FUJI ROCK FESTIVAL '05 7.29

新幹線を降りると高原の風が気持ちいい。と書きたいところだがそうでもなくて、曇天模様の空の下、1時間ほどバスを待つ。山道をくねくね進むうちにうーだんだんテンション上がってきたぜ。ただいまFUJI ROCK、音楽が呪術や祭祀だった頃の貴さを今に伝える3日間よ。宿に着いて荷物を降ろし、もはや顔なじみになったおばちゃんに凍ったお茶のペットボトルを頂く。

まずは山奥のステージOrange Courtに登ってEddi Readerを聴く。アコギとアコーディオンを引き連れ、本人もアコギを抱えて透明な声を木々にせせらぎに通過させていく。その力強さ。しなやかさ。隣のField Of Heavenの演奏に邪魔されながらも、大きく手を広げて小さな宇宙を作り上げていた。かと思えば歌詞に「Fuji Rock」を折り込むサービス精神をみせたり、リクエストに応えて腰を振っておどけてみせたり、陽気なお姉ちゃんぶりもまた素敵。
 食料調達のためにField Of Heavenに移動。FUJI ROCKはとにかく食べ物が旨い。餅豚、ケバブ、そしてコシヒカリ。後ろからはTokyo No.1 Soul Setが聴こえてきた。1曲目は「黄昏'95」むかし大好きでよく聴いてたなあ。

メガネロック研究家として外すわけにはいかないLisa Loebを聴くためにOrange Courtに戻る。かわいー。おじさんお小遣いあげちゃおうかな。でもただガーリーなだけじゃない、男4人のバンドを従えて、しっかりと骨太なロックを奏でていました。弾き語りの曲もギターをかき鳴らしてロックフェスに相応しい強さをアピールしていた。こういう普通にいい曲をやるミュージシャンってもっと評価されてもいいよね。メガネっていう特性だけで語るのは失礼だったかも知れないし、メガネっていう特性がなければいい曲が僕らに届かないのが音楽業界の現状なのかも知れない。隣のSoul Setの轟音を睨んで見せる仕種も「Thank You」の声もとにかくかわいー。天は二物を与えたねー。
 最後はどこで覚えたのか、洒落たコード進行にアレンジした「どんぐりころころ」を歌い出した。客席を2つに分けて、左右で輪唱にチャレンジしてました。

そのままOrange CourtでThe Kingtonesを。「Good Night Baby」や、日本風に解釈されたR&Bの先駆者としての彼らしか知らなかったんだが、この日はドゥワップのカバー大会。The Plattersの「Only You」、Dell Vikingsの「Come Go With Me」、そして「Stand By Me」に「Smoke Gets In Your Eyes」。結成45周年の彼ら、リーダーが脳梗塞に倒れてこの日が1年ぶりの復帰ライブだったそうだ。正直あんまり声が出てなかったし、後半辛そうにしていた。リーダーの昭和声が大好きなので早く元気になってください。
 年老いたバンドが若いリスナーに受け入れられている姿を見るだけで感動。というタイプの感動はありました。「グッナイグッナイベイビー涙こらえてー」を見ているこっちが涙をこらえられないようなステージだった。

続いてもOrange CourtでCrazy Ken Band。今や大人気の彼らを初めて見たのは、6年前のPizzicato Fiveの前座なのでした。感慨深いな。なんでこんな濃い口のバンドがポピュラリティを得たんだろうかと不思議に思っていたんだが、彼らは平成のサザンなのではないか。昭和とエロスと歌謡曲の猥雑さを今のセンスで照らしだすことが出来るんです。「タイガー&ドラゴン」みたいな泥臭い曲の合間に「G.T.」みたいな爽やかなエヴァーグリーンポップが見事に浮き上がる仕掛けなのだ。策士だな。
 横山剣はもちろん、メンバーみんなエンターテイナーでした。セクシーなお姉さんは言わずもがな、帽子からズボンのチャックまで使って体中で曲の世界を表出してた。他のメンバーのマイクを取りあげたりドラに激突したり、その一連の動作が見事に連なって、1時間のショウに仕立てられていました。

最後はWhite Stageに戻り、忌野清志郎。実は器用なギタリストでもある彼なのだがこの日はそっちの側面を隠して、「God!」のかけ声と共に登場。ドンキで売ってそうな安っぽいパーティ衣装からシッポを覗かせて降臨してきた。ショーはヒットアフターヒット。「トランジスタラジオ」「サマータイムブルース」「スローバラード」「上を向いて歩こう」そして「雨上がりの夜空に」の大合唱。MCも相変わらず「FUJI ROCK愛しあってるかいベイビィ!」の連発で、彼は本当に愛とFUJI ROCKの人なのだよなあ。「世界は35年間戦争をやめなかったけど、俺は35年間ベイビィとかオーイェーとか言ってたんだぜピース!」
 今年はホーンセクションの活躍が目立ちました。梅津和時はしゃぎすぎ!オーラスは巨大な風船を飛ばして「Jump」。さすがに様式美の感は否めないものの、これを見てこそのFUJI ROCKだ。2日目に続く。