THE BEACH BOYS COMPILATIONS

夏が来るたびに世界中で代わり映えのしないベストアルバムがリリースされるBeach Boys業界、とても全部は追いきれないので、このページでは重要なコレクションだけご紹介する。

あまたあるベストアルバムの中で自信を持ってお薦めできるのは、Brian Wilsonが自選した「California Feelin' - The Best of The Beach Boys selected by Brian Wilson」。
 少なくとも1960年代前半までのアルバムは、シングルヒットの寄せ集め+捨て曲という発想で作られているので、オリジナルアルバムを揃えるのは実はあまり効率がよくない。膨大なディスコグラフィーを前に呆然とした初心者は、まず「Pet Sounds」と「Sunflower」を買って、次の一手に困ったらこれでいいんじゃないいかしら。ダメかしら。

THE Beach Boys RARITIES

 1983年7月

Beach Boys初のレアコレクション。今となっては聴くべき音源はほとんどないが、いちおう紹介しておく。
 まずは未発表のカバー曲が3曲。どれもデモデモだが、「I Was Made To Love Her」には新しいアカペラパートがあったりとそれなりの工夫の跡が見られる。続いてレアなシングル曲が4曲。Dennis絶好調期のヘビーな「Celebrate The News」は聴きものだ。B面は「Good Vibrations」の初期バージョンからスタート。かなりラフなミックスで音が途切れたりするのだが、正式盤にはないコーラスが新鮮。「In My Room (German Version)」は、ドイツ語で歌うと弱音をはいても強そうに聴こえて笑える。ロンドンライブのアウトテイク「All I Want To Do」はさすがに迫力充分、最後は「Auld Lang Syne」のナレーションなしバージョンで締め。日本盤のCDにはさらにヒット曲のメドレーが入っているのだが、僕にはそもそもメドレーというものの存在価値がわからない。

AN AMERICAN BAND

 1985年

Dennis他界の直後に制作されたドキュメントビデオ。ベッドにこもるBrianのカットから始まる構成に驚かされたが、いまとなっては「Endless Harmony」や「I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES」の方が正史と言えるかも。

メンバーやWilson兄弟の母親であるAudrey Wilson、Van Dyke Parksなどのインタビューを中心に、ライブ映像、レコーディング風景でBeach Boysの60's 70'sを振り返る。「SMiLE」の現場、Brianが弾き語る「Surf's Up」は狂気の美しさ。Four FreshmenやPaul McCartney、Jimi Hendrixなど彼らの歴史に関わってくる時代の映像を交えることで、Beach Boysの歴史と同時にポピュラーミュージックの歴史をも描き出している。監督はMalcolm Leo。

GOOD VIBRATIONS
THIRTY YEARS OF THE BEACH BOYS

 1993年11月

Beach Boys初のボックスセット。デビュー前から80年代まで30年の歴史を包括した大作だ。ブートではお馴染みだった未発表曲の数々が初めてオフィシャルにリリースされた。特にロック史上の伝説「SMiLE」セッションの音源は大きな話題を呼んだ。既発曲も、Brianがプロデュースした60年代の音源は、本人のこだわり通りモノラルバージョンで収録されている。ステレオバージョンと比べると、フェイドアウトの仕方とかが微妙に違うそうだ。確かめたことはないが。

「SMiLE」のことはここに書いたので、それ以外の目玉についてサラサラと。美しいアカペラ「Their Heats Were Full Of Spring」はFour Freshmenのカバーで、Beach Boysは64年のライブアルバムでもこの曲を歌っているが、ここに収録されているのはデビュー前のスタジオバージョン。初期のBeach Boysはコーラスが弱いと言われているが、その気になればこの通り。「The Little Girl I Once Knew」はアルバムに収録されなかった傑作シングルで、1999年のBrianのワールドツアーではオープニングナンバーにもなった。「Can't Wait Too Long」は「Heroes And Villains」のバリエーションを中心にした組曲。「SMiLE」の音源と比べちゃうとちょっと甘いかな。
 「Break Away」もアルバムには収録されなかった隠れた名曲で、Brianとは犬猿の仲だった父Murry Wilsonとの唯一の共作曲。そして「Sanflower」セッションからのアウトテイクが3曲。どれもアイデアに溢れて楽しい曲ばかり。特にDennisの「San Miguel」は、Spector風のカスタネットも軽やかな名曲だ。Beach Boysは70年代末にどうしようもない低迷期を迎えるんだが、無理して新曲を作ろうとしないでこの時代のボツ曲を使いまわせばよかったんじゃないか。「Fairy Tale Music」は、アルバム「Holland」のオマケについてきた組曲からナレーションをとったもの。フェイドアウトでつなぐ構成はあまりに安直だが、シンセの使い方が面白くって僕は大好き(みんなは嫌いみたい)。「It's Over Now」と「Still I Dream Of It」は、オーケストラを使った「Adult Child」セッションから。「Still...」は当時のBrianを代表する名バラードだ。

