないのは、音楽著作権の制定に走ったIrving Berlin (White Christmasの作者) が譜面も楽器もぜんぜんダメで、思いついた鼻歌を人に採譜させてたからなんだって。
 Musicless Musicvideoってシリーズが面白い。有名なPVの音楽を消してSEをかぶせたもの。例えば「Dancing In The Street」。元のビデオの違和感、ロックを演じる滑稽さがよくわかる。FUJI ROCKにDJみそしるとMCごはんが出る。去年は雷でゴンドラが止まって中止になっちゃった。今年は晴れてくれ。君を観るためだけに俺は布団を出る!!

6月26日 Side-A 我が狂気

話し相手がいない、というのは想像を絶する苦痛だ。22日の夜、精神的に閾値を超えて、病気から狂気の世界に突入した。オーディオ機器を床に叩きつけて壊したんだ。血だらけの手。まがりくねったスティール。怯える猫たち。
 もう独りでは生きられない。次は発作的に飛び降りるかも知れない。いままで自殺に踏み切れなかった理由は2つある。ひとつは猫の引き取り手がいないってこと。もうひとつは受け継いだ財産を弟に相続されたくないってこと。どう死ぬにしても、慈善団体に寄付するように手続きしなくちゃいけない。

その翌日。2年くらい音信不通だった「妹分」から突然電話がかかってきた。いちばん欲しかった声。いちばん欲しかったタイミング。いつもそうだった。魔法みたいだった。彼女は彼女の激動を送って、その日を迎えていた。
 「明日会うべきだと思う」、彼女の言葉に同意して2ヶ月ぶりに電車に乗り、半年ぶりに人と食事をした。アルコールも入って楽しい時間だった。彼女の描いた絵本を貰った。「これに音楽をつけて欲しい」。なんの意味もなかった僕の生活に、ひとつだけ目標ができた。

悲しい時に浮かぶのは いつでも君の顔だったよ
悲しい時に笑うのは いつでも君のことだったよ

6月26日 Side-B ピピカソ

フランスの友達から『日本は、際どいフィギュアあるかと思えば、ゴミ拾ったり、かと思えば公の場で議員がセクハラ発言堂々と言ったり、礼儀正しいかと思えば、汚染水いきなりドバーって流し込んだり、なんなの? 精神病なの? その不明さ愚かさグロさ異様さがkawaii作ってんの?』って言われた」ってtweetが10000回以上もリツイートされた。たぶんこの話、創作と思う。「フランスの友達」もきっといない。
 で、本当に大事なことは、この話の真偽じゃない。行動の規範は◯◯人の意見に従うんじゃなくて、自分で考えて決めるってことだ。自分でソースにあたって考えて決められない人。ネトウヨや嫌韓も、急進的な原発推進派も、逆に非科学的な脱原発村も、自分に都合のいい情報だけ受け取って流されて、妄想の世界でヒステリーを起こしてるように見える。フランスの友達の話に流される人もそういうこと。自分に都合がいい言説は気持ちいいのだ。

そのセクハラヤジについて鈴木章宏という都議が、党や都民に迷惑をかけたって謝罪をした。問題は「迷惑」なの? 人権侵害や性差別や、政治家としての資質じゃないの? 謝罪のタイミングと嘘について、鈴木都議と新聞記者とのやり取りがいちいち噛み合わない。鈴木都議と石破幹事長の話もまったく噛み合わない。鈴木都議は利用されて、自民党に貸しを作った。都民の知らないところで。
 なんだかんだでよその国の話なんだけど、スウェーデンでは育児休暇を480日取れる。そのうち60日は父親専用。最初の390日は収入の8割が保証される。で、男性対象者の8割が育児休暇を取る。昔はスウェーデンにも日本とよく似た問題があった。時間をかけて少子化を食い止めた。日本では、1997年に発表された2010年の人口予測が現実と0.2%しか食い違わなかった。少子化も人口減少もわかっていたのに対策を取らなかったわけだ。どうせ滅び行く民族だけどさ。

