FUJI ROCK FESTIVAL '19 7.28-29

体力とサバイバル的に、朝一のスカートは東京で観れるからパスするかと考えてたけど、東京組からの熱いコールで観に行くことにした。Red Marqueeの水ははけていた。
 澤部渡さん130kg。日本においてこの体型は、笑いの対象だったり恥ずかしいものと捉えられることが多い。澤部さんは歌い方も歌詞も演奏も、てらいなくイケメンを貫いてるのがいい。新しいジャンルを開拓したと思う。そして曲の良さ、ギターの音の良さ。MCをしている間にもどんどんお客さんが入ってきて、「これは曲やんなきゃ」ってくらいの盛りあがり。岩崎なおみさんのベースがよく歌ってた。ただ成人病的な観点から痩せた方がいいのは確かで、そこからスカートの第二章が始まる気がする。

苗場食堂でキリザイ飯を食べて、また奥地のField Of Heavenを目指す。渋さ知らズオーケストラ。森の中からすでに "本多工務店のテーマ" が聴こえてきた。
 相変わらず暗黒舞踏の人たちがいたりふんどしの人がいたり、巨大な片山広明人形や胡散臭いいろんなものが。「ヘブンの朝一、一番試される時間帯、きのうからいた奴、豪雨大変だったな、俺もテント流されたよ、今日来た奴はすごい」。「FUJI ROCKに初めて出た時は渋さ12歳、毛が生えた頃だった。それから5年出たけど思春期にいろいろあって、30周年で呼んでもらえてよかった」。「お前らが今日この場所を選んだんだ、ここがお前らの日常だ、お前らも渋さ知らズだ!!」。煽って煽って踊らせる。不破大輔さんの不思議な合図にオーケストラが揺れる。観客も揺れる。巻上公一さんも参加、みんな渋さ知らズだ!!

同行者全員で世界一うまいさくらぐみのピザを食べた。引き続きHeavenでThe Paradise Bangkok Molam International Band。タイのインストバンド。ぜんぜん想像がつかないでしょう。僕も知らなかった。
 民族楽器数台の演奏を、ベース・ドラムスのリズム隊がグイグイ引っ張っていくジャムバンドだった。ファンク、クラブ寄りのリズム隊と民族音楽のコンビネーションが最高だった。無名なバンドで最初は会場がガラガラでも、いい演奏をしていればどんどん人が入ってきて、みんなで踊るのがFUJI ROCKだ。

White Stageに降りてInteractivo。2年連続出演の、キューバの大所帯バンドだ。13人編成。女性ボーカルが引っ張るバンドは予想通りのトロピカルなムード、キューバーの音楽的 (政治的でなく) イメージ通りの楽しい音楽だった。ソロ回し、ボーカル回し、ラップまで飛び出した。みんなで気持ちよく踊れた。知らない人同士が笑顔で踊ってる光景もあちこちで目に入った。
 そして女子ベースはエロいよねってことで、同行者たちと意見が合った。グルーヴがエロい。なにかあるぞ女子ベース。

Whiteに残ってHYUKOH。韓国のロックスター。良くも悪くもかっちりしてて、僕の趣味と比べるとちょっとスクエアなロックかなーと思ってしまった。すごくよく作られているんだけど。楽曲もバラエティに富んでて良かったと思う。
 きのうあんまり寝てないこともあって (寝てない自慢) うとうとしちゃった。で、いつのまにか同行者もいない。

苗場食堂に降りて崎山蒼志さん。早めに前に陣取っておいてよかった。振り返ったら300人くらいのお客さんが入ってた。
 とにかくヤバい。圧倒的な作詞作曲力は知ってた。特に言葉の情景描写力と文学性。ギターがヤバい。トレードマークのキレキレのカッティングだけじゃなくて、細かい表現がほんとうに巧みで表情豊かだった。ボーカルのビブラートは、君島大空さんに通じるものを感じた。熱い演奏の合間のMCは、まだ自分が売れていることにびっくりしてる高校生の夏休みの腰の低さだった。サウンドチェックで "kimochi" を、本編で "Wの悲劇" を歌ったのも驚き。"五月雨" ではシンガロンが起きた。

ところでこの日、iPhoneを拾ってインフォメーションに届けたんだよね。Twitterみてたら崎山さんが、「iPhoneを落としたんだけどちゃんと届いてて感動しました、FUJI ROCK優しい」ってツイートしてて、あれもしかしたら崎山さんのiPhoneだったかも知れない。

Red Marqueeに戻って、問題の平沢進+会人待ち。昼間はカンカン照りだったけど、雨が降り始めたこともあって、1時間前から会場は大混雑。ちょっとした映像チェックのたびに大きな歓声が沸いた。あの平沢さんが、圧倒的にアウェイなFUJI ROCKでどんなアイデアを観せてくれるのか。期待で渦を巻いていた。

Twitterを開いたら、とある人気ツイッタラーが「平沢進がフジロックに...宮崎駿がコミケにいるらしい、くらいの『すごい』の気持ちがある」ってツイートしてたの。すごく嫌だなって思ったんだよね。
 ネットユーザーにとっては平沢さんはTwitter芸人であり、Twitterの素人の中に平沢さんがいることは、コミケの中に宮撫xさんがいるようなものかもしれない。でもFUJI ROCKはツイッターランドじゃない。「世界」の「音楽」の才能と愛好者が集まる森なんだよ。平沢さんもその一人として粛々とライブするだけ。SiaもThe CureもThe Chemical Brothersもいる。その中に平沢さんもいる。