このボックス、当時としては画期的な音質だったそうだが、その後のマスタリング技術の進歩たるや目覚ましく、僕のような凡人でも耳からうろこが落ちるほどクリアな音源が出ている。これからこのボックスをお求めになる方はそのあたりお含み置きを。そして2013年に「MADE IN CALIFORNIA」がリリースされてしまってからは、ますます存在価値が下がっている。

The Pet Sounds Sessions

 1997年11月

傑作アルバム「Pet Sounds」の全貌を捕らえる画期的なボックスセット。一番の売りはなんといっても丁寧に作られたトゥルーステレオバージョンだったが、いまは同じ音源が単独のCDで手に入るので初心者にはそちらをお薦めしたい。
 それでも一度「Pet Sounds」にはまってしまった人にとっては、このボックスは今でも大切な宝物だ。アカペラミックスは例えようもなく美しく、胸にヒリヒリと迫ってくる。バックトラックのセッション風景は、創造の神秘を伝える緊迫のドキュメントだ。コンソール・ルームのBrianが、イメージを取りこぼさないようにもどかしげに指示を出すと、その度に演奏が爆発的に進化していく。

残念なのは日本盤のブックレット。邦訳がことごとく間違っているのだ。書いてあることを素直に信じると、1960年にBeatlesがアルバムを作ってたり、Carol Kayeが男性だったり、Phil Spectorがサックス奏者だったり、Wrecking Crewが「破壊部隊」だったりする。ちゃんと探せばページあたり2〜3個はあるだろう。明らかな事実誤認ならすぐにわかるが、Tony Asherが「Wouldn't It Be Nice」の想い出を語るシーンで、彼の思い入れが全く逆に書かれているのにはまいった。これはレコード・コレクターズ誌のインタビュー記事と読み比べて初めて気づいた誤訳だ。ブックレットのクオリティが「Pet Sounds」の価値を下げるわけじゃないが、せめて当事者の「想い」だけは正確に届けて欲しい。根拠のない情報や伝説をなくして、関係者の証言を事実として書くことに意義があるのだ。

Endless Harmony SOUNDTRACK

 1998年8月

ドキュメントビデオのサントラ盤としてリリースされた、強力なレアコレクションアルバム。出せるものは出し尽くしたと思っていたのにまだこんないい音源が残っていたとは。Beach Boysマニアはつくづく金がかかる。

主な未発表曲をザックリ紹介する。「Soulful Old Man Sunshine」は、BrianとSunraysのRick Hennの共作によるスウィンギーなポップソングだ。1969年の録音。ヒットだって狙えそうなのにCarlが自分のボーカルを気に入らなくてお蔵入りになった。「Loop De Loop」も69年頃の作品で、ティンパニーがはずむ中を飛行機が飛び回り、おもちゃのサイレンが鳴り響く楽しいノベルティソング。長いこと放置されていたが、このコレクションに合わせてAlが追加レコーディングを行って、最初のセッションから29年目にしてようやく完成させた。
 「Barbara」はDennisの作品。ラフなデモなのにボーカルのニュアンスだけで聴かせる。Mikeの「Brian's Back」はタイトルの通り、病床からBrianを無理矢理ひきずり出した「Brian Is Back」キャンペーンのテーマ曲。キャンペーン自体が非難の的なので、曲の方も必然的に評判が悪い。確かに展開がぎこちないけど、当時のBeach Boysのレベルを思えばましな方だと思う。

ライブ音源も充実していて、特に60年代末から70年代のはじめ、ライブバンドとして絶頂期にあった頃のソリッドで力強い演奏が楽しめる。「Wonderful / Don't Worry, Bill」は、Flamesのファンキーなナンバーを、SMiLE時代の小曲でサンドイッチにしたもの。なかなかバンドに馴染めなかった彼らの曲を救う苦肉の策だったのかも知れないが、これが意外とマッチしていて彼らのファンとしては嬉しいところだ。「Darlin'」は80年の演奏だが、Carlのシャウトがかっこいい。お薦め。
 残りはリミックスやバージョン違いの類いだ。「'Til I Die」は当時のレコーディングエンジニアが趣味で作ったというオルタナミックス。ヴィヴラフォンのクールなインストロメンタルから一転して、胸を打つアカペラがグサっと切り込んでくる。オリジナルよりこっちの方がいいぞ。「Kiss Me Baby」と「California Girls」は、Brianがモノラルに凝っていた時代の音源をステレオにリミックスしたもの。今のリスナーの耳にはこっちの方が馴染みやすい。