6月26日 Side-C 流れる人なみを 僕は視ている 僕は視ている

なんで潰れないのかわからない中古レコード屋になりたい。

YouTubeがインディーズレーベルの音源を締め出そうとしている。YouTubeの登場はインターネットを覆す大事件だった。猫のかわいいいたずらから政治的なメッセージまで、世界の風景が簡単に共有できるようになった。おかしくなったのはGoogle傘下に入ってからだ。僕はGoogleという存在を、とても脅威に感じる。
 YouTubeでは広告収入やVEVOだけじゃなくて、新しい有料配信サービスを立ちあげようとしている。その契約条件が不公平らしいんだ。契約を飲まないレーベルの動画はブロックされる。Googleは新しい才能を世に送り出すことに関心がない。YouTubeはクリエイターの信頼を失って、死ぬだろう。

たぶん滅茶苦茶叩かれることを書くけど、キリンジ好き過ぎるひと多いよね。僕がキリンジを初めて観たのはインディーズ時代、前に立つオタガールが神の言葉を聴くようにうっとり陶酔して、対バンなんてなかったように帰っていった。あれから17年、いまのキリンジ厨にも同じキモさを感じる。

Four Tetがユニセフとコラボレーションして、反暴力のビデオを作った。MoMAでBjorkの回顧展が開かれる。テルミンと猫が合体した楽器「Mew」。Paul Steelの新プロジェクトCold Crows Deadがいい。Janet Klein And Her Parlor Boyの変名Handy Dandy Boysによる日本の名曲「Super Mario Brothers」。Aimee Mann & Michael Penn「I Just Wasn't Made For These Times」こういう動画を観ると、本国でもBrian Wlsonへの見方が変わってきたなって思う。Jeff Tweedy「Love and Mercy」この曲は誰の歌で聴いても胸が締めつけられる。
 名作詞家Gerry Goffinが亡くなった。「Pleasant Valley Sunday」をCarol Kingが歌うデモ。すかんちのメンバーで、キーボーディスト・作編曲家の小川文明さんが亡くなった。

6月26日 Side-D 祈り

三年後の捜索活動 -福島県双葉郡大熊町 娘が生きた証をつかむ-」もう忘れた人もいるかもだけど、この国では3年前に大きな地震が起きた。津波に流されて行方不明の娘さんを、福島第一原発から3キロ圏内の僅かな滞在許可時間を使って、まだ探しているお父さんがいる。
 広島の原爆跡地に外国人の訪問が増えている。外国人に人気の日本の観光スポット2位に広島平和記念資料館が入った。「最も強烈な印象を受けたのは、投下時刻で止まった時計だった」「幼い子どもが持っていたご飯が入ったままの弁当箱には言葉が出なかった」「生存者の証言や写真は衝撃的だった」「原爆の現実感が強まった。教科書で読んだりテレビで見たりしているだけでは抽象的で遠くのこととしか思えなかった」。修学旅行のことなんか片っ端から忘れてく僕でも、広島平和記念資料館と盧溝橋抗日戦争記念館のインパクトは忘れない。

毎日新聞の社説「集団安全保障 首相の発言と矛盾する」どんどん戦争したい自民党、ずっと放置してた公明党の政教分離問題を引っ張りだして脅しにかけるのは卑怯だな。
 おなじ毎日新聞の特集「集団的自衛権、どこか人ごと!? なぜ議論が盛り上がらないのか」に、大学の後輩たちの発言が載っている。「行使容認にも解釈改憲にも賛成。護憲派の上の世代の理想主義って既得権を守ろうとする人と同じにおいがする」「こういう大学に通う僕が戦場に駆り出される可能性はないと思う。専門性の高い軍隊に国を守ってほしいから、戦闘員が足りないなら移民を。そのために相当のカネを投入し、法整備も必要」「 (身内の戦争体験を聞いたことは) 全然ないですね」「正直、僕らの世代で行使容認に反対の人、ほとんどいないと思いますよ。W杯の時期で愛国心、すごいですから」。