で、平沢さんのライブは東京とさほど変わらなかった。肩透かしをくらった。おおってなったのは "フルヘッヘッヘッヘ" をやったこと、雷で音階を作る装置を持ち込んだこと、光センサーのハープを持ち込んだこと。
 在宅でYouTubeで観てた人たちにはわからなかったと思う。前で熱狂的にもりあがってたのは一部のファンで、後ろの1/3は飽きて途中でごっそり帰っちゃったの。そこ映ってなかったでしょう。僕はいちおう最後まで観た。絶賛するYouTube組は、そもそも平沢さんのライブを観るのが初めてで驚いたんじゃないか仮説。

僕は平沢さんの大ファンで、アルバムぜんぶ聴いてるしライブにもよく行ってる。だからこそ、ここで求められてるのはそれじゃないんです師匠と。
 その後にやったJames Blakeは配信が中止になっちゃったけど、普段のライブとフェスで演奏をぜんぜん変えてきた。殆どダンスミュージックだった。日本人では、電気グルーヴなんかはFUJI ROCKをモノにして、フジロッカーにめちゃくちゃ愛されてるよね。あれはすごいことだったんだなと。

White Stageにあがって、そのJames Blake。かつて彼の音楽は悲しみと苦しみだった。観たの3度目だけど、どんどん生演奏の比率が増えて、フィジカルになってる。そして新作で感じられた心の融和が、ライブでも感じられるようになった。
 本人の悲しい悲しい歌声とエレピ、ドラムス、ギターやチェロやモジュラーシンセ的ななにかでドローンを作る3人。東京で観た時もドラムは生演奏だった。正確で無機的な演奏。ハイハットやシンバルといった金物系をとても丁寧に演奏して、いい効果をだしてた。ギターが生の演奏は初めて観た。

最初はパブリックイメージ通り、エレピとボーカルとリズムやドローンが加わってく演奏だった。途中からだんだんビートが踊りにくいダブステップから、踊りやすい4つ打ちになった。完全にダンスミュージックのパートだった。みんなできあがっていて酔っ払って踊りまくってた。「Are you enjoy?」って聞く余裕さえも見せた。"Retrograde" でパブリックイメージに戻り、静かに、しかし暖かいライブが終わった。
 YouTubeでは、あの地鳴りみたいなベース音を体に通す快感は得られないと思う。だから絵的に映える平沢さんがウケる。

今年のFUJI ROCKもこれでおしまいか、と感傷に浸りつつの帰り道、Green StageでクロージングアクトのG&G Miller Orchestra feat. トータス松本が始まろうとしてた。芝生に椅子を広げてじっくり聴いた。

アポロロケットの映像とニール・アームストロング船長の言葉、今年はアポロ月着陸50周年だ。ライブは「Fly Me To The Moon」からスタート。スタンダードの名曲を何曲か演奏してトータス松本さんが登場。誰でも知ってるソウルの名曲を立て続けに歌う。"What’s Going On" や "Satisfaction" や "Hard To Handle"。トータスさん英語の発音はいまいちだけど歌はうまいな。
 オーケストラは指揮と編曲が日本人、ストリングスとホーンも日本人。リズム隊とコーラスが外国人。ドラマーやコーラス隊もリードボーカルを取る曲があって、掛け合いが楽しかった。"Twistin' The Night Away" の演奏をトータスさんが止めて、「待って待って指揮者を紹介させて」。大盛りあがりのあとの "Moonlight Serenade"。

宿に戻ったら僕が最初の1人で驚いた。1日目2日目は最後の帰宿だったから。例年は僕が疲れ果てて最初に宿に戻って、みんなが帰ってくるのを待ってた。
 この3日間、天候的には非常に過酷だったけど、体力的にはものすごく楽に感じたな。っていうのはダイエットのために日々歩いてるせいかなと。歩いてるったって最寄り駅まで歩くとか、階段を使うとかその程度のことなんだ。2001年から通い始めたFUJI ROCK、あの頃は20代だったんだよね。何歳まで通えるかな、なんて思った。amiinAが出演するまでは通い続けたい。ハーFUJI ROCK終わっちゃった!! 次のFUJI ROCKまで一番遠い日。

翌朝早くに目が覚めて、Twitterに平沢進論を書いた。orgがやってた、写ルンですをリレーしてみんなに1枚ずつ撮影してもらう企画、カメラが全部ちゃんと戻ってきたらしい。1時間後くらいにみんなむくっと起き上がってだらだら支度して、宿のおじちゃんと来年もよろしくのご挨拶。前のグループがおじちゃんと写真を撮ってたの。僕たちも撮りたかったな、あれは若い女の子グループだから絵になるのだ。
 帰りのバスはスムーズに乗れた。隣は中国人の可愛い女の子、ヘッドフォンをして話しかけるなオーラ。蕎麦屋に行ってへぎそばを8人前たべてキノコの天ぷらとカキフライ。来年のヘッドライナー、Billie Eilishはどうかねえなんて話で盛りあがった。FUJI ROCKロスと猫に会いたい気持ちとないまぜになりながら帰宅。

猫は去年よりダイエットに成功してた。目も治療してもらって、目薬をもらった。僕は体重が3kg増えて体脂肪率が5%減ってた。体重はそばと酒のぶんだったみたいで翌日には戻った。

来年はオリンピックでサマソニがなくなって、FUJI ROCKが8月に入る。
 オリンピックとフジロックをセットで観に来る外国人が増えるだろうね。それを見越して洋楽のブッキングが増えるといいな。基本涼しくて、台風一過はめっちゃ暑くなるだろうね。いろいろ読めない。

来年は君も来てみない?
 人類の末裔として、いつもハートに音楽を。