Endless Harmony

 1998年

Carl他界の直後に制作されたドキュメントビデオ。記録映像だけじゃなくて、インタビューを大切にしたつくりになっている。

Elvis CostelloやJacson Brown、Sean Lennonなんかのコメントもあるけど、なによりメンバー自身や関係者へのインタビューが面白い。伝説が伝説を呼んで、ワイドショー的妄想にバンドの本質がマスクされている部分を、関係者自身の言葉で明らかにしていこうという意図が読み取れる。BrianのセラピストだったEugene Landyの存在や、BrianとMikeの確執など、今までのビデオでは触れたがらなかった微妙な話題にもちゃんと向き合っている。BrianとMikeが、カメラの前で仲直りをアピールするシーンはちょっと痛々しい。
 そうやって無駄な皮を剥いでいくと、浮き彫りになってくるのは彼らの音楽に対する誠実な姿勢だ。Brian自らコンソールをいじって「Kiss Me Baby」の構造を解説するシーンや、Carlが音楽の精神性について語るシーンには感動。ただ、ことの概要を説明しないでいきなり核心に入ってしまうので、バンドヒストリーに通じていない人にはわかりにくいかも。それと残念なのはこのビデオ、日本語版の字幕が誤訳だらけで意味がさっぱり通じない。NHKで放送した時の新しい字幕と比べてびっくり。毎度ながらやってくれる東芝EMI。

Ultimate Christmas

 1998年9月

1964年の有名なクリスマスアルバムと、1977年の未発表アルバム「Merry Christmas From The Beach Boys」をカップリングしたもの。Beach BoysのクリスマスソングはこのCD1枚で全てこと足りるようになった。しかし77年のアルバムはボツをくらって当然のクオリティで、マニア以外にお薦めできたもんではない。このCDが出たことで、オリジナルフォーマットのクリスマスアルバムが店頭から淘汰されてしまったのは残念だ。

77年の作品では、Dennisの荘厳な「Morning Chiristmas」だけは陽の目を見なかったのが不思議なくらいの傑作。オーケストラベルやアナログシンセを駆使したアンサンブルは、Dennisが全て一人で手掛けたもの。朝の雫と光、冬のキリっと張りつめた空気に身が引き締まるようだ。Dennisって人はいまいち報われなかった。
 「Loop De Loop」の歌詞をかえた「Santa's Got An Airplane」や、ヨーロピアンマイナーバラードの「Winter Symphony」あたりも聴ける。それ以外の曲はモタモタしてて、プロとしてこれはどうかという出来だ。クリスマスソングを歌うことへの緊張感が伝わってこない。結局「サンタクロースがプレゼントをくれる日」としてのクリスマスなのだ。クリスマスソングの魅力っていうのは、日本人には真似できない宗教的な背景、畏敬の気持ちや厳かさに支えられた楽しさにあると思う。

HAWTHORNE,CA

 2002年5月

Beach Boysマニアは年を取り、お金を持つようになった。バンドのニューアルバムが出なくても、レアトラックを掘り出してリリースすれば売れちゃうんだからボロい商売だ。

Hawthorne,CAは彼らの出身地。宅録デモからアルバムは始まる。この辺は聴くものはない。注目は丁寧にステレオリミックスされた「Dance Dance Dance」「Salt Lake City」「And Your Dream Comes True」「Heroes And Villains」「Vegetables」「Let The Wind Blow」「Cotton Fields」。Brianのこだわりでモノラルレコーディングされたアルバム「TODAY!」「SUMMER DAYS (AND SUMMER NIGHTS!!)」の2枚は、トゥルーステレオミックスバージョンがリリースされた今となってはあまり価値がない。
 そしてアカペラミックス。「Kiss Me Baby」「Can't Wait Too Long」「Add Some Music To Your Day」「Forever」。どれも凄いです。ぞぞっとくる。未発表曲は作者不詳の「Lonly Days」67年頃の録音。不思議なリズム展開の可愛い曲。Dennisの「A Time To Live In Dreams」は美しいバラード。その合間合間にメンバーのインタビュー音源が挟まる。

