THE BEACH BOYS 1985-2013

ドラマーを失い、ロックバンドであることを辞めてしまったBeach Boysは、レコーディングとなれば外部のプロデューサーを起用、ライブとなればサポートメンバーに頼りっきりで、チルドレンの介護を受けながら古き良きアメリカを語り継ぐ年老いたコーラスグループとして活動を続けた。1988年、映画のタイアップ曲「Kokomo」が久しぶりの大ヒットを記録するが、成功を次に繋げることは出来なかった。そんな中でもなお、コンテンポラリーな存在であり続けようと奮闘していたCarl Wilsonも、1998年に亡くなってしまった。
 かたや20年以上にもわたって心の病と闘い続けてきたBrian Wilsonは、精神科医Eugene Landyのマインドコントロール下に置かれて、Beach Boysを敵対視するようになっていた。90年代に入ってから、泥沼の裁判劇の末にLandyはBrianの元を去り、マインドコントロールも解けて和解が成立した。

Brianは奇跡の復活を果たして、ソロアーティストとして大活躍、Al Jardineもクオリティの高いソロ活動を展開した。Beach Boysの名前を受け継いだのはMike LoveとBruce Johnston、そして初期メンバーだったDavid Marksの3人。新譜を出すこともなく、懐メロバンドとしてライブ活動を続けていたが、2011年のイベントにBrianとAlがゲスト参加。同年リリースされた「SMiLE Sessions」もヒットを記録した。
 デビュー50周年の2012年、久しぶりに5人が揃って傑作オリジナルアルバムをリリース、ワールドツアーを敢行した。

Up The Creek Various Artists 1984年4月

サウンドトラックにRandy Bishopが書き下ろした「Chasin'The Sky」を提供。アップテンポなのにいまいち疾走感がなくて、敢えて探すこともないです。

East Meets West The Beach Boys / Frankie Valli and The Four Seasons 1984年4月

因縁のライバル、Four Seasonsとの共演。東海岸と西海岸の交流を歌う。殆どFrankie Valliがリードボーカルをとっている。シンセのセンスが悪くてなんだかなあ。

Getcha Back 1985年5月

アルバム「THE BEACH BOYS」の先行シングル。

THE BEACH BOYS

 1985年5月

Dennisの死は、ソロ活動に専念していたCarlにBeach Boysのメンバーとしての使命を思い出させたようで、5年ぶりのアルバムは当時ソングライターとしてピークにあったCarlが大活躍するポップな作品になった。
 決してうまくはないが個性的なドラマーだったDennisを失ったBeach Boysは、替わりのドラマーを探して別のバンドになることを避け、バンドそのものを廃業してしまった。このアルバム、それぞれ自作曲ではちょこちょこ楽器を弾いているものの、大部分の演奏はセッションミュージシャンまかせなのだ。ついでに22年ぶりにプロデュースを外部に依頼、起用されたのはなんとSteve Levine。Culture Clubで名を上げたSteve、想像通りの恥ずかしいサウンドにしてくれた。なお、オールドファンはこのアルバムを「デジタル・サウンド」と表現するが、若いリスナーの想像するデジタル・サウンドとは全く違うので注意。いかにも80年代らしい「エレポップ」といったところだ。ただアルバム名も含め、これがコンテンポラリーなBeach Boysですよと言いたい気持ちはわからなくもない。

それでもこのアルバム、聴けてしまうのは、力強くて張りのあるコーラスと、Carlをはじめメンバーがいい曲を書いているせいだ。Carlの「It's Gettin' Late」は、美しいハーモニーとファンキーなリフレインが交互に登場するお得意のパターン。「Where I Belong」はオーソドックスなバラードで、この曲はCarlのプロデュースで聴きたかったなあ。BruceはいかにもBruceらしいスウィートなバラード、AlはいかにもAlらしいカリフォルニアポップスを提供、Brianも久しぶりにまずまずの出来。Stevie Wonderが書き下ろして殆どの演奏を手掛けた「I Do Love You」は、さすがに気持ちいい。
 目玉はMikeの「Getcha Back」。Bruceの20年来のパートナーで、Byrdsのプロデューサーとしても有名なTerry Mecherと共作した、キャッチーなポップソングだ。当時ドラッグにはまっていたTerryを見兼ねたBruceが声を掛けてレコーディングに招き入れたという。これ以来Mike / Terryのコンビは、グループの中心的ソングライターになっていく。