「上の世代」の言うことはなんでも反対なんだなっていうのはがっかりした。まさに我がバンド崩壊のキーポイントだ。この日記に書くのは7回目くらいだと思うけどさ、人はどうしても老いる。その時に客観的な視点を保てるかどうかは、歴史をどう学ぶかにかかってる。温故知新だ。僕はたまたま尊敬できる教授によくしてもらったり、指針にしたい大人がたくさんいた。そういう出会いがなかった同世代の学生たちが20年後、どれだけ老害に陥ってるかじっくり見てる。「上の世代の理想主義は既得権」と言い放った青年が、どんな42歳になるだろうか。
 もうひとつ、ワールドカップに絡めるならこんな記事。人は集団で行動すると道徳観が薄れ、倫理的思考ができなくなることが脳のMRIスキャンで明らかになった。

楽しい話もしよう。野良猫が迷い込んだ先には大きくて最高の友達が待っていた

6月30日 幸福はぼくを見つけてくれるかな? (Peter Fischli / David Weiss)

ブタゴリラの本名は薫。「本人は女性のような名前に非常にコンプレックスがあり、本名での呼称を防ぐため「ブタゴリラ」という蔑称のようなあだ名で自ら呼ばせている。(Wikipedia) 」。

我が病と狂気はまっすぐに衰弱に向かっている。すぐにでもできそうなこと、こぼれていく焦り。ほんの少しの抜け穴からきっと目詰まりは開けてゆくのに。
 金曜日は這い出して病院へ。15分歩いたら息切れと汗が、取り組み直後のお相撲さんみたいになった。きのうと今日はお布団で過ごした。このまま寝たきりになるんだろうか。行政も医者もまったく頼りにならない。体力つけて、FUJI ROCKにはまだ行きたいと思ってる。行った事実だけで自信につながるから。僕を変えられるのは僕だけだ。

誰がまとめたのか、XTCのBeatlesに関する発言集が面白い。
 「John Lennonの音楽は自由で乱暴。音楽的要素以外のJohnの存在がそこにはあるんだ。Johnはロックスターであるとともに芸術家で思想家であり、彼の虎口の音楽は参考にするのは難しい。Paul McCartneyの音楽は非常に完成された音楽理論に沿ったものだった。だから彼の特徴は解明され、Beatlesを参考にしたいミュージシャンにとっては、彼の曲は教科書になった
 「僕のバンドにもソングライターが2人いた。テープを置いてくんだ。曲を聴いた後の背筋がぞっとする感覚は想像できないだろうね」「僕はRay Davis、Paul McCartneyと肩を並べるソングライターって言われたかった。でも人々と心の繋がりを持てなかった。僕らの音楽的才能なんて見せたら恥ずかしい」。ほかにも興味深いエピソードがたくさん。僕はXTCには運がなかっただけだと思ってる。

ソウルの伝説Bobby Womackが亡くなった。「Across 110th Street」や全盛期の名曲はもちろん、Damon Albarnがプロデュースした遺作「Bravest Man in the Universe」にも、現役感と次の扉が見えた。Rolling Stonesが追悼の演奏をしている。
 「原発20キロ圏内でただ独り生きる」親戚にも避難所にも拒絶されて、残された動物たちの世話をして生きることに決めた男性の話。志茂田景樹さん「戦争に行きたくて仕方がないのに戦争をまったく知らず、どうしたらいいと首を傾げている人のための詩」。谷川俊太郎さんが宇宙を語る。62年前、「二十億光年の孤独」を書いた頃は宇宙の大きさは20億光年と言われていた。立川にこんな魅力的な施設があったのかよ「立川まんがぱーくに行く」ぐうたらな姿勢で読み放題。猫と暮らしてるとわかる距離感