SONGS FROM HERE & BACK

 2006年5月

さすがにこれはどうかと思う安っぽい作りのレアコレクションアルバム。でもこれも買わねばならないのだ。理由は後述。
 1曲目から9曲目は1974年から1989年までのライブテイクを適当に収録したもの。これと言って聴きどころはない。クレジットもいい加減。問題は10曲目「The Spirit Of Rock & Roll」。ライブで初披露してから20年たって、ようやくスタジオ版が正式リリースされた。Beach Boysの演奏ではなく、Brian Wilson名義。これまでも何度も録音されてきた名曲だが、リリースバージョンが一番安っぽくて疾走感がないとはなんたる皮肉か。アレンジのネタ尽きましたっていうBrianの本音が聞こえてくるようだ。そして11曲目「PT Cruiser」。Al Jardineの新曲。初期Beach Boysのイメージの焼き直しで、いまのAlのポテンシャルから考えると残念な出来。一番の聴きものは12曲目「Cool Head, Warm Heart」。Mike Loveの新曲。ハーモニーが美しいバラード。Mikeはごくたまにいい曲を書く。

the warmth of the sun

 2007年5月

2003年にリリースされて200万枚の大ヒットを記録したベストアルバム、「SOUNDS of SUMMER」の続編としてリリースされたアルバム。またもや初出のステレオミックスがある。「All Summer Long」「You're So Good To Me」「Then I Kissed Her」「Please Let Me Wonder」「Let Him Run Wild」「Wendy」の5曲。これらについてはやはり、アルバム「TODAY!」「SUMMER DAYS (AND SUMMER NIGHTS!!)」のトゥルーステレオミックスバージョンがリリースされた今となってはあまり価値がない。「Break Away」はコーラスとホーンが前面に出たオルタネートミックスで、オリジナルより聴きやすい。人気の曲も多いし、マニアなら押さえておきたいと言わざるを得ない。
 なお、「SOUNDS of SUMMER」にも「Shut Down」の新しいステレオミックスが収録されている。全曲シングルバージョンなのもマニア泣かせなところ。そのために金を出せるかはあなた次第。

summer love songs

 2009年3月

いい加減にして欲しいニューミックス収録のベストアルバム。ラヴバラードを中心にした選曲は斬新で、聴き流すぶんには気持いいが、個人でプレイリストを作れる時代に必要なのか。
 今作初出のステレオミックスは「Don't Worry Baby」「Why Do Fools Fall In Love」「Hushabye」「I'm So Young」「Good To My Baby」「Time To Get Alone」。「Don't Worry Baby」の包みこむようなコーラス、「Why Do Fools Fall In Love」はイントロのフレーズが新鮮だ。さらに未発表曲「Fallin' In Love」も収録されており、残念なお知らせだがこれもまたマニアなら押さえておきたい一枚。

SMiLE Sessions

 2011年11月

Brian Wilsonをパラノイアに追い込み、Beach Boysの商業的な、あるいはロック界における立ち位置的な分岐点になった、史上最も有名な未完成アルバムの、44年目にしての正式なリリース。「SMiLE」についてはこちらに詳しい。
 1980年代末から90年代にかけて、「Pet Sounds」「SMiLE」期のBeach Boysの再評価の機運があり、「SMiLE」のブートレグがたくさんリリースされた。それに対する回答として、1993年のボックスセット「GOOD VIBRATIONS - THIRTY YEARS OF THE BEACH BOYS」で、初めて「SMiLE」の音源の一部が公式にリリースされた。2004年にはBrian Wilsonのソロアルバムとしてとりあえずの完結を果たしたが、それを参考に1966年のオリジナル音源で再編したのがこのボックスセットだ。

Brian Wilsonのバージョンで完成形をみた「SMiLE」を、いまさらBeach Boys名義で出し直すことに、僕はあんまり興味を持てなかった。侮っていた。パズルのように作られたこのアルバム、当然66年にレコーディングしていないパートも、2003年にレコーディングしていないパートもたくさんある。演奏もコーラスも全然違うので、当然それに合わせた構成になっている。アルバムとしても素晴らしく、形を変えて何度もリリースされた名曲「Vegetable」や「Wonderful」は、決定版が出た。なにより、5人のハーモニーが最高だ!
 リリース形態はボックセット (CD5枚、LP2枚、EP2枚) 、デラックス・エディション (CD2枚組) 、単品 (CD1枚) の3種類。それぞれ、編集されたアルバムのほかにアウトテイク、素材集的なものを収録。ボックスセットとデラックス・エディションでは収録されるアウトテイクが違うという阿漕な商売。さらにCDとLPでミックスが違う。コンプリートしたい方はボックスセットとデラックス・エディションの両方、入門編として聴いてみたい方は単品を購入したらいいと思う。