It's Gettin' Latek 1985年8月

アルバム「THE BEACH BOYS」からのシングルカット。

She Believes In Love Again 1985年10月

アルバム「THE BEACH BOYS」からのシングルカット。

Rock'n Roll To The Rescue 1986年7月

ベストアルバム「Made In USA」からのシングルカット。オリジナルアルバム未収録。Mike / Terryのナンバー。TerryとBrianがプロデュース。この時期のBrianにしてはいきいきした声が聴ける。コーラスも力強い。アメリカのみ12インチリミックスシングルが出た。「Beach Party Mix」は探す必要は全然ない。

California Dreamin' 1986年9月

ベストアルバム「Made In USA」からのシングルカット。オリジナルアルバム未収録。Mama's & Papa'sのカバー。盟友Roger McGuinnが12弦ギターで参加、Beach Boysのコーラスも冴え渡って低迷期とは思えない名演。彼らも手応えを掴んだのか、2年後に元Mama's & Papa'sのJohn Phillipsを共作者に招いて大ヒット曲「Kokomo」を生み出すことになる。

Forth Of July Various Artists 1986年

建国記念日のライブアルバム。Beach Boysの演奏は、Ringo Starrがドラムを叩いた「Back In USSR」など4曲。未聴。

Wipe Out Fat Boys And The Beach Boys 1987年5月

Fat Boysのシングルにコーラスで参加。アルバム「Still CRUISIN'」に収録。6月にリミックス盤が出たが、探す必要はない。

Happy Ending The Beach Boys with Little Richard 1987年5月

映画「The Telephone」に提供したナンバーのシングルカット。Bruceらしい美しいバラード。殆どのパートをLittle Richardが歌っている。「Still CRUISIN'」に収録されなかった意味がわからない素晴らしい出来。これは探したほうがいい。

Kokomo 1988年9月

サウンドトラック「Cocktail」の先行シングル。全米No.1を記録。

Don't Worry Baby The Every Brothers with The Beach Boys 1989年

新録シングル。未聴。

Still CRUISIN'

 1989年8月

ハリウッドでは、映画はポップソングのプロモーションビデオ程度にしか思われていないようで、映画を見ればスタッフロールに至るまでポップス・ポップス・ポップス。映画音楽好きとしてはもううんざりだ。我らがBeach Boysも、Tom Cruiseがカクテル作って踊るだけの映画に「Kokomo」を提供、執拗なプロモーションの結果22年ぶりの全米No.1をゲットしてしまった。このアルバムは、「Kokomo」のヒットをうけて急遽編纂された企画もの。この時期にレコーディングされた新曲は7曲だけで、残りの3曲は「映画に使われたから」という滅茶苦茶な理由で収録された60年代のナンバーだ。オリジナルアルバムと呼ぶには無理があるが、映画挿入歌集と呼ぶこともできない中途半端な内容になった。

新曲のうち4曲は、TerryとMikeを中心に制作されたもの。大ヒット作「Kokomo」は文句なしの名曲だ。トロピカルなサウンドとMikeらしい印象的なリフレインには本当にわくわくする。そしてCarlの力強いボーカルがパーンと弾けた時の解放感! リゾートポップス史上の傑作だろう。「Somewhere Near Japan」は、銅鑼の音が鳴り響く勘違いも微笑ましいフォークロック。あとの2曲は「Kokomo」の二番煎じで、次回作の悲劇を予感させる。
 「Island Girl」は、Alの素直なメロディーとスティールドラムの軽やかなサウンドが気持ちいい。Brianの「In My Car」はソロアルバムのアウトテイクだそうで、力強く疾走感あふれる演奏だ。残る「Wipe Out」はThe Fat Boys名義のヒット曲、Venturesの代表曲をHip-Hopでカバーし、Beach Boysがコーラスで参加したもの。いかにも80年代らしいマッチョで鬱陶しいラップスタイルは、余りにも古くさくて聴くに絶えない。

