FUJI ROCK FESTIVAL '01 7.28

2日目は早起きして宿舎の朝飯をペロリ。11:00からGreen StageでNumber Girlのステージである。「うわっでかっでかっ。福岡市博多区から来ましたNumber Girlです」と期待通りの挨拶でスタート。彼らのパフォーマンスの熱さ、素晴らしさについては各方面で語られている通り。絶叫する(青年期の)のび太こと向井秀徳の存在感ばかり注目されがちだが君、はっきりいってそんなもん見てる場合ではないのである。
 直立不動の向井の横で、ちょこちょこと動き回る田渕ひさ子よ! なんていうか君に胸キュンである。夏の印画紙である。向井よ君がいいとも悪いとも思わないが、モニターに映る田渕ばかりぼんやりと眺めていた。佇まいは小動物系だがギターはゴリゴリ。文科系ロック青年の心をくすぐるサムシングが彼女にはある。

シングル曲を中心に軽快に飛ばして最初のMC。「2001年FUJI ROCK2日目の開催を祝しまして、僭越ながら乾杯の音頭を取らせて頂きます」。その後もアップテンポなナンバーを中心に絶妙な緩急のバランスを見せつけ、最後まで決して飽きさせない素晴らしいステージを繰り広げた。
 締めは向井MC「あの、White Stageを見に行きたいんで、これで終了します」。最後までオーディエンスを裏切らず、音楽馬鹿キャラを潔く貫いてくれた。

続いてレッドマーキーにてSupercarを片耳で聴く。デビュー前にはライヴ経験がなかったという彼らだが、演奏は意外と安定していて特にエフェクター使い方が上手い。楽曲のよさをしっかり伝えるステージだった。会場が混み過ぎて実物が見れなかったのが残念。

終了後、グリーンステージに戻ってJuno Reactorを。アフロな衣装に身を包んだパーカッション陣と、白人のキーボーディストの不思議なユニット。安っぽい鳥の声はなんとかならないかと思ったら、本人が口真似してたらしい。打ち込みと手弾きの融合具合が快調で快適であった。
 後半、キーボーディストがギターに持ちかえると俄然盛り上がって、うさん臭くて楽しいステージ。坂本教授はこれを見て跪いてもいいかもよ。単純に音がでかくて体が勝手に動くバンドにはあがなえないものがある。CDが欲しいとは思わないが、こういったイベントには必要不可欠だ。

引き続きグリーンステージでHothouse Flowers。またしても知らないバンド。アイリッシュなこぶしの効いたアカペラから入って、やがてごく普通のギターポップに。それなりに人気があるのだろうか、前の方では合唱が起きていた。自分の知らない曲で盛り上がる様というのは、端から見ていて不思議な気分。後半になってピッコロ登場、がぜん民族色が出てきた。こういう面をもっと出してけばいいのに。

続いて、まだ生きていたのかパンクのカリスマPatti Smith。John Cale絡みということで存在は認識していたものの、守備範囲外だった。もの珍しさだけで前に出てみたのだが、あまりのオーラに硬直、ノックアウトくらってしまった。いかにも「Free!」で「Power!」で「Save our children!」な世界なのだが、柔らかな身のこなし、指先に至るまでパフォーマーとして実に洗練されているのだ。
 靴を脱いでアリーナに降りる。バンダナで目隠しをする。ギターの弦をゆっくりと切る。その動作ひとつひとつが神々しいばかりで、轟音の中で僕はただあっけにとられていた。3日間を通して間違いなくベストアクト。ただひとつ残念なのは、Pattiがあの場所を富士山だと勘違いしていたことか。

客席には彼女と同世代のおじさん、おばさんの姿が目立った。パンクに育まれて、かっこいい歳の取り方をしている人もいればそうでない人もいる。はたして数十年後の僕らは、今と同じように音楽が好きで若者と一緒にライヴがみれるかな。胸かきむしる生理的な感動とともに、ロック人生について考えさせられる1時間でもあった。

しばらく余韻に浸ったのち、White Stageで山嵐。薦められるままに見にいったのだが、タフなサウンドもPattiの後ではかたなし、押してばかりじゃ僕の胸は開かない。4曲ほどで退散。Green Stageに戻ってStereophonics。アコギとブルースハープが染みるポップバンド。普通によく、まったりと聴く。

そのまま同じステージでAlanis Morissette。照明がやたら凝ってて金かけてんなあ。アメリカンロックというものをちゃんと消化しているし、なによりよく通る気持ちいい声の持ち主で、これは売れるわ。若くて華奢に見える女の子が、実は芯が強くて奔放に振舞う様は実に魅力的である。トータルに「よく出来た」ステージだった。ただアンコール2回体制というのは優遇されすぎのような気もする。
 ところでこの日のGreen Stage。我々は朝一から陣取っていたのだが、夕方になると場所取りバトルも熾烈になっていった。隣にいた白人の団体がどんどん増殖して、我々のビニールシートを侵食してくる。正に国際社会の中で孤立するジャパンでる。しかも奴ら「シャパニーズリトルガールのアドレスをゲットしたからファックしてやるぜ」みたいな話で盛り上がっている。

そんな不愉快な気分で、この年のFUJI ROCK最大の山場を迎える。なんとEcho & The BunnymenとNew OrderとNeil Youngがバッティングしてるのだ。どれを見に行くかは賭けであったが、僕はNeil Youngを選んだ。余談だが、彼は1970年に企画された幻のロックフェス「富士オデッセイ」に、CSN&Yのメンバーとして出演する予定だったという。それがFUJI ROCKの目玉に呼び出されるとはなんたる因果。
 さんざん焦らした後に登場したNeil Young & Crazy Horseは、ベースとドラムスがしっかりと向き合い、二人のギターがしっかりと向き合い、巨大なステージの中央にあって半径2メートルで完結する立ち位置だ。リズム隊はあくまでシンプルにタイトな8ビートを叩き出し、その上を2本のギターが分厚く暴れまわる。ヒザを折り曲げ、すさまじい気迫でかき鳴らすわけだが、数万人のオーディエンスを気にとめるでもなく、ひたすら4人の間の駆け引きに終始していた。

ピアノとギターを織り交ぜた6/8バラードあたりからようやく落ち着きを取り戻し、アコギ弾き語りで「Only Love Can Brake Your Heart」などを披露。後半はまた轟音系に戻り、ソロを弾きまくる。熱狂的なファンやギター弾きが見たらたまんないんだろうなあ。正直なところ僕はそこまでの思い入れがあるでもなく、自己完結する迫真の演奏に心が入り込む隙き間はなかった。
 終盤にいくに従って、本人のテンションも絶好調。エンディング引っ張りまくり。グウィン グウィン ドカドカドカドカバタバタバ タ バ タ...スタトン。で終わるかと思いきやまたグウィン グウィンに逆戻り。アンコール前に至っては、弦切りパフォーマンスを含め15分は唸っていたと思う。持ち時間を大幅にオーバーした2時間半のステージ、見終わってげっそり。
 そこここでベストアクトの声があがっているようだが、そういう人は彼だけを目当てにやって来たのだろう。観客に単独ライブ並の体力を強要するのはどうか。僕が期待してたNeil Young像はそれじゃなかったんだが、Crazy Horse名義では致し方ない。本当は深夜のRei Harakamiを見たかったが疲れ果ててパス。風呂に入ってビールをあおる。3日目に続く。