MADE IN CALIFORNIA

 2013年8月

結成50周年キャンペーンとしてリリースされた、Beach Boysにとって2組目のオールタイム・ボックス・セット。全盛期の代表曲はもちろん、以前のボックス・セット「GOOD VIBRATIONS THIRTY YEARS OF THE BEACH BOYS」ではあまり触れられなかった70年代後半以降、2012年の堂々の新作「THAT'S WHY GOD MADE THE RADIO」まで、バンドの全貌が見渡せる。メンバー全員が監修した選曲は、バンドの静と動、ダイナミズムに焦点をあてて、いままで見落とされていた楽曲にはっとさせられる。音質も最高、必ずしも最新Mixではなく、納得のいくMixが採用されている。
 すべてが素晴らしい。聴いていると、まるでこのバンドに、悲しい出来事なんてなにも起こらなかったかのような錯覚に陥る。

惜しむらくは、クレジットの間違いが散見されることと、DISC-3の全編に渡ってトラック信号の打ち間違いがあること。全曲冒頭に2秒程度の無音が入り、最後に収録された「Surf's Up」のエンディングが微妙に途切れている。
 輸入盤の場合、アメリカかイギリスのユニバーサル・レコードに連絡すれば、正しいバージョンに交換してくれるという。日本のユニバーサルからはアナウンスがない。

レア音源をさらっとおさらい。
 まずは本編。1976年のアルバム「15 Big Ones」に収録された「Back Home」の、なんと1963年に録音されたオリジナルバージョン。1968年のアルバム「Friends」の冒頭を飾った小曲「Meant For You」の続きが聴けるオルタナティブバージョン。1970年にDennis Wilson & Rumbo名義でリリースされた「Fallin' In Love」と「Sound Of Free」。Dennis Wilson作の1971年の未発表曲「(Wouldn't It Be Nice To) Live Again」はなんでリリースされなかったのかわからない名曲。1974年に書かれて2002年にBrianのソロ名義で再録音された幻の名曲「California Feelin'」の、1978年のお蔵入りバージョン。Mike Love作の1979年の未発表曲「Goin' To The Beach」。1980年に録音されたVeronicaのカバー「Why Don't They Let Us Fall In Love」、The Crystalsのカバー「Da Doo Ron Ron」。1995年のいわゆるAndy Paleyセッションから、2004年にBrianのソロアルバムで再録音された「Soul Searchin'」と、初出曲「You're Still A Mystery」。
 ほかにもMix違いやバージョン違いが多数収録されている。

DISC-5の後半からは初出のライブ音源がずらり。
 聴きどころは1972年のDennis Wilsonがリードボーカルを取った「Help Me, Rhonda」、Blondy Chaplinがリードボーカルを取った「Wild Honey」。1993年の「SMiLE」バージョンに近い「Vegetables」と「Wonderful」。本編ではなきものとされてるアルバム「SUMMER IN PARADISE」からタイトル曲「Summer In Paradise」。1997年にチャリティ・アルバムに提供した既出バージョンだけど、可哀想なので触れておこう。アルバムバージョンより遥かにパワフルだ。

DISC-6は全編がレア音源集。
 聴きどころはGlenn Campbellに提供した名曲「Guess I'm Dumb」のインストバージョン。この曲についてはBeach Boysが歌ってるバージョンを隠し持ってるんじゃないかと憶測してる。少なくともBrianが歌うデモバージョンはあるはずだよね。
 未発表曲は、1998年にBrianがソロアルバムで「She Says That She Needs Me」としてリリースされた曲の原型「Sherry She Needs Me」。「20/20」セッションから「Mona Kana」。「Sunflower」セッションから「Where Is She?」。「Smiley Smile」セッションから「I Believe In Miracles」。「M.I.U.」セッションから「Why」。1974年の「Barnyard Blues」。「Love You」セッションからThe Righteous Brothersのカバー「You've Lost That Lovin' Feeling」。1974年の「My Love Lives On」。

壮大なボックスは、Carl Wilsonの1996年のコメントで大団円に至る。