Still Crusin' 1989年8月

アルバム「Still CRUISIN'」からのシングルカット。

California Dreamin' 1989年12月

カップリングを代えて再発。カップリングはなんと「Kokomo Spanish Version」。ちょっと字余りだがカリブっぽくてなかなか面白い。Brianも参加。

Problem Child 1990年8月

アルバム未収録。同名映画の主題歌。Terry作。いかにもこの頃のTerryプロデュースっぽい駄作。

Two Rooms Various Artists 1991年10月

Elton Johnのトリビュートアルバムに「Crocodile Rock」で参加。未聴。

SUMMER IN PARADISE

 1992年8月

実質MikeとTerryの「Kokomo」コンビによるプロジェクト。Bruceだけは気持ちだけメロディを提供してキーボードを弾いているものの、CarlとAlはボーカルのみの参加で、曲作りにも演奏にも関わっていない。Brianは全く参加していない。

タイトル曲の「Summer In Paradise」や「Island Fever」は割といい曲なんだけど、あとは「Kokomo」のバッタもんやバッタもんのバッタもんがだらだら続くと思って間違いない。「Kokomo」ほどの名曲が、いかに絶妙なバランスの上に成り立っていたかがわかる。Sly & The Family Stoneの「Hot Fun In The Summer Time」のカバーは試みとしては興味深い。さらに残念なのは演奏だ。プリセット音そのままじゃないのってくらいチープなシンセに、風呂場みたいなリバーブをかけて広げようとでも思ったのか、こんな音じゃ中学生も騙せない。
 アメリカ盤の半年後にリリースされたイギリス盤では、新たにキャッチーなサビを書き加えたり演奏を差し換えたりといった工夫が見られる。イギリス盤の方を薦めるのが筋かも知れないが、クリアになったサウンドが素材の悪さを浮き彫りにしているような気がしないでもない。

Hot Fun in the Summertime 1992年6月

アルバム「SUMMER IN PARADISE」からのシングルカット。カップリングはSummer of Love。

Forever John Stamos with The Beach Beach Boys 1992年8月

アルバム「SUMMER IN PARADISE」からのシングルカット。ミックス違い。John Stamos with The Beach Beach Boys名義。

Fun Fun Fun Status Quo with The Beach Boys 1996年

イギリスの国民的バンドとアメリカの国民的バンドの共演。Status Quoのカバーアルバム「Don't Stop」からのシングルカット。Mikeが一部でリードボーカルを取っている。

I Can Hear Music The Beach Boys with Kathy Troccoli 1996年8月

アルバム「Stars and Stripes vol.1」の先行シングル。

Stars and Stripes vol.1

 1996年8月

「Love You」以来20年ぶりにBrianがプロデュースしたアルバム。カントリーシンガーによるBeach Boysのトリビュートアルバムを、Beach Boys自身が制作するという珍企画だ。トリビュートアルバムの大きな楽しみは、各参加メンバーの楽曲の解釈の仕方にあると思うんだけど。
 そういった先入観なしに聴けばハイクオリティな演奏だ。Mike Loveの友人で後にBrianのプロジェクトに関わることになる共同プロデューサーのJoe Thomasも、この頃はまだ得意の安っぽいシンセを多用せずにおとなしくしている。特にWillie Nelsonが歌う「The Warmth Of The Sun」は、しみじみと枯れた声で実に味わい深い。この爺さん顔もいいね。そして極めつけは元EaglesのTimothy B. Schmitが歌う「Caroline, No」だろう。Timothyの繊細なボーカル、Jimmy Webbの美しいストリングスに酔っていると、エンディングでBrianの新しいコーラスパートがふわっと広がる。

Music For Our Mother Ocean 2 Various Artists 1997年5月

チャリティアルバムに「Summer In Paradice」のライブバージョンを提供。

SALUTE NASCAR

 1998年

ガソリンスタンドの販促グッズとして配られたセルフカバーアルバム。ロックの偉大なるイノヴェーターも、30年たてばこんなしょっぱい仕事をする。
 Carlを亡くしAlには愛想つかされて、ついにギタリストがいなくなったBeach Boysが後任として指名したのは、オリジナルメンバーのDavid Marks。そしてゲストはJan & DeanのDean Torrence。もはやタイガース・メモリアルバンドなみに形骸化していると言えよう。演奏は、ほとんどAdrian Bakerのひとり仕事だと思われる。もともとBeach Boysのメドレーを製作して名を上げたAdrianのこと、この手の企画はお手のものだ。オリジナルに忠実なアレンジで、カーステレオでかけるには充分な出来。ただし収録時間24分ではドライヴのお供が勤まるかどうか。

SYMPHONIC SOUNDS
-MUSIC OF THE BEACH BOYS

 1998年

Royal Philharmonic Orchestraとの共演によるセルフカバーアルバム。もはやバンドという概念を超越してしまったBeach Boys、何をもって彼らのアルバムと呼んでいいのかわからないが、このアルバム、久しぶりにBruceが頑張っているのでここで紹介したい。

Brian Wilsonは数えきれない程のポップスの発明をしているけれど、その中にオーケストラのダイナミズムとロックのグルーヴとの融合、という大発明がある。このアルバムは、そこからロックのグルーヴを引いたものと考えればいい。「California Girls」のイントロ、視界が少しずつ広がってバーンと海が現れるようなあのフレーズは、絶妙なグルーヴがなければ台無しだとわかる。
 細かい不満を挙げていけばきりがないが、大きな目で見ればオーケストラの分厚いサウンドは迫力があってなかなか楽しい。Alの長男が親父より力強いボーカルを披露する「Darlin'」、ほぼアカペラできめた「The Warmth of the Sun」、オーケストラによるサーフィンメドレー「All Surf!!」あたりは聴きものだ。ラストの23分にも及ぶ冗長なメドレーがなければなおよかった。

Good Vibrations 2011年4月

アルバム「SMiLE Sessions」の先行シングル。カップリングはHeroes and Villains。「SMiLE Sessions」についてはこちらに。

That's Why God Made The Radio 2012年4月

アルバム「THAT'S WHY GOD MADE THE RADIO」の先行シングル (配信) 、のちにアナログで発売。カップリングはインストバージョン。

THAT'S WHY GOD MADE THE RADIO

 2012年6月

オリジナルアルバムの話題が出ては消え、出ては消えしていたBeach Boys、20年ぶり、Brian Wilsonのプロデュース作としては35年ぶりの新作が、まさかのクオリティでリリースされた。前年の「SMiLE Sessions」のヒット、歴史に蹴りをつけた気持ちが、結成50年目のバンドをついに動かしたのだろうか。全米チャートで3位を記録するという1965年以来の大ヒット。全英チャートでも15位を記録。

クレジットには堂々とProduced by Brian Wilsonの文字。そしてExective Producer : Mike Love。Mike Loveが売りにしたい夏のバンドのイメージを、Brian Wilsonが形にした格好だ。66年の「Pet Sounds」以来、彼らが夏のバンドのイメージをむりやり演じると、商業的にはともかく音楽的に失敗するのが常だった。本作は本当に奇跡的に、世間のイメージするBeach Boys像と、ミュージックフリークのイメージするBeach Boys像が合致した。
 Brian Wilsonはソロとして素晴らしいアルバムを出し続けてきたけれど、このアルバムは全く手触りが違う。紛れもなくBeach Boysの音楽だ。つまりは「リードボーカルとバックコーラス」という位置づけじゃなくて、コーラスグループであることを意識した作編曲がなされているのだ。演奏面ではDavid Marksがギターを弾くのみで、ほかのメンバーはボーカルに徹している。ゲストミュージシャンはJeffery Foskett、Paul Mertens、Scott Bennett、Nick Walsko、Darian Sahanajaなど。
 気になるのがRecorded by Joe Thomasの文字。彼は元々Mike Loveの友人で、AOR畑のプロデューサー。96年から数年に渡ってBrianのソロワークスを手伝うが、そのスクエアな音作りには疑問の声も多く、すぐに決別した。本作では共同プロデュースではなく、あくまでキーボーディスト兼エンジニアの立場だが、殆どの曲に共作クレジットが入っている。何曲かでいかにも彼らしいサウンドが聴こえてくる。ファンとして、もしも代わりにDarian Sahanajaがブレーンに入っていたら、という思いもある。

アルバムはスキャットナンバー「Think About The Day」で厳かに始まる。続くタイトル曲で先行シングル「That's Why God Made The Radio」は、「Kiss Me Baby」を思わせる転調で聴かせる3連バラード。ソウルフルなコーラスワークが素晴らしい。ラジオから聴こえてくるロックンロールはSoundtrack of falling in loveだと歌う、堂々のロック賛歌でありラジオ賛歌でもある。
 「Isn't It Time」はワールドツアーでも披露されているナンバー。ウクレレとパーカッションを中心にしたサウンドに、力強いボーカルが乗る。穏やかで涼やかな「The Private Life Of Bill And Sue」の寓話的な歌詞世界。ごくたまにいい曲を書くMike Loveの「Daybreak Over The Ocean」。「Strange World」は力強いドラムスとPaul Mertensのストリングスが映える。
 「From There To Back Again」もアルバムのハイライトのひとつだろう。美しいコーラスに彩られたゆるやかなメロディは、プログレッシブな展開を見せ、切ない口笛の音色に消えていく。オーケストラに包まれた小曲「Pacific Coast Highway」も聴きどころ。日本盤にはボーナストラックとして新録の「Do It Again」が収められている。一連の復活劇の報道とともに公開されたバージョンだ。

Brian Wilsonは、ツアーが終わったらもっとロックンロールなアルバムを作りたいと語っていたが、実現は難しそうな状況。Mike Loveが、このアルバムの曲作りに殆ど参加できなかったこと、ツアーにMike / Bruce / David側のサポートメンバーが殆ど起用されなかったことに不満を漏らして、Jeffrey Foskettを引き抜いてBeach Boys名義のライブ活動を再開した。ただ、Brianに対してのわだかまりはないし、また共作したいとも語っている。
 このアルバムを聴けただけでもファンを続けてよかったね。

Isn't It Time 2012年9月

アルバム「THAT'S WHY GOD MADE THE RADIO」のシングルカット (配信) 。コーラスから始まる別バージョン。カップリングは2011年のライブから「California Girls」、「Do It Again」、「Sail On Sailor」。

LIVE THE 50TH ANNIVERSARY TOUR

 20123年5月

50th Anniversary Tourからのライブアルバム。プロデュースはBrian WilsonとJoe Thomas。豪華なサポートメンバーを携えての素晴らしいツアーがそのままパッケージされている。

41曲2枚組の構成は、33曲だった東京公演よりも遥かに多い。Brian Bandを中心にしたサポートメンバーの演奏とコーラスは完璧。問題のBeach Boys本人たちも、多少の老いは感じさせつつも手堅く歌いあげた。Mike Loveはやっぱりライブの中心にいて、衰えを感じさせないAl Jardine、Carlのギターを忠実に再現したDavid Marksの好演が光る。東京公演では心もとない印象だったBrian WilsonとBruce Johnstonも、ツアー全体から選曲したためか、安定して聴こえる。
 特に初期のアルバムの演奏の拙い楽曲たち、80年代のアルバムの打ち込みの楽曲たちは、オリジナルより遥かにクオリティが高い。アルバム「THAT'S WHY GOD MADE THE RADIO」からは、東京公演と同じくタイトル曲「That's Why God Made The Radio」と「Isn't It Time」を演奏している。「That's...」でひときわ大きな歓声が。テープで参加の故Dennis Wilson「Forever」、故Carl Wilson「God Only Knows」、日本公演では演奏しなかったBruce Johnston「Disney Girl」も嬉しい。「SMiLE Sessions」のヒットを受けて躍動感溢れる「Heroes And Villains」、メンバーがBrianのピアノを囲む形で歌われた「Add Some Music To Your Day」もうたまらん。

これがBeach Boysの見せてくれた最後の夢、なんだろうか。